犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

公共事業>犀川雪見橋は税金の無駄遣いか!

2014年04月19日 | 公共土木事業評価監視
 交通量に比べて著しく幅が広い犀川雪見橋ができて、さらに近くに同じような上菊橋ができた。橋の上で集会か、花火見物か、あるいは、運動会でもしようというのか。

 橋がなかったところに道路幅の広い大きな「犀川雪見橋」ができた。そして、まもなく、下流に隣接する古い「上菊橋」が架け替えられて新しくなったが、これもかなり幅広い橋となった。立派な橋を架けるのはいいが、ちょっと立派すぎないか。少し、気になったので、金沢市に情報公開請求をして調べてみた。

 金沢市の広報広聴課では、平成3年以前(1991年)の文書は金沢市の公開条例成立以前で対象にならないが、あれば「情報提供」ということで対応できるとのことであった。橋の事業の検討をした文書の作成年次がわからないので、条例にもとづく「情報公開請求」ではなく、市民の疑問に答える行政サービスのかたちとしての「情報提供」でお願いした。

 雪見橋をはさんで上流の大桑橋、下流の上菊橋について、「工期、事業費等を記載した調査設計業務委託報告書、交通量予測などによって橋幅を決めた理由を記載した文書」の提供をお願いした。

 その結果は、雪見橋については、橋の諸元を記載したA4一枚の表、上菊橋については、A4で4ページのパンフレット、大桑橋は県が築造したもので文書は無いとのことであった。
あまりに少ない情報に唖然であった。橋の構造にかかわるものは改修などに備えた永久保存の必要があると思われるので、残されていないはずはないので捜せば必ずあるはずである。今回は、「情報提供」ということで法的な権利として追及できないのでひとまず矛をおさめることにした。いずれにしても、文書管理は不備のようである。

 公開された資料によれば、「犀川雪見橋」は1999年、15年前に完成した。事業費は、13億円。3mの歩道が両側にあり、真ん中に9mの車道、全幅員16m。その6年後の2005年に「上菊橋」が架け替えられた。これも13億円。4.5mの歩道が両側にあり、真ん中に7mの車道、全幅員16mと雪見橋と同じである。

左岸の端から犀川雪見橋を望む

左岸の端から上菊橋を望む

 いずれも昼間というのに、人も車もほとんど通っていない。
 朝夕は少し、通行量が多いので、雪見橋で2月19日の夕方に10分間の車の交通量を調べてみた。それでも1時間にすると200台ほどである。

 前後に接続する道路の交通量からしてもいかにも橋の幅は広い。感覚的には、無駄だ。かといって、周辺住民の生活のための必要最小限の利便のためになくてはならないということになると、経済性だけで無駄とはいえない。公共事業の是非の判断のむずかしいところである。

 参考に簡単な試算をしてみる。
 事業費13億円を金沢市民43万人で割ると、一人あたり3千円となる。大した負担でないように思える。
生活に必要という点で考えると、金沢市民全体で割るのはいかにも適切ではない。金沢市民全体とするのではなく、橋の周辺で生活し、日常的に利用する人達を対象に限定することが適切だろう。だから、事業費13億円はその橋の近くに居住する住民の数で割ることにしてみる。犀川には、雪見橋を含めて22本(河川占用届け済み、ほかに数本の橋がある)が架けられている。雪見橋の周辺に居住する住民数は、43万÷22=2万人となる。13億円を2万人で割ると一人当たり6万5千円となる。1世帯4人とすると、一世帯あたり26万円となる。かなり大きな金額である。無駄遣いはするなといいたくならないだろうか。

 いずれにしても、税金で造るものである。税金とはどうしても必要だからと、強制して集めてくるものであり、これなら税金を出してもいいとみんなが納得できるというものでなければならない。

コメント (3)
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公共事業>人口減少時代のインフラ整備について(読売新聞記事を読んで)

2012年10月20日 | 公共土木事業評価監視
読売新聞記事2012年10月19日(金)「人口減社会 浄化槽活用を」を読んで

 人口減少など社会の変化を踏まえて下水道整備の見直しをしているという記事が掲載された。

 会計検査院が、動いていない下水処理場の設備の無駄を指摘して、国土交通省に改善を求めたことがきっかけのようである。
地域によっては、下水道などの集合処理施設を作るのをやめて各戸ごとの浄化槽設置に切り替えるなどの見直しを進めているとあった。そして、国土交通省が今年になって計31県の下水道計画の見直し状況をまとめたところ、下水道など集合処理施設を作るのをやめ、浄化槽の設置を進める傾向が目立ったとある。

 家屋がまばらで、集合処理が不合理なところでも、その付近に人が増えて家屋が増えれば、結果的に合理的ということになる。ところが、その逆の場合は、計画時点でギリギリ合理的であっても事業が進行する内に人が減り、家屋が減れば不合理となる。まして、家屋がまばらで効率が悪く、不合理なところで集合処理をやれば、後々、たいへんな重荷になる。

 人口が密集する都市で集合処理をすると一人当たり10万円から20万円というところが多いが、家屋が粗である農村地域で集合処理をすると、一人当たり100万円かかるという例はざらにある。5人用の浄化槽であれば100万円ほどでできるので一人当たり20万円くらいであるから、家屋が粗なところで集合処理をすることはいかに非効率で不合理なことかよくわかる。また、別のおおよその比較を示すと、都市では、1軒のために下水道管を10m程度延ばせばいいので50万円程度であるのに対して、農村では、1軒のために下水道管を100m程度延ばして300万円程度かかる。

 人口減社会の下水道は、集合処理から個別処理の時代になるということであろう。これは、上水道でも同様である。
 2012.10.20,naka
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公共事業>人口減少時代のインフラ整備について(その5)

2012年10月09日 | 公共土木事業評価監視
 水道事業といっても、上水、下水と分かれて、それぞれまたいくつかの事業手法がある。それぞれ、国、県の補助があり、町負担分がある。町負担分について、借金(起債)するが、その元利償還金についても、町がすべて返却するのではなく、国からお金(地方交付税措置)がくる。毎年、複雑な計算の結果、町が、町民がいくら実質、負担しているのか、よくわからない。本来、水道は、受益者がはっきりしているから、受益者から、料金を徴収して帳尻をあわせて、町で使える税金を水道に投入しなくてもよいようにするのが望ましい。社会保障などでいくらお金があっても足りないのだから。ところが、実際には、水道にかなりの税金を毎年投入している。料金を高くするのは、町民の抵抗が大きいからである。だから、必要なだけ、料金を徴収するのではなく、ほどほどのところでということになりかねない。
 能登町でも、今年6月に水道料金を上げた。これで当面でも帳尻があうのかというとそうでもない。10%程度であれば、抵抗が少ないということできめたような気配である。陳情要望という形式で、水道管理者から話を聞くことにした。「要望書」は、以下のとおりである。


平成24年10月9日
能登町水道事業担当者 様

「水道事業の財政について説明を受けたい旨の要望書」

石川県鳳珠郡能登町字中斉ワ部2
中 登史紀(65歳)

私は、本年6月18日、能登町水道課で水道事業の財政について教示を受けました。その時の説明を受けておおよそつぎのように理解しています。

上水道事業については、平成24年6月の水道料金改定の効果で、年間の赤字が解消されて年間4千万ほど黒字になる。簡易水道は4千万ほどマイナスが減るが年間8千万円ほど赤字が残る。上水道の黒字に簡易水道の赤字を合わせると、上水道事業全体は年間4千万円ほどの赤字になる。
また、下水事業(公共、集落排水、浄化槽)の町費持ち出し(赤字と仮定)は、毎年1.5億から2.5億前後の大きさである。
上水道事業と下水事業の赤字の総計は、毎年2億円から3億円程度となる。町民1人当たりに換算すると年間1万円から1万5千円くらいである。

本来、水道事業は受益者がはっきりしていますから、受益者から徴収する料金でまかなわれるものと考えられます。赤字だからということで、水道の料金を値上げされましたが、結果的には、上水道事業についても当面の帳尻があっていません。このままでいいのでしょうか。この先どのような展望を持っておられるのでしょうか、どのような改善案あるいは解決策を考えておられるのでしょうか。負担する人口がどんどん減少する上、高齢化がすすみ、負担に耐えられなくなるような状況がますます進行しそうです。なるようにしかならないとは考えておられないと思います。
町民の一人としてたいへん懸念しています。展望について話を聞かせていただけないでしょうか。

 
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公共事業>人口減少時代のインフラ整備について(その4)

2012年06月26日 | 公共土木事業評価監視
―――能登町水道―――
 人口減少時代の社会インフラの計画あるいは事業運営についての問題を考えている。
簡易水道事業の計画の事業計画書を見せてもらって少し分析してみたが、人口減少の実態を反映させていない、架空の計画であり、何の役にも立たないことがわかった。国からお金をもらうための形式的な書類で無駄以外の何ものでもない。ただ、役場の人が悪いわけではないが、給料をもらっているのだから、もう少し本気で考えてほしいような気もする。
 
 架空の話はどうでもよいので、実態を知ろうということで、他の水道事業の計画書の検討はやめて、水道事業の財政の実態を調べるために、上水道の企業会計や簡易水道/下水の特別会計の資料を公開請求して少し分析してみた。会計のことは門外漢なので担当の方に教示を願った。会計上は帳尻があっているように見えたが、教示の結果はかなり悪化していることはおぼろげながら理解した。

 今年5月使用分から、水道料金が値上げされた。基本料金が1470円から180円上げて1650円になる。1割以上で小さくはない。これでどうなるかというと、上水道は年に4千万ほど黒字になり、簡易水道は4千万ほどマイナスが減るが8千万円ほど赤字らしい(赤字は町の財源から補填されて帳簿上は収支均衡)。下水は事業の特徴から赤字が普通であり、能登町全体では、毎年1億から2億前後の大きさになっている。この赤字も町の財源から補填されている。町の財源というのは、町民から集めた税金と考えていいので、直接の水道料金のほかに間接の水道料金を税金の形で納めていることになる。大雑把にいって年に一人1万円から1.5万円、月に一人千円、一家族3人として3千円となる。これでは少々料金値上げ(一家族で180円値上げということになるのか?)してもあまり変わらない。

 料金、税金、いずれの形にしても町民が負担しているのだから、問題ないといえば問題ない。ただ、社会福祉などの費用は増えるのだから、これに当てる費用は確保したい。受益者がはっきりしている水道料金は受益者から集めて、これから増える分野にお金はまわしたいはずである。

 さらに、人口が20年で半減するスピードである。負担する者がどんどん減っている。赤字がどんどん増えていくことになるのだろう。見通しも明らかでないまま、料金値上げだけしか方策はないのだろうか。

 国の消費税増税と一緒で財政が大変だから、何とか少しでも上げたいから、というのは分かるが、上げたからといっても、当面の問題も解決しない。毎年25兆円の穴があいているから、5%で12.5兆円確保したとしても穴が半分になるだけである。後はどうするのか、誰も答えられない無責任な解決である。

 これと同じで、能登町の水道の値上げもとにかく大変だから、赤字の穴を埋めたいから、水道料金の値上げをすることになったが、一部の穴埋めだけで(上水道だけは黒字になるが、簡易水道や下水は赤字のまま)問題が解決したというわけではない。

 値上げだけで先の見通しを示されないと、節約意識が先行して期待したほどの収入増がない恐れもあることも共通している。どうしましょうか?
2012.6.26,naka
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公共事業>人口減少時代の水道の計画について(その3)

2012年04月01日 | 公共土木事業評価監視
旧柳田村簡易水道計画とは
 旧柳田村の簡易水道の歴史を要約するとつぎのとおりである。
40年ほど前の昭和40年代に柳田地区を始めとして各地区に簡易水道が造られた。整備拡充、給水地区の拡張、地区の統合をしながら、平成9年(1997)の「柳田地区簡易水道第3次拡張事業(H9~18)」によって旧柳田村全体の簡易水道統合を目指した。総事業費47億円(一人当たり約100万円)である。集約的な維持管理をして、低廉、清浄、豊富な水道水が長期的に安定供給するためである。財政が逼迫したこともあり、計画通りに進行せず、その間、平成17年に町村合併もあり、平成19年からは公営企業経営健全化計画もあり、事業の完了は当初完了予定の平成18年度を10年延長し、平成28年度とした。

 「柳田地区簡易水道事業変更概要書」によると、平成18年(2006)の村の人口は5,150人(行政区域内人口)、このうちの給水できるのは4,840人(計画給水人口、行政区域内人口の94%になる)である。事業を10年延長するに際して、これらの諸元はそのままである。

 計画では、「行政区域内人口の過去10ヶ年の減少人口は576人(中略)。若年層の都市流出を食い止める各種の施策を行って(中略)。将来人口の人口減少を100人程度と定め、平成18年度の行政区域内人口は5,150人とした。」とある。実際には、1,000人程度の人口減少があり、平成18年で4,295人(住民基本台帳人口)となっている。計画人口の83%である。平成28年では、3,390人程度と推定され、66%となる。

 この間の推移を図によって示す。
図1は、昭和61年(1986)から平成7年(1995)の人口の実績値を示している。住民人口は住民基本台帳人口である。行政区域内人口は簡易水道計画において各地区の住民数を調べ合計したものであり、住民基本台帳人口とわずかな相違はあるがほとんど同じものである。給水区域内人口は簡易水道の水供給を受けることができる人口である。

 図2は、平成9年に柳田地区簡易水道第3次拡張事業を開始した時の推定である。平成8年(1996)から平成18年(2006)の行政区域内人口の推定値の推移を示し、平成18(2006)年の人口は5,150人である。同様に、給水区域内人口の推定値の推移を示し、平成18年(2006)の人口は4,840人である。1995から1996にかけて不自然に増加しているのは、推定値が各地区の推定人口を足し合わせて作られた数値のためである。住民人口はすべて実績値である。計画で推定した平成18年(2006)の行政区域内人口5,150人に対して、住民人口の実績値は4,295人となり、900人程度食い違っている。

 図3は、事業の諸元を変更することなく、事業完了年度を10年延長して、平成28年(2016)とした場合である。行政区域内人口5,150人に対して住民人口3,390人程度と推定され、その差は、1,760人となり、行政区域内人口の34%に相当する。給水区域内人口も同程度の見込み違いがあるとすれば、平成28年(2016)の実際の給水区域内人口は3,190人程度となる。その差は、1,650人である。おおよそ2対1になる。3人で支えるべきものが2人で支える勘定になるので、負担は1.5倍になる。例えると、水道使用料金が1立方メートルあたり200円ではなく、300円ということになる。実際にかかっている給水原価は平成7年度で454円ということになっているのでこれを1.5倍すれば700円にもなる。

図1 旧柳田村簡易水道計画 人口の実績値推移

図2 旧柳田村簡易水道計画 1996-2006 人口の実績値と推定値の推移

図3 旧柳田村簡易水道計画 1996-2016 人口の実績値と推定値の推移


 能登町の方針では、平成28年度に上水道事業と経営統合して問題解決、あるいは問題解決と言うよりも救済しようとしているようである。救済する側の上水道の給水人口は、17,500人(平成18年度)であり、旧柳田村簡易水道の計画給水人口(平成28年度)4,840人に比してそれほど大きいわけではない。上水道事業の財政状況は収支トントンの様子であるが、余裕があるわけではない。近年、使用料金収入が落ち込む傾向があるなど、先行きの不安が発生している。統合が上水道の足を引っ張る懸念がある。旧柳田村の簡易水道は人口という主要要素から見ると完全に破綻しているのは明らかであるが、人口減少時代の水道の計画について考えている様子はなく、問題先送りといった感が強い。代替案がない、成り行きでしようがないではなく、この先行きの悪化を防ぎながら、行政サービスを提供する本物の知恵がためされている。
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