犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>第23回口頭弁論開催

2012年09月21日 | 辰巳ダム裁判
 2012.9.20(木)午後10時~10時20分ころ、(土地収用法に基づく事業認定処分取消訴訟事件、民事部合議B係)

 金沢地方裁判所仮庁舎第1号法廷で開催。裁判官3名(源孝治裁判長、千葉沙織裁判官、中山洋平裁判官、大場淑江書記官)、被告9名、原告7名、傍聴30数名。
 原告側は、「地すべりの陳述書」を提出。
 被告は、下記の3文書を提出。
「原告らの上申書に対する意見書」(原告から求められた文書の書証化等の措置について被告は容認できないという意見)、
「立証計画に関する上申書2」(地すべりと治水に関する、原告側の証人の紹介)、
「原告らの立証計画に対する意見書」(原告の証人の尋問の必要性の可否に関する、被告の意見)。

 進行協議形式による勉強会は、地すべりについては、12月12日あるいは18日13:30~16:30(非公開)、治水については、2月20日あるいは27日の予定。
(後日、地すべりは12月12日に確定したとの連絡有り)。

 当日、筆者が傍聴者に配布した資料 →pdfファイル、ワードファイル
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辰巳ダム>何年に1回の洪水か(一応の当方の結論!)

2012年09月18日 | ダム問題
 残暑が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
 辰巳ダムの基本高水ピーク流量の確率について、みなさまがたにいろいろご教示いただきましたが、
 当方の当面の結論は以下のようにすることにしました。今後とも、よろしく。
 ワードファイルは、以下のところでアクセス出来ます。→ホームページ(本文のワードファイル、別紙のエクセルファイル)

辰巳ダム計画の基本高水ピーク流量は、何年に1回の洪水か

1 対象降雨と対象洪水(ピーク流量)の確率は別物
 犀川では、治水計画の規模を100年(対象降雨の降雨量の超過確率年、あるいは年超過確率1/100の逆数)として設定している。このように評価された対象降雨は、平均して100年に1度の割合でその値を超過することを示しているが、この降雨に起因する洪水のピーク流量の年超過確率は一致しない。
後で述べるように、100年確率の対象降雨から想定される洪水のピーク流量はそれぞれ異なるので、年超過確率も異なる。
川の安全度、つまり治水安全度は、雨の規模というよりも洪水の規模が重要な意味を持つ。100年確率の治水安全度は、100年に1度の割合でその値を超過する(あるいは100 年に一度経験するような)洪水のピーク流量に対して安全に防御できることを意味するものでなければならない。
しかし、基準による計画の規模は対象降雨で設定されており、犀川では100年確率であり、この降雨から求めた対象洪水は必ずしも100年確率ではなく、対象洪水の確率はあいまいで治水安全度は明確ではない。雨から決めた計画規模が100年確率であれば治水安全度も100年確率と説明されることが多いがまったく別物である。

2 確率論「期待値」による対象降雨と対象洪水(ピーク流量)
 別物では無い場合を考えてみる。確率論で「期待値」※という考え方がある。対象降雨2日雨量314mmが降ったときに最も実現しそうなピーク流量の「期待値」はどれだけなのだろうか。「期待値」は確率と確率変数を掛けた総和であらわされる。犀川の治水計画で確率変数となるピーク流量は24個(547立方メートル毎秒から1741立方メートル毎秒まで)、それぞれの確率は1/24、それぞれ掛け合わせて総和する、つまりは平均値959立方メートル毎秒である。100年確率の対象降雨2日雨量314mmが降った時のピーク流量の「期待値」は959立方メートル毎秒である。これを100年確率の降雨に対応する100年確率のピーク流量とすれば、これが確率論での治水安全度1/100のピーク洪水量となる。旧基準に記載のあった「カバー率50パーセント」も類似の考え方である。
※:英語を直訳した言葉で、日本語の期待という言葉には実現を待ち望む願望が含まれるが、このような意味はなく、単に最も実現しそうな値ということである。

3 治水計画の基本の基本高水ピーク流量は確率的に対象降雨の確率と遮断がある
 「河川砂防技術基準」の考え方では、貯留関数法などの流出解析手法で求めたピーク流量群から、慎重に検討して治水計画の基本となる「基本高水ピーク流量」を決めているので、対象降雨の確率と確率的には遮断がある。決められた基本高水ピーク流量は確率的には明確になっていないが、あいまいに計画規模の治水安全度と言い習わされている。このピーク流量の確率はどれだけだろうか。
 ところで、年超過確率と超過確率とは違う。対象降雨である二日雨量314mmは、年超過確率1/100二日雨量として求められている。年超過確率1/100の意味は、2日降雨量が314ミリメートルに等しいか、それを超える降雨量が生起する確率であり、1/100あるいは0.01を年超過確率とよぶ。年超過確率の逆数が、確率年となり、100年確率である。
単に超過確率であれば、逆数が確率年にならない。辰巳ダム計画では、年超過確率1/100の雨に対してピーク流量は24個ある。これらのピーク流量は毎年の最大値というわけではない。このピーク流量の平均値は、959立方メートル毎秒であり、超過確率は、1/2となるが、逆数が2だから2年確率ピーク流量というわけではない。単に超過確率1/2あるいは0.5ということである。
 だから、辰巳ダム計画で年超過確率1/100の雨が発生したときに、ピーク流量の平均値959立方メートル毎秒が生起する超過確率は1/2、あるいは0.5、もしくは50%となるということになり、959立方メートル毎秒に等しいか、これを超えないピーク流量が生起する確率となる。別の言い方をすれば、「100年確率の雨が降ったときに959立方メートル毎秒が出現する超過確率は50%である。」、また「547立方メートル毎秒が出現する超過確率は92%である。」、同様に、「100年確率の雨が降ったときに1741立方メートル毎秒が出現する超過確率は0.3%である。」(別紙「辰巳ダム計画の基準点ピーク流量の超過確率」を参照)。

4 洪水のピーク流量の確率は流量確率で求める
 1/100の降雨から得られるピーク流量は無数にあり、大きさはそれぞれ異なるので一義的に1/100のピーク流量を決めることができない。1/100の降雨があった時という条件がついて、それぞれの生起確率があることになる。その内から選抜したピーク流量を基本高水ピーク流量として決めているが、結局、超過確率年はわからない。
100年に1度生起するピーク洪水を統計的に求めるには、実測の流量観測記録から、毎年の最大流量を選抜して得られた流量群から確率統計計算で求めなければならない。

追記1 雨量確率と流量確率を区別して考えること
 雨量確率が1/100の雨から、平均値959立方メートル毎秒が生起する確率は1/2となるので、生起する確率は、(1/100)×(1/2)=1/200となる。959が生起するのは、1/100の雨ばかりではなく、1/90、、、1/10のときにも1/2よりも小さいが生起することが見込まれる。これらを加算したものが、959立方メートル毎秒が生起確率となる。結局、1/200+α=1/100となるのだろう。河川工学者の議論では、このような結論に至っているらしいが、当方の理解はまだそこまで到達していない。

追記2 100年確率の対象降雨の継続時間は2日
 犀川の辰巳ダム計画では、100年確率の対象降雨は、継続時間が2日であり、流域平均2日雨量314mmである。1時間雨量、3時間雨量は100年確率とはかぎらない。
だから、1時間雨量、3時間雨量で治水の計画規模を説明できない。例えば、平成20年の浅野川洪水は、流域平均3時関雨量147mmと著しく大きいが(200年確率といわれている!)、2日雨量は167mmであり、100年確率の対象降雨260mmに対して、10年確率程度の規模である。浅野川治水の計画規模を尺度で見ると、浅野川洪水は10年確率,つまり10年に1度経験するような雨だったことになる。

追記3 確率は一つのものさしではないか
 標準正規分布するという仮定、少ないデータ、外挿問題(過去のデータから将来が予測できると仮定していること)、30~40年のデータがあれば100年確率流量をある程度の正確さを持って推定できるにすぎないこと、などの考えを勘案すると、あまり大きな確率年の議論をすることの意義はすくない。そして、無理に何万に1回というあいまいな表現ではなく、「100年確率の雨が降ったときに1741立方メートル毎秒が出現する超過確率は0.3%である。」と表現する方がより正確であり、まぎれがないと思う。
平成24年9月18日 中 登史紀
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辰巳ダム裁判>第23回口頭弁論について

2012年09月17日 | 辰巳ダム裁判
辰巳ダム裁判第23回口頭弁論
(土地収用法に基づく事業認定処分取消訴訟事件,民事部合議B係)
 2012年9月20日(木)10:00~,金沢地方裁判所仮庁舎第1号法廷。傍聴自由。
 原告は、地すべりの陳述書を提出。
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関連情報>平成24年の渇水(能登町の寺田川ダムが空になった!)

2012年09月08日 | 関連情報
 全国的な渇水であるが、一様ではない。石川県内では、奥能登で渇水騒ぎである一方、金沢周辺ではあまり被害がないようである。奥能登でも濃淡がある。能登町の渇水が新聞紙面をにぎやかにしているが、能登町の中の旧柳田村周辺は渇水被害はなさそうである。上流に位置する北河内ダムは満水状態で水不足の様子はない。

 平成6年以来の渇水ということで気象台の降雨記録を調べてみた。平成6年と平成24年の3ヶ月(6月~8月)降雨量を比較するとつぎのようである。
 気象台名、平成6年3ヶ月降雨量、平成24年3ヶ月降雨量、平年値降雨量(30年平均)は、
    平成6年 平成24年  平年値
 金沢 172mm 476mm 556mm
    (31%) (86%) (100%)
 輪島 261mm 344mm 521mm
    (50%) (66%) (100%)
 である。
 金沢では、平年値の86%とやや少ない程度であるが、輪島では66%とやや厳しいが、平成6年渇水ほどではない。降雨は地域的に一様ではないので能登町の寺田川周辺はより厳しい渇水だったのだろう。5年前に完成した寺田川ダムに貯水された水でかんがいは賄えたが、水道水までは賄えなかったということか。

 上水道の水不足で一部の公的施設の営業停止したようであるが、一般家庭への上水供給は、給水車(コンクリートミキサー車を活用して浄水場へ水を輸送したらしい。)による供給と仮設の送水管で何とかしのげたようだ。もともと水の少ない能登でも、ハードとソフト対策で平年の雨量の7割程度の渇水であれば容易にしのぐことができるという社会インフラストラクチュアが確立しているということだろう。

能登では、ハードとソフトの両対策が求められるが、金沢ではどうだろう。平成6年の観測史上70年間の最大規模の渇水であったが、農業被害もほとんどなく、水道水源のダムの貯水も問題なく確保できた。平成6年8月17日に、犀川ダムと内川ダムの合計貯水量が290万立方メートルまで低下した。2ダムの利水ダム容量1225万立方メートルの24%まで低下したことになるが、空にはならなかった。その上に、堆砂ダム容量の空き容量が234万立方メートル残っていたので、これを加えると合計524万立方メートルとなり、利水ダム容量の4割も残っていたことになる。

 渇水に備えるハード対策の目標は10年に1回起きる確率の小雨に対してである。節水などのソフト対策を加えるとほとんどの渇水に対応できるといわれる。犀川では、70年に1回規模の渇水でもダムが空にならなかったということは、過剰なハード対策がなされてしまったということになるのだろうか。

 作成したエクセル表などは、当方のホームページで。
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ダム問題>負の遺産「ダム湖の堆砂」

2012年09月07日 | ダム問題
 溜め池とダム湖は違う。ともに水を貯める大きな桶ではあるが、違うものである。違いを一つあげると、溜め池は年に1回泥抜きをするが、ダム湖は貯めたままである。泥抜きをすれば、未来永劫使い続けることができるということになるが、貯めたままにしておけばいずれ泥が貯まって使えなくなるということになる。溜め池は、千年の歴史があるが、ダム湖は百年の歴史である。ダム湖は生き残れるのであろうか。

 その最大の問題点は堆積する「泥」である。普通は、堆砂(たいさ)というのできれいな砂を想像するが、腐った落ち葉や樹木も含まれるので必ずしもきれいではない。これを処分しようとするとたいへんやっかいなのである。
 
 犀川水系の5つのダムには、平成23年現在、205万立方メートルの堆砂があると推定している。これを適当に処理処分しようとしても量が量だけに容易ではなくて、低地へ運んで埋立するとしても100億円はかかるだろう。これは、負の遺産である。

 この負の遺産が毎年増え続けるのである。毎年約3万立方メートルが増える。3万立方メートルは100メートル四方の運動場に3メートルの高さに積み上げた大きさである。ダムが建設される前は、これが海まで運ばれて海岸線の砂浜を維持する供給源ともなっていた。これが、ダムで遮断されると、これに代わって人工的に養浜しなければならないことにもなる。

 「ダム年鑑1999」(砂防ダムはのぞく)によれば、全国に3200のダムがあり、石川県には55のダムがある。このダム数から概算して、石川県全体では、犀川水系の10倍、日本全体ではさらに100倍すると、1000倍となる。ということは、10兆円の負の遺産があり、毎年数千億円のマイナスの利息が積み上がっていることになる。少なくともこれを上回る利益がなければならない。どう思いますか。
 平成24年9月6日 中 登史紀
【参考】
平成16年に作成した表に平成23年現在のデータを加えて修正。
 表「犀川水系のダムの堆砂」
 表「石川県内のダムの堆砂」
上記の表は、以下のところに収納されている。
 ダムの堆砂を考える №4
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