犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

能登の北前船の古文書を調べた(その3)

2019年10月25日 | その他
――江戸期の貨幣の現在価格はいくらか――
 
 仕切状は、取引商品の代金の計算書である。現在の貨幣価値に換算しないとよくわからない。
銅銭一文は?
銀壱匁は?
金一両は?

 商取引には、通常、銀貨と銅銭が使用されていた。銭(文)と銀貨(匁)の現在価値を当時の値段と現在の値段の比較から推定する。

 そば一杯が16文ならば、400円として、1文25円である。米一升が100文ならば、600円として、1文6円である。1文は25円か、6円か。何を目安に評価したらいいのだろうか。

 商品の相場は変動しているので、1700年頃と1800年頃の相場と4つの品目の値段を調べた。
 1700年(元禄)頃の金、銀、銭の相場は、
 金一両=銀60匁=銅銭4000文、銀1匁=67文である。
 4つの品目の値段は、米一升=25文、酒一升=70文、そば一杯=8文、人夫日当=80文である。

 1800年(寛政)頃の金、銀、銭の相場は、
 金一両=銀63匁=銅銭6400文、銀1匁=105文である。
 米一升=100文、酒一升=160文、そば一杯=16文、人夫日当=200文である。

 現在の値段を米一升=600円、酒一升=1200円、そば一杯=400円、人夫日当=6000円とする。これを一覧表にすると表1のとおりである。

表1 各品目の各時代の値段
品目  1700年頃 1800年頃  現在
      元禄   寛政
       文   文    円
米一升    25    100   600
酒一升    70    160   1200
そば一杯   8    16    400
人夫日当   80   200    6000

 元禄に比べて寛政には、物の値段が2~4倍に上がっている。

 現在の品目の値段と比較して銭の現在価格を調べる。
 1700年(元禄)時点で評価すると、
米一升=25文 → 現在価格600円とすると1文=24円。
酒一升=70文 → 同1200円とすると、1文=17円。
そば一杯=8文 → 同400円とすると1文=50円。
人夫日当=80文→ 同6000円とすると、1文=75円。

 1800年(寛政)時点で評価すると、
米一升=100文→ 現在価格600円とすると、1文=6円。
酒一升=160文→ 同1200円とすると、1文=8円。
そば一杯=16文→ 同400円とすると、1文=25円。
人夫日当=200文→ 同6000円とすると、1文=30円。

 一覧表にすると表2のとおりである。
表2 一文は現在の何円に相当するか
換算    1700年頃   1800年頃  現在
        元禄   寛政
品目      円/文 円/文  円
米一升     24   6    600
酒一升     17   8    1200
そば一杯    50   25   400
人夫日当    75   30   6000

 表2から、いずれの品目も1700年頃から1800年頃半分以下に下がっているが、米・酒グループとそば・人夫グループと大きく差違がある。当時の品目の価値と現在の品目の価値が大きく変動したのだろう。どちらのグループの価値の方が変動が少なく、より信頼できる目安なのだろうか。
 価値の変動の少ないものを目安にした方が当時の貨幣の価値をより正確に把握できるだろう。

 変動の少ない基準となる目安がはっきりしないので、価値の変動を知るための手がかりとして、各時代毎の各品目の関係を検討してみる。米と酒グループの代表として米を、そばと人夫グループの代表として人夫を選ぶ。
 米一升に対する各品目の関係を表3に示す。
表3 米一升に対する各品目の関係
品目   1700年頃 1800年頃 現在
        元禄  寛政
        比率  比率  比率
米一升     1.00  1.00  1.00
酒一升     2.80  1.60  2.00
そば一杯    0.32  0.16  0.67
人夫日当    3.20  2.00  10.00

 また、人夫日当に対する各品目の関係を表4に示す。
表4 人夫日当に対する各品目の関係
品目   1700年頃  1800年頃 現在
        元禄  寛政
        比率  比率  比率
米一升     0.31  0.50  0.10
酒一升     0.88  0.80  0.20
そば一杯    0.10  0.08  0.07
人夫日当    1.00  1.00  1.00

 表3から、米一升に対するそば一杯と人夫日当との関係は大きく変化している。表4も根拠が表1だから傾向は同様であるが、この表がよりわかりやすい。人夫とそばの関係は時代が変わってもほとんど変化がない。一方、人夫と米・酒との関係は江戸期に比べて現在は大きく変化している。
 米と人夫とどちらの価値がより変動が少ないと判断できるだろうか。

 米は機械化などで効率があがり、少ない手間で大量に生産されて価値が下がり、安く提供されるようになった。酒も同様である。
 一方、人夫日当は、一日の労力、つまり力仕事の代償とみると、昔も今も価値の変動はより少ない。そうすると、そば一杯もそばをゆでて客に提供する労力は昔も今も変わらないと考えてよい。
 ということで、人夫日当・そば一杯グループの方が価値の変動が少なく、評価の目安となろう。人夫日当とそば一杯のどちらを目安にするかであるが、人夫は景気や災害などの需要供給の変動があるが、食べるものの需要は人口に見合って変動がすくないと考えて、そば一杯を目安に選ぶ。

 江戸期でも中期と後期では著しい相違があるが、
 ここでは、1800年頃、つまり寛政期のそば一杯16文を目安にすると、
銅銭一文は、25円
銀一匁(105文)は、2千6百円
金一両(銀63匁)は、16万円
 である。
 ちなみに、千両役者と言えば年収が千両、つまり1億6千万円であり、現代風に言えば、一億円プレイヤーというところであろうか。
(つづく)
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