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犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

【犀川の河川整備】犀川で記録的な豪雨があった

2022年08月05日 | 犀川の河川整備
 すっかりご無沙汰していたが、犀川の出水ならびに降雨情報を確認してみた。
 2022年8月3日から4日にかけて梅雨前線が停滞して石川県に豪雨が発生した。
 金沢の南に位置する小松市を流れる梯川では洪水氾濫したが、犀川は河川整備が進んでいたこともあって洪水氾濫は起きなかった。

 犀川には、洪水調節ダムが三か所、犀川ダム、辰巳ダム、内川ダムが設けられている。
 石川県河川総合情報システムによれば、各ダムの最大の流入量、放流量は(単位:m3/s)
 犀川ダム 539→325(8/4,11:00)214削減
 辰巳ダム 455→131(8/4,12:00)324削減
 内川ダム 239→117(8/4,11:00)122削減
 である。
 単純に計算すると、1233を573まで660を削減したことになる。

 仮に、洪水調節ダムが全く設けられていないとすると出水量(単位:m3/s)はおおよそつぎのとおりとなる。
 犀川ダム流域内の最大出水量(流域面積57.8km2) 539
 辰巳ダム流域内の最大出水量(流域面積19.3km2) 130(=455-325)
 内川ダム流域内の最大出水量(流域面積34.5km2) 239
 上記流域を除き残りの犀川大橋地点の流域の最大出水量(流域面積38.6km2) 260(=130*38.6/19.3)
 犀川大橋地点の流域面積は、合計150.2km2である。合計の出水量は、1,168m3/sとなる。
 犀川大橋地点の流下能力は、1,230m3/sである。
 
 ダム調節無し出水量1,168m3/s < 流下能力1,230m3/s
 
となり、今回の豪雨による出水はダムが無くても洪水氾濫は起きなかった。

ただし、ここでは浅野川放水路からの流量を考慮に入れていない。浅野川放水路により、浅野川出水の一部を犀川で負担しているのでその補完分として内川ダムの洪水調節は必要である。
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犀川の河川整備>千年確率?の洪水浸水想定区域図について

2018年08月16日 | 犀川の河川整備
 先日(2018.7.26)、石川県が犀川について100年確率洪水(2日雨量314mm)をはるかに超える、想定し得る最大規模の降雨(2日雨量860mm)を想定した「犀川洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」をHP上で公表した。近年、全国各地で相次ぐ豪雨による洪水氾濫を河川管理者が想定外だと弁明することが難しくなり、従来の想定規模を著しく引き上げざるを得なくなったことも背景にあるのだろうか。

 これは、石川県の意図はともかく、石川県の治水の考え方の大転換ということができる。
 これまでは、100年確率洪水を想定した「犀川洪水浸水想定区域図(計画規模)」を公表していた。100年確率洪水に対して、治水ダムと河道で洪水の全量を氾濫させることなく流すことができるので住民の生命と財産を守ることができる、だが、万が一、堤防が破れることがあれば、図に示したような浸水が起きるかも知れないので、これを参考にして避難計画などを示した防災マップを作成して準備をしてくださいというものだった。万が一の場合を示しただけで、このような事態はほとんど考慮する必要はなく、100年確率洪水に対して安全で氾濫はしない、とは記載されてはいないが、この図に対する当方の解釈だった。

 今回、公表された図は、降雨の発生確率を示すことなく、最大規模の降雨を示し、その場合はこのような範囲で浸水しますよと明示した。洪水氾濫に対して、河川管理者である石川県は、住民の生命と財産は守ることができないので、この浸水図を参考にして作成された防災マップに従って避難してください、あるいは浸水の恐れの高い低地に居住するのは止めてください、洪水氾濫の警告というのがこの図に対する当方の解釈である。

 従来、治水は石川県河川課に任せてくれればいい、経験豊富な専門家に任せればいいので、素人が口出ししないでくれという態度だったといえよう。石川県が行ってきたことは、より大きな洪水を防御するために、洪水防御計画の基本となる数値である「基本高水」を上げることだった。基本高水を治水ダムと河道に配分するが、河道の拡張には制約があるので、基本高水を大きくすると、必然的に治水ダムが必要になる。その結果、犀川には3つの治水ダムができた。つまり、治水対策とは、基本高水をより大きく設定し、治水ダムを造ることだった。だが、治水ダムによる治水の限界をやっと理解したようだ。
 ちなみに、西日本豪雨では、多数のダムがパンク(満杯)し、洪水調節機能を失った。パンクするまでは、なにがしか洪水調節の機能は働くが、パンクすれば機能はゼロとなり、ダムに入ってくる水をそのまま、下流へ流すことになる。天然の状態にもどっただけで後のことはダム管理者には何の責任もない。だが、この状況を下流住民の立場でとらえてみると責任がないどころではない。治水ダムがなければ、川の水位が1m、2m、3mと時間の経過とともに上昇し、やがては5mにも達すると仮定すると、ダムがある場合は、川の水位が1mの状態が続き、突然、5mになると想像したらいい。逃げ遅れることになるだろう。現実に、今年7月の西日本豪雨災害で発生した。

 治水ダムは治水の切り札ではない。今頃になって、石川県河川課はやることはやったから、後は知らない、自己責任でやれ、治水対策を放り出したというように見えないこともない。もともと、自然現象を人間が制圧できるわけはなく、(基本高水を大きくすることで根拠づけした)治水ダムに依存しすぎたことが間違いだった。事実上、治水ダムを造ることで治水を解決するということを放棄したということだ。

 想定しうる最大規模の降雨で発生する(河道の洪水防御計画をたてるわけではないので、基本高水ではなく)高水を設定し、これによって氾濫で浸水した区域図を示した。このことで、適度な数のダムを造るために基本高水の大きさに制約があったが、この制約がなくなった。過去のいきさつにとらわれず、大きい想定ができる。辰巳ダムは、確率主義で100年確率という目安で決めたが、今回の設定は、聞くところによると、千年確率規模だそうだ。「想定し得る最大規模の降雨」を科学的根拠にもとづいて決めるのは難しいが、割り切って、一桁上げて確率年を決めたようだ。
公表図によれば、流域平均2日雨量を860mmで、100年確率の2日雨量314mmを求めた確率分布曲線を延長して千年確率で求めたものだろう。

 石川県以外では、滋賀県などで想定内、想定外と区別しないで、すべての降雨に対応する考え方で治水がなされている。流域全体で対応する流域治水と呼ばれるものである。また、総合治水(流すだけでなく、貯めて出る量を制限する)も同様の工夫の一つである。石川県もやっと時代の流れに追いつきつつあるのだろう。辰巳ダムを完成させて、積み残しの治水ダムが無くなったので、身軽になったか。
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犀川の河川整備>犀川の河原の様子が変だ

2016年07月25日 | 犀川の河川整備

 河道が小綺麗になって置き石が整然と配置され、住民が川辺で憩う親水空間としてよくなったかなとも思うが、なんだか変である。
 犀川の支川の伏見川では、みお筋に踏み石をならべて人が渡れるようにしてあったりするが、これも変である。

 変なのは当たり前である。川に親水の機能を過剰に期待してしすぎているからだ。平生は穏やかな水の流れと川音があり、さわやかな風が吹いているが、流域に大きな雨があれば洪水が発生して大量の水と土砂が流れて風景は一変する。

 だから、過剰な親水空間の創造は徒労である。河川管理を担当する行政は余計なことをするべきではない。

 川は本来、自然発生的にできたもので、予測しがたい自然現象の結果であり、人々がこれに過剰にかかわり、こちらの都合で何とでもなると考えるのは行き過ぎである。管理上の制約の中でおさめるべきである。住民も過剰の期待をもたないほうがいい。

 都市という人工的なうつわのなかで、川は自然のいとなみが強く反映されているところである。おとぎの世界の非現実を楽しむところではない。川の中までディズニーランド化するべきではない。

【写真1】2年前の、上菊橋から上流を望む(2014年2月21日)
 上流で鞍月用水堰の撤去工事中であったので、濁水が流れている。川底は以前にあった中州や寄り州が除去されて均され、殺風景ではあるが。


【写真2】上菊橋から上流を望む(2016年7月24日)
 人工的に置き石が配置された。角が取れて丸くなった川石ではなくて、山から掘り起こしてきた石らしい。公園に配置された庭石の風情である。


【写真3】下菊橋から上流を望む
(写真の中に写っているのは、上菊橋である)


【写真4】置き石の拡大
 小魚の生息環境を整えるという名目もあるらしい。川を釣り堀化するのと同じ発想ではないか。

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犀川の河川整備>寺津用水を利用した水力発電

2015年10月24日 | 犀川の河川整備
 県道と辰巳ダム取り付け道路の分岐点付近に、新辰巳発電所の導水管とそのヘッドタンクがある。新辰巳発電所が増強されて、説明板が設置されていた。

 辰巳発電所(最大出力240→900kW,明治33年~昭和44年廃止)
 新辰巳発電所(最大出力6000→6200kW,昭和46年~平成26年に増強)
 
 写真は、ヘッドタンクと説明板、説明板、水圧鉄管路である。


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犀川の河川整備>浅野川と犀川の治水安全度の「公開質問」の返答あり

2014年12月25日 | 犀川の河川整備
 平成26年10月27日、石川県河川課長宛の公開質問状「浅野川水害相当規模洪水に対する対応についての公開質問状(2)――浅野川と犀川の治水安全の考え方が違うのはなぜか――」に対して、11月17日に、文書ではなく、口頭で河川課担当者から、説明があった。

 質問を要約すると、「過去の既往最大洪水と比べて、犀川は安全すぎるし、浅野川は危険すぎる。」という指摘である。

 これに対する答えは、要約すると、
「犀川、浅野川のいずれも100年確率対応の整備をしている。同じ安全度のレベルである。犀川では、過去の洪水と比べて基本高水が大きいということは、十分に安全になったということだ。」

 基本高水の大きさの評価について、こちらは過去の最大洪水を、相手は100年確率値を判断のもとにしている違いである。1/100確率値を金科玉条にされて、どうも議論がかみあわない。

 基本高水のピーク流量を決定する際に、犀川ダム時点では、既往最大洪水で決めていたが、その後、推計統計学の手法で計画規模の超過確率値で決めるようになったことも反映されているだろう。

 100年確率値がくせもので、一義的に決まらず、犀川大橋基準点の100年確率ピーク流量は、547~1741㎥/秒と幅があり、この内から最大値(科学的合理性に乏しい裁量か!)が選択されている。

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