犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>辰巳ダム裁判判決の検討結果(補足)

2014年07月03日 | 辰巳ダム裁判
(犀川の堤防の決壊)
 昭和36年の第二室戸台風によって金沢の中心市街地が浸水した。
 この原因は「堤防の決壊」としたが、現実には、
 パラペット(コンクリート壁)を越流した水流によってパラペットの一部が背後から、本川側に押し出された形で欠落して、この欠落部分から河水が市街地へ流れ込んだようである。

 地元の詳しい方の話によると、
「当時は80㎝のバラペットがあり、背後は堤防となっていた砂利道であった。このパ
ラペットの泉堰直上流部で越流が生じ始めた。越流水は砂利道からパラペットの背後に浸透して堰の下流部では水面が低いために過剰間隙水圧となり、川側に倒されて30mほどの区間、パラペットの欠落区間が発生
し、越流水が市内へ流れ込んだ。堤防道路自体は路肩部が欠損した」ということで、
全面的な破堤をしたわけではないとのことである。

 パラペットも堤防の一部であり、堤が破れたのであるから、「破堤」である。
 一方、「堤防の決壊」という表現は、堤防全体が崩壊したという印象が強いかもしれない。決壊という表現の場合、「堤防の一部の決壊」とした方がよさそうである。
 であるから、犀川の「破堤」あるいは「堤防の一部の決壊」である。
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辰巳ダム裁判>辰巳ダム裁判判決結果の検討(その6)

2014年07月02日 | 辰巳ダム裁判
(すでに2重の防御がある)
 犀川では、53年前の昭和36年に堤防が決壊する事態が発生して中心市街地が氾濫した。それ以来、堤防が決壊するという氾濫は起きていない。その間に、治水のために、犀川ダム(昭和41年完成)、内川ダム(昭和50年完成)、河道整備(中流部、53年完成)と昭和36年に氾濫した犀川大橋地点では、3度にわたり、安全度があがった。

 過去の最大規模の洪水は、900立方メートル毎秒程度である。これに、平行して流れる浅野川の洪水防御のために浅野川放水路から受け入れている分250立方メートル毎秒を加えると1150立方メートル毎秒程度となる。これが、犀川で過去最大規模の洪水が発生したときに、犀川大橋地点で流れる最大流量である。

 これに対して河道の流下能力だけで、1230立方メートル毎秒である。ダムによる洪水調節が無くとも氾濫しないのである。過去最大規模の洪水を超えても治水ダムによる防御がある。辰巳ダム建設以前にすでに2つの治水ダムがあり、過去最大規模を超える洪水が発生しても、一つ目のダムで防御できる。さらに大きい洪水でも2つ目のダムで防御するという二重の安全が確保されている。しかも、内川ダム時点では、100年確率の雨が降った場合にも安全を確保することができると説明していた。
さらに三重の安全を確保しなければ洪水を防御できないと石川県は主張するのか。

(切り札の切り損ないを辰巳ダムに転嫁)
 石川県知事が、辰巳ダム裁判判決結果の記者会見で、浅野川水害との関連を問われたことに対して、「辰巳ダムがもっと早くできていれば、浅野川水害の被害が少なくて済んだ」という趣旨の発言をした。暗に、辰巳ダムの着工を遅らせた、反対グループに責任があるかのような発言をした。
 すでに犀川ダムがあった。加えて、浅野川治水の切り札だった、「浅野川放水路と内川ダム」もあった。浅野川水害で、このダムの効果は役に立ったのか、立っていないのか。この切り札を切り損なったのではないか。
 切り札を切り損ないを誤魔化して新たな切り札が必要と主張するのか。
(つづく)2014.7.2
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辰巳ダム裁判>辰巳ダム裁判判決結果の検討(その5)

2014年07月01日 | 辰巳ダム裁判
(最大流量と基本高あるいは計画高水)
 ところでというか、そもそも、河川管理者は何に対して、裁量を持って行うことを委ねられているのだろうか。
 いうまでもなく、治水(洪水氾濫の防止)である(ここでは、利水等には言及しない)。そのためのハードな対策ではその構造物の設計・施工の基準が必要となる。それが、基本高水であり、一つの設計の基準となる。

 治水事業に際して、まず、河川整備基本方針が策定される。これは、一言でいえば、基本高水を決定することである。つぎに、河川整備計画が策定されるが、河道に負担できる流量が確定すれば、それを超える部分の流量は、ダムに配分される。つまり、基本高水が確定して、河道に配分される流量が制約されていると(犀川の場合、犀川大橋基準点で流下能力が制約され、河道に配分される流量が決められている)、自動的にダムに配分される、つまり、ダム案がこの時点で決まってしまうことになる。

 基本高水が決定されると、すべてが決定づけられるといっても過言ではない。この基本高水を決めることについて、河川管理者の裁量が委ねられているともいえる。
一つの設計の基準であり、その決め方の方針は手引き(基準)にあり、詳細は河川管理者の裁量にゆだねられている。大きな設計数値であってその評価は河川管理者にフリーハンドを与えているのでどうとでもなる。ただ、国がその方針を「通知」という形で技術的基準をしめし、これを目安として河川管理者が判断するという形式である。これには、考え方、方針だけが記載されており、目標値設定のやり方は、河川管理者にゆだねられている。辰巳ダム計画でみると、その目標値設定の巾は著しく大きい、過去の最大規模の洪水と比べてその差は著しく大きい、といっても技術的基準に従って算定していると主張すれば、それ以上、追求することは難しい。

 そして、注意しなければならない点は、基本高水あるいは計画高水は、実際に起きる最大流量とは別物であることである。実際の川の最大流量は、不確定のものである。日本のどこかで洪水があれば、ここでもそのような洪水が起きるのではないか、想定外のことが起きるのではないか、現実に平成20年には短時間ではあったが、1/200確率相当の降雨があって浅野川水害が発生したといわれている、近年異常気象のため、豪雨が発生しやすくなっているとも言われることから、住民の意識の中では不確定な最大流量がどんどん大きくなり、より大きく目標設定することで安心だという気分もある。

 このような河川管理者への追い風もあるなかで、基本高水あるいは計画高水を設計の基準として目標値設定することは河川管理者の裁量にまかされているのである。少なくとも手引き(基準)の方針に則っている限り、これを司法で裁量の逸脱・濫用で裁くのは無理だろう。

 裁量で違法を指摘できなければ、社会通念上著しく不相当な点があるということで違法を指摘せざるをえないということになろう。
 つぎに、わかりやすい例を一つあげてみる。(つづく)

【参考】最大流量と計画高水流量
「或る川の最大流量というものは不確定なものであって、計画高水流量とははっきり区別して考えなければならない。計画高水流量というのは何か計画をたてる時に一つの設計の基準にとるものであり、実際に起こるであろう最大流量とは別ものである。これが不確定である限り、この設計の内容は不確定なものを安全にそうして経済的に吸収できるように考えなければならない。この事実を間違えると堤防が決潰したりする」(『川の昭和史』安藝皎一,p.251)
(つづく)2014.7.1
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