犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>カバー率と基本高水ピーク流量の決め方などについての感想のつづき

2013年04月25日 | ダム問題
 カバー率と基本高水ピーク流量の決め方に関するブログに関して、いつもお世話になっているKさんから、懇切なご指摘をいただいた。
 確率解析にかかる部分については、理解しようと努めるが、(?_?)(@_@)(*_*)しているところである。
 引き伸ばし操作については、つぎのようなご指摘を受けた。

「色々と異論はありますが、現実に引き伸ばし操作に代わって適切な計画雨量相当の対象降雨を決定する方法はありません。2倍程度にとどめるとしても、利根川の総合確率法では3.13倍まで取り込んでいます。対象降雨の数を増やすためにはこれまたやむを得ないことです。総合確率法では30以上の対象降雨が必要のようです。」

 止むを得ないとしても、引き伸ばし操作は信用できない。少なくとも、犀川では、引き伸ばし操作によって獲得されたサンプルデータ群が水文統計の対象になりうる、信頼性のあるものとはとても思えない。ブログで前記したとおりである。
 独立行政法人土木研究所の吉谷純一「降雨確率に関する研究」によれば、概略、つぎのような説明がある。
「水文統計の前提条件は、ランダム性、独立性、均一性、ステーショナビリティの4条件であり、ランダム性と独立性はほぼ問題なく成り立つが、均一性とステーショナビリティは満たされる保証はない。しかし、実務上これらを仮定し、水文統計解析を行っても事実上支障はない。そして、前線性降雨と台風による降雨は、厳密には異なる母集団に属すると考えられるが、実務的に均一性があるとみなされる。」
 
 つまり、均一性についての保証はないが、実務的に均一性があると仮定して、水文統計が行われているのである。ところが、犀川の例では、この均一性に重大な疑いがあるにもかかわらず、何の言及もなく(検討した形跡もない)、水文統計解析がなされているのである。実務的に引き伸ばし手法を取らざるを得ないとしても、解析された結果を鵜呑みにするような判断は全く誤りであると考えている。

基本高水ピーク流量をどのように決めるかについては、つぎのように整理してもらった。
「(1)過大と思われるピーク流量を棄却し、残ったピーク流量群の平均値(中央値)を採用する。
(2)過大と思われるピーク流量を棄却し、残ったピーク流量群の最大値を基本高水流量に決定する(新基準)
(3)棄却を実施せずにピーク流量群の平均値(中央値)を採用する。(Kさん提案)
(4)既往最大値を基本高水流量に決定する(今回の中さん案)」

 この点に関しては、当方のブログでもはっきりは主張しているわけではないが、現時点では、実務的にわかりやすいものがいいと思う。
(4)というよりも、どちらかというと、
「(2)の「新基準」で、但し、棄却基準を厳密に設定する。」あるいは、「(1)の中央値の1.3倍に決定する。」
というような考えでいいかなと思っている。辰巳ダム裁判では、前者である。

(4)でもいいのであるが、金沢の既往最大値は過去100年間程度しかわからない。100年に1回ですと、400年以上の金沢の歴史から見ますと、4~5回の発生と言うことになる。比較的、大きな都市でありながら、川の傍での生活も風情がある土地柄であり、もう少し少なくしたいという思いがある。
「基準」では、犀川は二級河川の都市河川でC級扱いであり、「基準」で示された計画規模は「50~100年」で100年が採用されている。「基準」の計画の規模が市民の感覚に追いついていない。

「(2)の「新基準」で、但し、棄却基準を厳密に設定する。」
この考え方は、一つに絞られるので、まぎれがなくていいかと思う。対象とする降雨の確率は明らかであるが、決定したピーク流量の確率はあ いまいであり、過大になる可能性もある。犀川では600年確率程度になり、400年の歴史で多くて1回という水準であり、過大かどうか判断が難しいところである。

「(1)の中央値の1.3倍に決定する。」
 中央値が決まれば、自動的に決定できる。掛け率(1.3)は地域特性で決まる安全率と考えれば、数値の意味が比較的明解である。
マイナス面は、旧基準の「カバー率60~80%」と同じで、「1.3倍」という数値に明解な説得性がないのでつけ込まれやすいところである。
 100年確率のピーク流量に対して、200年確率のピーク流量はおおよそ1.2~1.3倍と言われている。1.3倍することでピーク流量は200年確率程度となり、金沢市の400年の歴史で2回ほどの頻度で大洪水が発生するということになる。許容できる範囲ではないかと考える。

 実務的にわかりやすい視点から、当方の意見を述べた。
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辰巳ダム>カバー率のつづき5

2013年04月22日 | ダム問題
 引き伸ばし手法について、降雨の3要素のうちの降雨量の意味はわかりやすい。引き伸ばした降雨は目標の規模の降雨量そのものである。しかし、降雨の3要素のうちの時間分布及び地域分布は同じ引き伸ばした結果が目標の規模の降雨かどうか、前記したように科学的に説明できない。ということで、引き伸ばした降雨から求めた降雨ピーク流量群が、確率的に解析するべき正当なデータの集団であるのかどうかわからない。

 棄却した後のピーク流量群の方が、引き伸ばし手法による計算過程の(本当に目標とする規模の降雨に対応しているのかどうかわからないピーク流量を排除しているという意味の)適正化を図っている面もあるので、統計解析するべきピーク流量群としてより適切ではないかと考える。

 いずれにしても、基本高水ピーク流量を決めるための手法として、引き伸ばし手法を採用することになっているので、これを適切に行うためには、厳密な棄却基準が肝要である。
犀川の例では、石川県は棄却基準を緩めて400年確率を超える降雨をもとに、基本高水ピーク流量1741を決めている。棄却基準を厳密にすると、1741は棄却されて、そのつぎのピーク流量は1312となり、これが「新基準」により、厳密に決めた基本高水ピーク流量となる。

 これは、カバー率50%値(中央値)938の約1.4倍となる。石川県が想定した基本高水ピーク流量1741は、約1.9倍である。
 
 ちなみに、棄却しない場合のピーク流量群のカバー率50%値(中央値)1043に対しては、約1.3倍である。石川県が想定した基本高水ピーク流量1741は、約1.7倍である。

 新基準を厳密に適用して求めた結果は、棄却するしないにかかわらず、ピーク流量群のカバー率50%値(中央値)の1.3~1.4倍程度ということになる。犀川の例についていえば、既往最大洪水に比較して十分すぎるほど大きい結果となっている。

 また、このピーク流量1312は、約1/600、600年確率流量となる。「新基準」では、「洪水防御計画においては、基本高水のピーク流量の年超過確率が重要な意味を持つので、年超過確率において両者の間に著しい差違を生ずるおそれがある場合には、これらの関係を明確にし、他の手法によって計画規模を定めることを検討する必要がある。」(p.30)としているが、「新基準」の決め方に従うとこれくらいの差違が生ずると考えられる。

 犀川では、既存2治水ダムのダム調節を考慮して、想定洪水1600まで対応できることになっている。
上記の1312に浅野川放水路からの250を加え、1562となる。
1312+250=1562 < 1600
 であるので、新規のダム(辰巳ダム)は必要ない。

 また、既往最大規模洪水900について考えると、浅野川放水路からの250を加えると1150である。
 犀川大橋基準点の川の流下能力は1230である。
900+250=1150 < 1230
この場合は、既存2治水ダム(犀川ダム、内川ダム)も不要である。
(おわり)
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辰巳ダム>カバー率のつづき4

2013年04月21日 | ダム問題
 犀川の基本高水ピーク流量で説明する。第1位から第4位まで棄却され、棄却後の最大値は第5位の1741で、これが基本高水ピーク流量であり、100年確率雨量に対応するピーク流量である。過去100年間の最大規模が900くらいであるのにもかかわらず、100年確率のピーク流量が1741と言うことになる(-_-;)。河川工学の権威は、「1/100というのは、おおむね100年に1回よりも少し大きい頻度で発生する」と説明しているので、過去100年間で1741よりも大きいピーク流量が1回くらいあってもよさそうなものである。たまたま小雨傾向にあった、近年は集中豪雨の頻度が上昇しているからという与太話を鵜呑みにするとしても実績と計算値の違いがあまりにも大きく異なっている。

 さらに、基本高水ピーク流量の降雨パターンであるH.7.8.30型の雨は、2日雨量150mm程度で、前線性の雨に低気圧が加わった小さな雨、山地で少し降り、ピーク流量(ダム調整なし流量)は200立方メートル毎秒ほどのものである。この実績降雨を2倍に引き伸ばしした結果、3時間雨量が140mmを超え、猛烈な台風型の雨に変わり、有史以来発生したことのないような 洪水を導いている。普通の小さな雨がモンスター台風に変わったか(*_*)。このようなことになるのは、引き伸ばしという操作にある。

 第1位と第2位のケースは、20世紀の100年の間の最大規模の台風であり、犀川大橋地点のピーク流量も過去最大規模の900立方メートル毎秒(ダム調節なしの流量)に迫るものであった。だから、辰巳ダム計画はこれらの豪雨をもとに計画されているものと常識的には考える。「河川砂防技術基準」でも「既往の降雨の選定に当たっては、大洪水をもたらしたもの、、、を落とさないように注意しなければならない」(「基準」p.32)としている。ところが、辰巳ダム計画では、この肝腎の最も依拠するべきと思われるデータが棄却されているのである。

 上記のいずれの台風も、降り始めから終わりまでの時間が12時間から24時間程度で、短時間に強い雨が集中し、これが移動する。犀川の場合、下流の地域に豪雨が始まり、上流の山地に向かって移動する、2千メートル近い山にぶつかり、強い上昇気流が起きて強い雨が発生する。平野と山地で降る雨のピークはずれるので河川でのピーク流量は比較的大きくならない傾向がある。降雨の三要素でいうと、総降雨量は継続時間が比較的短いので比較的小さい、時間分布は短時間に強い雨という特徴があり、地域分布は移動するので上流と下流で差があるなどの特徴がある。

 これを引き伸ばしするとどうなるか。引き伸ばし率を決める対象降雨は継続時間2日で計画しているのに対して、台風は1日くらいの継続時間なので総降雨量は比較的小さい、これを分母に置くので引き伸ばし率は大きくなる。この大きい引き伸ばし率を乗じると、短時間の強い雨は大きく引き伸ばされて著しく高い山となる。その結果、犀川のピーク流量に大きく影響する短時間雨量(犀川では3時間)が大きくなり、この降雨から算定されるピーク流量も異常に大きくなる。

 短時間の時間分布が異常だということで棄却されるが、対象降雨の継続時間を2日としたことに問題がある。梅雨前線のような降雨では2日雨量で300mm程度の雨は発生しているが、台風では2日雨量300mmは大きすぎる。大きすぎる降雨を分子に置いたので引き伸ばし率が大きくなりすぎたのである。雨が異常ではなくて、異常な引き伸ばしという操作をしているということがうかがえる。
(つづく)
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辰巳ダム>カバー率のつづき3

2013年04月20日 | ダム問題
 降雨から求めるにしても、引き伸ばしをしない方法もあるが、「基準」では、引き伸ばしをする方法を採用することにしている。「基準」の説明によれば、降雨量が与えられても、その降雨量に対応した時間分布及び地域分布が簡単にわからない、というのが理由のようである。日本のように地形的にも気象学的にも特に複雑ということだからだろうと推測する。確か、アメリカの基準では、降雨パターンを一義的に決めていたように記憶する。
 末尾に、「河川砂防技術基準同解説計画編」p.31~32を掲載する。

 結局、引き伸ばし法を採用することにしているが、「基準」の理由は、簡明であり、つぎのように明記してある。
「単純でわかりやすい」である。
科学的な根拠があるのではなく、技術を適用する上の便宜的な方法と言うことである。だから、慎重に使用しないととんでもないおかしなことが引き起こされかねないのである。

 引き伸ばしに関して、科学的側面の一つである気象学的な面に着目してみると、1.2倍や1.3倍ということであれば、同じような延長線上の現象であろうということで、少し大きい規模の降雨という理解はできる。ところが、2倍などというのは、単に規模が2倍ということではなく、全く違う降雨現象だろうということは想像にかたくない。

 旧基準では、「引き伸ばし率は2倍程度に止めることが望ましい。」という解説があった。あまり、大きな引き伸ばしをすると、ピーク流量が過大になったりして不合理なことが起きるということであるが、科学的に根拠があったわけではない。科学的にどの程度の引き伸ばしまではよいのかの説明はない、というよりもできない。だから、新基準では、この解説が削除され、単に「2倍程度にする場合が多い。」となった。科学的な理由はわからないが、実態ではこうなっているというのである。2倍程度を薦めておいて、科学的に説明できないので、後で逃げ口上を書いたようなものである。引き伸ばし法の合理性は、降雨現象という気象学的な側面からは説明できない。
 
 ただ、統計的には、意味があるらしい。Kさんによると、つぎのようである。
「引き伸ばし操作は、標準化すると(x-xバー/σ)降雨波形の特性は保たれるので、降雨波形の創生法としては科学的に意味がないとは言えないと思います。下手なモンテカルロ法より、過去の実績が生かされているのでましだと思っています。」

 便宜的とはいうものの、適正な「引き伸ばし操作」というものがあるのかもしれないが、石川県よる「引き伸ばし操作」は、“出”と“鱈”と“目”を足したものである。
(つづく)

「河川砂防技術基準同解説計画編」p.31~32
2.6.4 対象降雨の時間分布及び地域分布の決定
対象降雨の時間分布及び地域分布は、既往洪水等を検討して選定した相当数の降雨パターンについて、その降雨量を本章2.5.1によって定められた規模に等しくなるように定めるものとする。この場合において、単純に引き伸ばすことによって著しく不合理が生ずる場合には、修正を加えるものとする。
解説
「対象降雨の降雨量が与えられた場合には、残りの2要素、すなわち、その時間分布及び地域分布を定めて、対象降雨を選定しなければならない。
この場合の考え方としては大別して次の2つの方法がある。
1つは、これら3要素、すなわち、降雨量、時間分布及び地域分布の統計的若しくは気象学的な関係を明らかにして、降雨量が与えられた場合の時間分布及び地域分布をその関係に基づいて定める方法である。
他の1つは、降雨量を定めた後、過去に生起した幾つかの降雨パターンをそのまま伸縮して時間分布と地域分布を作成し、それらがこれら要素間の統計的な関係からみて特に生起し難いものであると判断されない限り採用するという方法である。
通常後者を用いる方が単純でわかりやすいので、ここではこれを用いることとしたが、既往の降雨の選定に当たっては、大洪水をもたらしたものやその流域において特に生起頻度の高いパターンに属する降雨を落とさないよう注意しなければならない。選定すべき降雨の数はデータの存在期間の長短に応じて変化するが、その引き伸ばし率は2倍程度にする場合が多い。
降雨量を引き伸ばすことによって生ずる不合理なこととは、地域分布に大きな隔たりがある降雨や、時間的に高強度の雨量の集中がみられる降雨において、その河川のピーク流量に支配的な継続時間における降雨強度が対象降雨のそれとの間で、超過確率の値において著しい差違を生ずる場合があることである。
具体的な処理法としては次のような例が考えられる。
1.地域分布に大きな隔たりがある降雨を引き伸ばした結果、流域の一部地域での降雨量が大きくなり、当該一部地域の降雨の超過確率が、計画規模の超過確率に対して著しく差違があるような場合には、対象降雨として採用することが不適当であると考えられるため、当該降雨パターンの引き伸ばし降雨を対象降雨から棄却すること。
2.短時間に降雨が比較的集中しているパターンを引き伸ばした結果、洪水のピーク流量に支配的な継続時間内での降雨強度の超過確率が、計画規模の超過確率に対して著しく差違があるような場合には、対象降雨として採用することが不適当であると考えられるため、当該降雨パターンの引き伸ばし降雨を対象降雨から棄却すること。
3.上記1.及び2.の降雨パターンについて、地域分布や時間分布に修正を加え、超過確率の著しい差違を是正することにより、対象降雨として採用すること。」
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辰巳ダム>カバー率のつづき2

2013年04月19日 | ダム問題
 ハイドログラフ群(ピーク流量が33個)は、547~2729立方メートル毎秒であり、カバー率50%値(中央値)は1043、算術平均値は、1138である。
 ハイドログラフ群(ピーク流量が24個)は、547~1741立方メートル毎秒であり、カバー率50%値(中央値)は938、算術平均値は、959である。
 カバー率50%値(中央値)あるいは算術平均値に大きな差があるは、最小値は547と同じでありながら、最大値が2729と1741と大きく違うためである。

 棄却されていないハイドログラフ群(ピーク流量が33個)を大きいものから第5位までならべるとつぎのようになる。最大値は2729となり、それぞれは順に、順位、生起年月日、引き伸ばし倍率、犀川大橋地点のピーク流量、降雨の原因を表している。
第1位 S.36.9.15 1.853 2,729 第二室戸台風
第2位 H.10.9.21 1.730 2,195 台風7号
第3位 S.47.9.16 1.591 1,852 台風20号
第4位 S.49.7.9  2.054  1,743 梅雨前線
第5位 H.7.8.30  2.005 1,741 低気圧(辰巳ダム計画の基本高水ピーク流量)

 様々の大きさのピーク流量があるが、評価の目安として、既往の最大規模(20世紀100年間)の大きさを示すと、犀川大橋地点でおおよそ900立方メートル毎秒である。棄却したハイドログラフ群の中央値に近い。これと比較して、それぞれの群の最大値は著しく大きい。

 これらのピーク流量は、2日雨量314ミリメートルに対応するものである。2日雨量は、300ミリメートルに近い実績もあり、あまり違和感がないが、ピーク流量は、実績流量に比較してあまりにも大きく、感覚的には非常識な値となっている。

 この原因は、降雨の引き伸ばしという操作である。
 犀川の例では、第1位から第3位までは、台風が原因の降雨である。台風の特徴として、短時間の降雨が著しく大きい。約2倍に引き伸ばした結果、短時間の降雨が異常に大きくなり、これを反映させた洪水流出モデル算定結果であるピーク流量が著しく大きくなったものである。

 具体的にもっと分かりやすい例をあげれば、1時間10ミリメートルが3時間続いた30ミリメートルの雨があったとする。これを2日雨量314ミリメートルまで約10倍に引き伸ばしすると1時間100ミリメートルが3時間続いた雨となる。この条件で簡単な洪水流出計算をすると4000立方メートル毎秒ほどになる。これも100年確率の2日雨量314ミリメートルに対応するピーク流量である。
 
 そもそも、このような馬鹿げたピーク流量が算定される、降雨の引き伸ばし操作がなぜ必要なのだろうか。
基本高水ピーク流量を決めるために、実績のピーク流量データを用いるのではなくて、実績の降雨データから、目標とする生起確率の降雨を求め、その降雨を用いて洪水流出モデルで目標とする生起確率のピーク流量を求める方法をとっていることに起因している。
「基準」p.28で説明がある。
(つづく)

「河川砂防技術基準同解説・計画編」p.28
2.2 基本高水決定の手法
基本高水を設定する方法としては、種々の手法があるが、一般には対象降雨を選定し、これにより求めることを標準とするものとする。基本高水は、計画基準点ごとにこれを定めるものとする。
解説
基本高水は、そのハイドログラフで代表される規模の洪水の起こりやすさ、つまり生起確率によって評価され、それがこの洪水防御計画の目標としている安全の度合い、すなわち治水安全度を表すこととなる。
しかし、洪水のハイドログラフそれ自体は、その生起確率の計算等の対象として必ずしも便利ではなく、そのピーク流量又は総ボリュームに着目して統計解析するには、多くの場合計算が複雑になったり、資料不足のため十分な精度が得られないなどの難点がある。
したがって、その取り扱いが簡単であって一般の人々にとって理解しやすいことから、その洪水の起因となる降雨に着目して、所定の治水安全度に対応する超過確率を持つ対象降雨を選定し、この対象降雨から一定の手法でハイドログラフを設定する方法を標準としたものであるが、これ以外でよりその河川に適合した方法を採用することもある。
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