犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

ダム問題>ダムがパンクした

2018年07月29日 | ダム問題
 西日本豪雨による出水で、いつくかのダムで満杯となり、洪水調節機能を失った。これを「ダムのパンク」という。
(岡本芳美(よしはる)元新潟大学教授の話)「ダムは満杯になると調節機能はゼロになる。パンクするという。ダムによる治水は常にパンクという危険がともなう。」
 パンクするとどうなるのか。
 読売新聞ニュースは、「愛媛県・肱(ひじ)川の野村ダムなど6府県の8ダムの水量が当時、満杯に近づき、流入量と同規模の量を緊急的に放流する「異常洪水時防災操作」が行われていた」と報じた。
パンクすると、ダムで「異常洪水時防災操作」が実施される。
ダム湖へ入ってくる水量とダム湖から流れ出す水量と同じにするために水門を開放することであるが、ダムが無ければ、上流から流れてきた水が下流へ流れていくだけのことである。ダムがあると、このような仰々しい特別の操作が行われることになる。
 ただし、近年、築造されるダムは、このような操作が必要のない構造になっている。辰巳ダムもこのような操作はない。ただし、満杯になるといきなり、流入する水量と放流される水量は同量になることには違いはない。
 従来のダムでは、満杯になったままにしておくと、ダムの堤体を乗り越えて溢れ出し、要員によるダム管理活動が困難になる上に、堤体の上に設置してある装置や設備などが破壊される。これを避けるため、水門を開放してダム湖に流入する水量と同じだけ放流してダム湖の水位の上昇を抑えることが必要となる。
 ここで問題となるのは、この操作が行われると、下流の河道では、突然に水量が増えることになる。
ダムが無ければ、このようなことは起こらない。
降雨の量に応じて、河道の水量も増大するので、河道周辺の危険性は、周辺住民は認識が容易である。ところが、治水ダムがあると様子が異なる。
治水ダムが出来ると洪水氾濫は著しく減少する。住民の安全と安心のためのダムだというプロパガンダも盛んに喧伝されるので、住民は信用し、洪水氾濫に対する備えも萎えてしまう。
 このような状況の中で、かなりな豪雨でもダムの洪水調節のため、下流の河道では、比較的に流れる水量は抑えられているので住民は安心している。
 そこに、突然、ダムの洪水調節機能がゼロとなり、ダムが無いのと同じ状況になる。
 緊急放流のサイレンが鳴らしたとしても、ダムから放流するから河道に近づくなとしか、受け取れないので、この際のサイレンは、ほとんど、意味はない。また、行政が住民に「避難指示」を発令するが、この際も洪水氾濫に対する避難を経験していない住民に取ってどこへどう避難していいのかわからない。今回の愛媛県の事例のように、未明や早朝の発令では、住民に届かない。
 逃げ遅れることになる。
 愛媛県肱川水系では水位が急上昇して氾濫が発生し、西予市野村町で5人、大洲市で3人が死亡した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダム問題>ラオスのダム決壊事故は手抜き工事か

2018年07月28日 | ダム問題
 中央日報ニュースによれば、「92.5%の工程率で工事をほとんど終え、来年2月に竣工して商業運転を控えていたラオスのダムが決壊した」ということで、ダム堤体は完成して湛水をしていたところだろう。
 ダム堤体が完成していたとすると、想定外の豪雨でも決壊してもらっては困る、現実にラオスの他のダムは決壊していないのだから。とすると、想定外の豪雨による天災というダム建設会社の言い分は説得力が乏しい。
 このトラブルの前に、施行した韓国の建設会社は、工期を短縮して完成させたということで特別のボーナスも獲得していたということだ。工期短縮、工費削減のために、手抜きしたのではないかと疑われる。
このダムは、コンクリートダムではない。ロックフィルダムで素材は土石と粘土を組み合わせたものである。基礎地盤の弱いところで採用される形式のダムで、基礎地盤を強化するノウハウが問われる。基礎の地下工事は、構造物が出来上がると隠れてしまい、確認できないので、手抜きの誘惑に駆られやすい。土木事業の世界では、手抜きして費用を浮かせた話は枚挙にいとまがない。
 米ダム専門家が施工不良による内部浸食事故のようだと指摘した(日経新聞ニュース)。
 基礎地盤の施工不良をあげている。基礎を強化するために、セメントを注入するが、この工程で注入材の質や量を加減すると、工費も工期も大きく左右される。
 ロックフィルダムの場合は、堤体の素材も現場の土石や粘土を使用するが、均質ではない。基礎も堤体も均質ではなく、高度な設計や施工のノウハウが要求される。
 相応の技術力がないと無理である。
 当事者である韓国建設会社担当者は、「日本式」だと繰り返し、説明しているようだ。日本式のロックフィルダムだから、韓国の責任はないといっているわけではないだろうが、見よう見まねで覚えた技術であり、自前で開発した技術ではないことを強調しているようなものである。借り物だから、本当の技術がわかっているわけではないので、肝心な点を手抜きしたことが疑われる。
100万トンほどの小規模なため池を造っておればよかったのである。50億トンは無理だった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

辰巳ダム>石川県作成の報告書等の『記録集』への転載あるいは引用 ――著作権法に関連して――

2018年07月26日 | 辰巳ダム
石川県作成の報告書等の『記録集』への転載あるいは引用
――著作権法に関連して――

 辰巳ダム建設反対運動の『記録集』の作成にあたって、石川県作成の報告書の引用、転載について法的問題を調べ、石川県にも確認した。

(著作権とは)
 著作権とは、著作物を創作する著作者の権利である。その内容は、著作物の公表権、氏名表示権、複製権、口述権などである。他人が、勝手に公表したり、複製したりできない。著作権法によって著作者の権利が保護されている。

(県作成の技術報告書に著作権があるか)
 石川県が作成する報告書等は、著作権法による著作物に該当する。
著作権法の第10条(著作物の例示)によれば、
 「一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」、「六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物」、「九 プログラムの著作物」のいずれかに該当する。
 石川県担当者によれば、著作権法を所管している「文化庁長官官房著作権課」に問い合わせ、地方公共団体作成の報告書にも(団体の)著作権は認められることを確認したとのこと。

(著作権の制限はあり、著作物の引用はできる)
 著作者の権利の制限はある。研究その他で、引用の目的上の正当な範囲で、著作物の引用はできる。
著作権法第三二条(引用)では、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」とある。

(引用した場合は)
 ただし、引用した場合は、著作権法第48条(出所の明示)の規定により、著作物の出所の明示が必要である。

(転載をできる場合がある)
 文章の一部を引用するのではなく、文章や図表、写真等をゴソッと転載もできる場合がある。
 辰巳ダム計画の例では、犀川水系河川整備基本方針を策定するために、有識者による犀川水系河川整備検討委員会が公開で開催された際に関係者、マスコミ等に関連資料が配布された。また、犀川水系河川整備計画を策定するために、有識者による犀川水系流域委員会が公開で開催された際にも同様に関係者、マスコミ等に関連資料が配布された。この資料は、一般に周知させることを目的として作成されたものであり、その著作の名義の下に公表された資料等であるから、転載することができる。
 著作権法第32条(引用)2項によれば、「国若しくは地方公共団体(中略)が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りではない。」とある。
 この場合も、出所の明示が必要である。

(著作権はいつまで有効か)
 著作権法第51条によれば、著作者の死後50年を経過するまでの間である。地方公共団体の場合、半永久的に存続するのでこの概念は当てはまらない。第53条によれば、著作物の公表後50年である。
 
【参考】『記録集』に関連する「著作権法」の条文
(目的)第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二 著作者 著作物を創作する者をいう。
三~ (略)

第一節 著作物
(著作物の例示)第一〇条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

第二節 著作者
(職務上作成する著作物の著作者)第一五条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

(引用)第三二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
(出所の明示)第四八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

第四節 保護期間
(保護期間の原則)第五一条 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。
(団体名義の著作物の保護期間)第五三条 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその創作後五十年以内に公表されなかつたときは、その創作後五十年)を経過するまでの間、存続する。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする