「伝奇集」

2022-04-20 19:41:16 | 

を読む。ホルヘ・ルイス・ボルヘス作。岩波文庫。

 「八岐の園」のこの部分は問題だ。「均一で絶対的な時間」? ショーペンハウアーはそんなことは言ってない。

 彼は、「時間と空間は個体化の原理だ」と言っている。人は、生まれた時からそれぞれの「時間と空間」を持っていて、それによって世界を認識する。自分の「時間と空間」とともに生き、彼が死ねば、彼の「時間と空間」も消滅する。「時間と空間」は、まったく個人的なものだ。

 「たとえ宇宙の果てにたどり着いたとしても、私がそこにいる限り、空間は存在し続けるだろう」。

 だが、おそらくボルヘスは、すべてわかった上でこう書いているのだ。「八岐の園」のテーマは迷宮。実際とは違うショーペンハウアー像を作り出して、読者を惑わせるつもりなのだろう。
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