シュペングラーによると、西洋文化は「無限志向の文化」なのだという(「西洋の没落」)。無限に広がる空間を、自分の意志で満たそうとする。帝国主義が、その典型だ。これと正反対なのがインド文化。それは「無(ゼロ)の文化」。目に見えるものはすべて現象に過ぎないし、征服する価値もない。だが・・・・・・。
デュメジルによると、北欧神話とインド神話は親戚どうしなのだという。かつて、インド・ヨーロッパ民族に共通の神話があったのだが、それが枝分かれして2つの神話が生まれた。つまり、北欧神話の「ラグナロク」とマハーバーラタの「最終戦争」は、もともとは同じものだった(「ゲルマン人の神々」)。
シュペングラーとデュメジルの対立を埋めてくれるのは、ユングの説だ。「人の心は極端から極端へと動く」、「反対の一致」。
「無限志向」に疲れたら、人は「無」へと向かうだろうし、「無」に飽きたら「無限」へと向かうだろう。この2つの差は、実は紙一重なのかもしれない。