「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

新星の生まるる気配毛糸玉 渡辺登美子 「滝」3月号<滝集>

2012-03-18 05:56:00 | 日記
非凡な取合せに心を掴まれる。毛糸玉の丸い形が星をイメ
ージする切っかけになっているとしても、淡々と毛糸を編む
夜の仏教的無心の中に感じ取った「新星の生まるる気配」の
ような気がした。何気ない生活の一齣からの大胆な切り替え
に、壮大な奥行を持つ宇宙が抑えようもなく広がってくる。
そんな宇宙にしばらく滞在の後に、いや、毛糸玉は生活に根
差した季語。「新星」は赤ちゃんで、誕生を心待ちに淡い色の
毛糸玉を手に何を編もうかと思案中なのかも知れないと思った。
そう思うと作者の穏やかな微笑が浮かんでくる。(H)