「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

幾千の仏体沈む寒き海 菅原鬨也 「滝」4月号<飛沫抄> 東日本大震災・十句より

2011-04-30 21:02:49 | 日記
 私もまだ、震災に奪われた平穏な暮らしを取り戻せないで
いる。しかし、津波がもたらした被害を思えば、応援する気
持ちの方が強い。福島原発をも破壊し、被爆者まで出した未
曾有の巨大地震。様々な被害を伝えるテレビの画像は、私を
眠れなくした。今、主宰の十句を読むことで胸の中に湧いて
くる苦しさは、私には「何かをしてあげられる何もない」こ
とに、また辛くなってしまうからだ。
 「冷たい海」ではなく「寒い海」としたことに、皮膚感覚
ではなく、心にもたらされた寒さを思ったし、亡骸を「仏体」
とした主宰の優しさに、理不尽な死ではあったが仏様となり、
命を繋いだ人々を見守っているような穏やかさを感じた。そ
れ故にかえって津波の被害の大きさが蘇ってくる。私も叔父
を奪われた。息子の同級生は幼い子二人と避難所の三階にい
たにも関わらず津波がさらって行った。どうぞ、どうぞ、せ
めてそれぞれのご家族に仏様となられたご家族がもどれます
ように・・・。合掌。(H)

2 コメント

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寒い海 (平川みどり)
2011-05-03 11:42:51
「滝」が先日届きました。会員の皆さん、全員無事だったとの主宰の言葉に安堵しました。
3月11日の震災は、いまだに大きな人災となって拡大していることに心を痛めています。
熊日新聞では、憲法記念日の今日、「生存権までも揺るがしている」と書いてあります。
主宰のこの一句、博子さんの鑑賞にもあるように、「寒い」には、主宰の死者への鎮魂の
思いがあるように思いました。「冷たい」では、単なる感覚に過ぎないものね。
「寒い海」に込められた主宰の万感の思いが、確かに伝わってきました。
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コメント、ありがとう。 (博子)
2011-05-04 12:55:56
 本当に、九死に一生を得た渡辺登美子を含め、会員の全員無事は奇跡に近いと思いました。登美子さんは六日間の漂流を俳句に支えられた。上遠野三恵は俳句があるから冷静でいられた。中井由美子さんは「滝」を開いたら落ち着いたと書かれていました。私は「ブログを書かなければ」と思いましたが、ちっとも活字が自分の中に溶けてこないと感じました。俳句に詠まれていることが見えてこなかったのです。我が家は太陽光パネルが発電した電気で、直ぐにテレビが見られました。そして、あの津波の被害を見て平常心を失いました。客間にしていた、たった一部屋しか居場所がなく、家族五人でしばらくこの部屋に一緒にいましたので、本当の自分になることは出来ませんでした。日常を取戻しつつある今、主宰の句を読んで、我慢していた涙がどっと溢れました。
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