
中野重治詩集64ページ、今回は「汽車二」からの抜粋です。平成の時代に入っても、しばらくローカル線では車両内で喫煙できました。この詩が出版されたのは、昭和30年代初めですから、汽車の中の臭いにたばこが出てくるのは当然ですね。当時の汽車内の様子がリアルに迫ってくるようです。
「汽車二」
通りも便所も人がつまつていた
泣き出した赤ん坊をお袋がどなりつけていた
煙草と人いきれと食いさしの蜜柑と食いあましの弁当ともうもうと臭か
つた
ごりごりと押しわけて車掌が来た
みんなひしやげた切符を引きずり出して見せた----(以下省略)