哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

恐怖のアンチエイジング(週刊新潮今週号の「人間自身」)

2005-12-16 23:59:59 | 哲学
 池田晶子さんの週刊新潮連載「人間自身」今週号は、「恐怖のアンチエイジング」という題でした。主なところを要約しつつ抜粋します。

「化粧品やサプリメントによるアンチエイジングなんて、実際に可能だろうか。そもそも「アンチエイジ」というコピーは、同一体で追試できないことにつけ込んでいる。使った十年と使わなかった十年を比較できない限り、十年後に差が出るかどうか誰にもわからない。
 同一個体で追試できないという「人生の一回性」をよく考えてみるといい。人は同じ人生を二度生きることはできない。「生きる」とは「老いる」ということに他ならない。であれば、老いるという一回限りの経験も貴重なものと思えるはずである。時間軸に沿って経験を重ねて、人間は賢くなるのである。歴史も人類も我が事として思索できるようになるのである。」

 アンチエイジング批判文も以前から池田晶子さんは何回も書いておられますね。でも何回言われても、無意識のうちに若く見せたい見られたいという意識は多くの人に巣くい続けます。70歳の人が50歳位に見えたり、90歳の人が肉体労働を難なくこなしていたりしたら、「お若いですねぇ!」と普通褒めます。経営者のトップが少年のような好奇心をもつことも普通褒めます。

 要は、見かけの老いの進行を極度に嫌って無思慮にアンチエイジングに走ることの愚かさを言っているわけで、普段の身だしなみが年相応か若く見えるかは大したことではない(そう見えるならそれでよい)というくらいでいいのでしょう。むしろ精神の成熟をしっかりしろということですね。

 ちなみに表題の「恐怖のアンチエイジング」とは、四十歳の体と知恵しかない百歳の人間がぞろぞろと生きている光景を想像してのようです。