哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『ジャンヌ・ダルク』(岩波新書)

2006-01-08 19:21:23 | 
 いきなり話が脱線しますが、昨年のNHK大河ドラマ「義経」はかかさず見ました。その前の「新撰組」や「武蔵」はつまらなくて途中から見なくなりましたが、さすが「義経」は、もともとのストーリーがよくできているのか、飽きさせない展開でした。

 実はこの岩波新書の『ジャンヌ・ダルク』の冒頭は、義経の話から始まります。確かに義経のストーリーとジャンヌ・ダルクのストーリーは結構似ています。平家を打ち倒した輝かしい成果は、オルレアン解放とシャルル国王戴冠までに類似しますし、兄頼朝に追われ平泉で自害する悲劇的結末は、シャルル国王に見放されイギリス軍に捕まって火刑にされる悲劇的結末に類似します。

 但し大きく異なる点は、義経は史実に関する文書資料はそう多く残っていないのに対し、ジャンヌ・ダルクには処刑裁判とその後の復権裁判の膨大な記録が残っていて、史実や人物像がかなり解明できることだそうです。この新書版は、その記録をひも解くことによりジャンヌ・ダルクの実像やこれまでの論争などを分析的に取り上げています。

 ジャンヌ・ダルクはフランスの愛国を鼓舞するように取り上げられることも多いそうですが、何と言ってもその魅力は神のお告げとしてオルレアン解放とシャルル国王戴冠を宣言し、その通り実行し成功させた、奇跡としか言いようのない行動力です。ジャンヌの聞いた神のお告げは幻覚だと説明しようとする知識人もあったりしたこともこの本に出てきますが、池田晶子さん的に言えば、人智で説明できないことがあって何がおかしい、ということでしょう。