哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

池田晶子さんの「靖国問題に思う」

2005-11-21 21:35:42 | 哲学
PR誌・トランスビュー no.10

 池田晶子さんの活動はトランスビュー社のサイトでフォローできます。読書会なんていうのもあるようですが、こういう集団志向は池田さんの思考と合わないようにも思いますけど。
 そのトランスビュー社に池田さんが寄稿された文として、表題の文が掲載されていましたので、リンクしてみました。

 「英霊、 慰霊と言うからには、 霊魂の存在を認めていることになる。」という話から始まっています。出だしはどうも、首相をはじめ靖国参拝者を斬っているようです。でもその後に「もっと破綻しているのは、 英霊の戦争責任を追及する共産中国である。」と続きます。中国をもこのように斬る発言は他であまりみませんね。

 もしいわゆるタカ派の方々がこの中国のくだり以降を読むと、自分たちの立場を哲学者も支持している!と勘違いすることでしょう。かつて池田さんがいろいろな雑誌の連載を転々とされたのも、そんな勘違いの経緯もあったのではないかと推測します。
 もちろん池田さんは一定の立場から発言されたわけではないですから、そのうち支持されたと思っていた方々の言動も斬られていきます。そういう意味では池田さんの言葉は両刃の剣といえます。

 池田さんがもっとも波長が合うとする小林秀雄さんが、徒然草に関して書いている文章に「よき細工は、少し鈍き刀を使ふ、という」という話が紹介されています。小林秀雄さんの文は、もしかしたら少し鈍き刀を使ったといえるものだったかもしれません。凡人には理解不能な文でも信奉者は多いですから。

 しかし池田さんの文は、明らかに切れすぎる「鋭い刀」でしょう。あらゆるものをばっさり斬りおとす透徹な刀です。安易に近づくと危険かもしれません。