花山の思い・・☆6番札所(妻は夫を)

 次は6年後だという。9月の敬老の日と秋分の日の間の日が、オセロみたいに休日にひっくり返って、シルバーウィークと呼ばれる連休になるのは。

 それにしても、清々しい秋の彼岸の入(い)りでした。

 さて、昭和33年生まれの私の世代が、いつとはなしに耳に入れて、残っている名台詞(めいぜりふ)の一つがこれ……。

“妻は夫を労(いたわ)つ、夫は妻を慕(した)いつつ~”

 どこの出典かも知らぬ間に、そしてまた、その言葉の「逆じゃないの?」の疑問もないまま50年近く生きていた。
 普通は、夫が家事や他の苦労をかけていることをいたわり、そして、妻は頼りになる夫を慕う……はずだ。
 
 でも、このセリフはどう記憶を引きずりだしても「妻は夫を労り、夫は妻を(に)慕いつつだ。夫婦の立場が逆転しているのだ。

 このセリフの元は浄瑠璃「壺坂霊験記」らしい。“らしい”というのは、私は浄瑠璃は見たことがなく、浪曲で3年ほどまえに聞いたのが最初だったからである。
座頭の澤市(さわいち)と女房のお里(さと)の夫婦愛の物語。

 壺坂観音の霊験によって、女房にこれ以上迷惑をかけたくないと身投げした澤市、そしてその後を追って谷底へ身を投げたお里。二人の命を助け、澤市の眼を治すという霊験譚である。

 浪曲のCDになっているので、探して聞いてみてください。

 さて、この話よりはるか前に、花山法皇がお参りした時に奉納したご詠歌がこれ。

 岩を立て 水を湛えて 壺坂の 庭のいさごも 浄土なるらん

 このご詠歌にまつわるお話は、次回のお楽しみ。
 
 西国霊場ホームページ⇒http://www.saikoku33.gr.jp/

   ☆    ☆    ☆    ☆   

 今日はお彼岸の入りでした。「ヒガンノイリ」なんて言葉は、家族の中で自然に使える人がいないと、子供は覚えるものではありますまい。
 20代、30代の若者が「今日からお彼岸だね」というのはよくありそうですが、若者同士の会話の中で「彼岸の入りの日に墓参り行ってさ・・」なんて、言ったら相手は「こいつ、なんだか奥ゆかしい日本語を自然に使うなあ」と関心することでしょう。
 ふつう人が使わない言葉をシゼッに使えるというのは、人の感性の豊かさを表す一つの要素ですね。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )