風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

迷信

2010-01-13 01:48:29 | たまに文学・歴史・芸術も
 前回、地球温暖化に関して、実は今、地球は温暖化しつつあるのではなく、寒冷化に向かっており、その兆候は今後5~10年の間に明らかになるかも知れないという説を紹介しました。出所は、地質学者で地球惑星科学という私も初めて聞くような専門分野を専攻されている東京工業大学の大学院教授ですが、自信を以って主張されている背景には、どうやら学際的な研究の裏づけがあるからのようです。地球の気候変動と言えば、一見、気象学の問題と捉えがちですが、地球環境という複雑系には、さまざまな影響が考えられます。地球はただ独立して存在するわけではなく、太陽エネルギーの恵を受けていますし、宇宙の放射線も浴びています。また過去の温暖化と寒冷化のパターンを、数千年から数億年の昔まで辿ることも、これからの温暖化や寒冷化を予測するのに有効かも知れません。そういう意味では、宇宙物理学や地質学の知見も必要になりますし、地球に降り注ぐエネルギーの源である太陽の核融合を理解するには、原子核物理学の助けも有効です。逆に言うと、専門分野に拘る学者の議論は、部分的にしか説明出来ていない可能性があります。
 それはともかくとして、その教授が語ったことで印象に残っている議論は、一つには自然界に「緩衝効果」が備わっているということでした。大気中の二酸化炭素が増えると、ある程度は気温が上昇するが、その一方で、植物や珊瑚など、二酸化炭素を吸収する生物の活動が活発化し、大気中の二酸化炭素濃度を小さくする方向に働くことを言います。結果として、過去一万年のデータを見れば、地球の北半球中緯度の平均気温はプラス・マイナス二度の間を行ったり来たりするだけで、それを越えたことがなかったのだそうです。地球のもつ自律機能をもう少し信じても良いのかも知れません。もう一つの議論は、温暖化は本当に「不都合な真実」なのかどうか、むしろ、江戸時代の大飢饉をもたらしたような寒冷化よりも、温暖化の方が、生命の繁栄にとって良いのではないか、という議論でした。6千年前、現在の平均気温より、2度、暖かかった時代には、東京の現在の気候が青森県あたりの気候になり、青森県の遺跡を調べた結果、北国でも食べ物の確保に困らなかったと推測されています。温暖化で、米生産が増加するとか、人類の健康・寿命が増進するという報道もありました。勿論、温暖化によって、乾燥地帯が砂漠化したり、気温が高くなり過ぎて作物の栽培が出来ない地域も出てくるでしょうが、これは生態系の地図が変わるだけとも言えます。
 先日、皇后陛下が、高齢化と言えば、皆が長生き出来て幸せなはずなのに、医療費や年金などの問題ばかり指摘されて、マイナスのイメージで語られるのが残念でならないというようなことを話しておられたのを思い出しました。どうも私たちは、温暖化=悪、高齢化=問題というような迷信に囚われて、思考停止してしまっているのではないかと思います。それによって隠されている良い面を思い出し、総合的に前向きに取り組むべきなのではないかと思います。
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