風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

トランプ大統領の訪日

2019-06-01 12:36:53 | 時事放談
 今回の訪日は、令和時代の国賓第一号が趣旨だったので、天皇・皇后両陛下の立ち居振る舞いが気になっていた。なにしろ私と同年代の天皇・皇后両陛下というのは初めてなのだ(そんな年齢になってしまった 苦笑)。昭和天皇も上皇陛下も、佇まいそのものが既に有難い雰囲気を醸し出されて、政治家の会合とは異次元の、言わば日本の文化力(ソフトパワーの一つ)を体現されていた。言い方は悪いが、新・天皇陛下はちょっと軽く見えてしまいかねないところだ。NEWSポストセブン(実際には女性セブン)の記事はそんな不安を打ち消して、次のように伝えている。

(前略)
 「陛下は英語が大変お上手ですが、一体どこで勉強されたのでしょうか」
 トランプ氏は前日、安倍首相と行動を共にした。安倍首相はゴルフにも大相撲観戦にも通訳を引き連れていたので、トランプ氏が驚くのも無理はなかったのかもしれない。
 陛下は、「英オックスフォード大学に留学経験があり、そこで知り合ったアメリカ人の友人を訪ねて、ニューヨークなどアメリカ各地を回りました」と答えられた。さらに、「皇后もニューヨークの幼稚園、ボストン郊外の高校、そしてハーバード大学で学んだ」と説明されたという。
(中略)
 「大学卒業後、東京大学を経て、外交官の道へ進まれた雅子さまは、外務省北米局に勤務されました。アメリカ通商部相手の国際交渉で通訳官を務めたほど英語が堪能で、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ロシア語なども話されます。並みの通訳など軽く凌駕するネイティブレベルです」(皇室ジャーナリスト)
 卓越した語学力だけではない。1960年代前半生まれの世代の日本人女性の中でも、雅子さまは教養や知性、国際経験などの面で、間違いなくトップクラスのキャリアウーマンなのだ。
 陛下とご成婚後、雅子さまは紆余曲折を経て適応障害を患われ、皇室の国際親善の場からは遠ざかられていた。それでも、結婚してすぐの頃には、それまでの皇室の国際親善の枠を超えた活躍を果たされてきた。
 たとえば、1994年のアラブ7か国への歴訪。当時、男女が同席しないイスラムの慣習に基づいて別々に晩餐会に臨んだ。雅子さまは女性王族に囲まれながら通訳なしで会話を弾ませたという。
 「それまで日本の男性皇族がアラブの男性王族と親交を持つことはありました。しかし、女性王族とパイプを作った皇族は、雅子さまが初めてで、画期的なことでした」(宮内庁関係者)
(後略)

 いやはや、これは想像以上だ。女性読者の目線を意識したヨイショはともかくとして、新たな時代の新たな皇室外交のありようを垣間見させて、正直なところ安堵した(私が安堵したところで何のタシにもならない)。
 他方、安倍首相は、相変わらず「ドナルド」「シンゾー」のラブラブ振りで、ゴルフ場で二人並んで撮影したセルフィーが話題になった。これに尽きる(笑)と言ってもいいのだが、安倍さんの公式アカウントの投稿ページには、その写真に加工が施されたものがユーザーから複数投稿され(無断借用・添付)、ツイート内で多くの「いいね」を獲得し、それが消されることなく放置されたままであることに、中国人から驚きの声があがっているという(笑)。「国のトップが神格化されてないのがいいな!」「日本とアメリカは現在の世界文明を守る守護者である」「正直に言おう。こういう冗談が許される環境は、やっぱ羨ましい」 これはこれで、日米蜜月だけでなく、日本人やその社会のまさにソフトなパワーをそこはかとなく発揮している(笑)
 冗談はともかく、外交筋では両国首脳の個人的関係の深さを「外交資産」と呼んでいるらしいのは、それが無くてトランプ大統領の性格でぐいぐい押しこまれていれば何が起こっていたかを想像すると、それが外交の実務者の本音であることがよく分かる。歴史というものは個人ではどうにかなるものではないが、ただの「個人」ではなくて政治家、中でもトップの「立場」は何とかし得るものであり、それもあってかメルケルさんが安倍さんに、トランプ大統領をどうやって取り込んだの?と聞いた話は有名だ(と日経が記事で触れていた)。
 今回のトランプ大統領訪日についての解説モノをいくつか読んだが、日経ビジネスが元駐米大使の藤崎一郎さんにインタビューした記事が最も穏当で…いや、反体制・反安倍にはなりようがないのだが、御用学者の発言とも違って単純な提灯記事にはなっておらず、ベテラン外交官らしい冷静さで安心感を与えていた。
 例えば、トランプ大統領の「おそらく8月に両国にとって素晴らしいことが発表されると思う」との発言が日本人の臆測を煽っていることに対して、仮に、日本に不利になる合意が想定されるので交渉が選挙の後に本格化するようなことがあれば、国民から「なぜ選挙の時に言わないのだ」と批判が起こるだろうし、大事なことは、トランプ大統領に「交渉が停滞している」と思わせないことだと、諭している。米朝協議が行き詰る中、トランプ大統領が日朝首脳会談を支持したことについては、これで金委員長は安倍首相の提案や発言を無碍にすることができなくなる、北朝鮮にとって最も大事な国である米国の大統領が支持すると言っているのだからと分析し(韓国外しと言わないところがオトナだ)、安倍首相のイラン訪問については、イランに対して「核開発を進めてはならない。ここは我慢する時」と言い、次にトランプ大統領に対して「イランは行動を控える。だから米国もイランを脅かすことがないように」と求めて、エスカレーションを抑えることが出来ることを(イランにせよミャンマーにせよ米国が厳しい態度を取っている時も日本はずっと関係を維持してきたことが生きてくると)、あらためて評価する。ロシアが北方領土返還後に在日米軍基地が設置されることを警戒しているのが日露交渉の障害になっているとの見方に対しては、北方領土はそもそも日本の領土であって、それを返還するのに、ロシア側が条件を付けるのは、そもそもおかしいと思いませんかと素朴な(しかし正当な)疑問を投げかける(さはさりながら、ではあるが、日米地位協定第2条によれば、米軍が基地を置くには日本政府の合意が必要であり、返還後の北方領土に基地を置くかどうかは日本の判断だと説明する)。米中関係については、覇権を巡る争いであることを認めた上で、今は2020年を睨んだ政治の季節に入りつつあり、この時期は弱腰と非難されないよう(アメリカの)いずれの党の政治家も対中強硬姿勢を示す傾向があるが、米国の対中強硬姿勢は(過去に照らせば分かるように)いずれ変化し得るものであって、日本として、今は米国から疑いを持たれないようにすることが第一義的に優先されるべきことであり(この意味でも、今回のトランプ大統領訪日を成功させた意義は大きい)、他方、中国を必要以上に刺激しない配慮も必要だと、冷静な対応を呼びかける。中国は、自らにもそうした(レアアース禁輸のような)手段があると誇示して米国に揺さぶりをかけようとするが、できるだけ発動を回避し、もう後戻りできないポイント・オブ・ノーリターンに至る前で合意したいと考えると思うと、飽くまで冷静である。
 最後にもう一つ、日台関係強化について聞きたかったが、どうも「忖度」してしまったか。
 安倍外交あるいは日本の外務省の打ち手を評価(ありていに言ってしまえば自己弁護)する内容ではあるが、言いがかりのような反・安倍の言説を耳にタコが出来るほど聞かされている耳には心地良かったりする(爆笑) これも冗談だが、安倍外交は、北朝鮮やイランとの交渉に向けて、いよいよ真価が問われることになる。外交・安全保障はアメリカが牛耳って来た戦後の世界で、表立ったこうした動きが持ち上がるとは、かつては想像できなかったことだ。先ずはこのようなスタート地点に立てたこと(今回の訪日でアメリカの裏書を再確認したこと)を評価したい。
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