暖かな日になった。心なしか、マンションの周りの桜もつぼみが膨らんできた。3月末の風の強い日に、植木鉢にへばりついていたアゲハチョウのサナギが風に煽られ、身体を支えていた糸が切れていなくなった。翌日、探してみると幸いなことに鉢の間に落ちていた。ダメかも知れないとは思ったけれど、両面テープを貼り鉢に付けてみた。毎日見ているけれど、今のところ大丈夫だ。写真の左側が両面テープで支えられたサナギで、右側が風に負けずに7ヶ月ほど頑張っているサナギである。
体長わずか3センチほどのサナギだけれど、羽化するとどうしてこんな小さな殻の中にいたのかと思うほど大きくなる。落ちてしまったサナギを両面テープで貼り付けたと友だちに話すと、「そんなことをしたら出られんでしょう」と言う。チョウはサナギの背中から出てくるので、腹の部分を接着した格好にしてある。でも、いったん落ちたサナギは羽化しないかも知れないから、この先が心配である。ミカンの枝でサナギになった3匹は無事に冬を越した。植木鉢はサナギの糸を留められないのか、それとももう少し風を遮る工夫をしておくべきだったのか、反省することばかりだ。
名古屋の神社の境内での井戸掘りは、18メートルにまで達したのに、汲み上げることができなくて四苦八苦している。私たちの持っているガソリンエンジンポンプでは、深さ6メートルくらいからしか水を上げられないのだ。いろいろ聞いてみると、ガソリンエンジンのポンプでは10メートルが限界だと言う。確かに私たちがこれまで掘ってきた井戸は大体10メートル以内だったから、水を汲み上げることができた。それでは、20メートルとか30メートル掘ったという人たちはどんな風にして汲み上げているのだろう。
明日は神社で起工式があり、食事が出されるという。メカに詳しい長老は、「水も出せんのに、のこのこ出ることはわしにはできん」と言われる。神社の本殿を建てた時の地質調査書によれば16メートル辺りから含水層となるから、「そこまでは掘ったほうがいい」と長老は言っていたが、まさか汲み上げることができなくなるとは予想していなかったのだ。ポンプのメーカーに問い合わせてすっかり意気消沈してしまった。それでも、神社がわざわざ用意してくれている食事を、面子が立たないからと勝手に欠席してしまうのは大人気ない。
井戸掘りのメンバーも、ベテランは腰痛と膝痛で働くことができないし、一番の物知りは恒常的な仕事ができて参加できない。そんなこんなで、またしても私の出番が回ってきてしまった。私は井戸掘りを根本から研究しようというほどの意欲はなく、お手伝いならいくらか皆さんの役に立てるだろうと思っていたけれど、そう都合の良いようにはいかないようだ。皆さんが馬鹿話などし合って、楽しく仕事をしているうちは良いけれど、働くことが苦痛になってくるようなら止めた方がいい。今はその試練の時のようだ。