「今日、一日だけはがんばろう」。そう思って続けて来たと小保方晴子さんは言う。細胞に刺激を与えることで、様々な種類の細胞に変化できる能力を持たせる新しい万能細胞(STAP)を開発した30歳の女性科学者の言葉だ。凄い人がいる。ノーベル賞も間違いないだろうとか、現代科学の進歩は想像を超えているとか、驚くことはいっぱいあるけれど、私はこの発言に一番衝撃を受けた。
「今日できることを明日に延ばすな」と、ベンジャミン・フランクリンは言った。聖書にもそんな言葉があったように思う。それくらい人間は、今日やらなければならないのに、「明日やればいい」とサボる。頑張ることよりも怠ける方を選んでしまう。私はその典型的な類だが、やっぱり凄い人は違う。「今日、一日だけはがんばろう。もし、失敗だったら止めればいいのだから、今日はがんばる」。そんな風になかなか考えられない。
進んで苦しい道を行く人がいる。わざわざそんな茨の道を選ぶことはないのにと思うけれど、本人には、苦しいとか茨の道とかではないのだ。むしろ、楽しくてワクワクするようなことなのだ。充実していて、楽しくって、ワクワクしてしまうから、日曜日だろうと深夜になろうと気が付かないくらい夢中になってしまうのだ。恋愛に似ているなと思う。彼女の夢が上手に叶いますようにと祈りたくなる。
これが自分の天性とか、これが自分の一生の仕事とか、言い切れる人は少ないだろう。今の職業も、「たまたま」の出逢いからに過ぎないだろう。もちろん世の中には小さな時からなりたいものがあり、それに向かって努力して、そのとおりになった人もいる。しかし、多くの人はいろんな事情から、「たまたま」出遭ったものを一生の仕事にしている。何が幸せなのか、何が不幸なのか、死んでみなくては分からないし、死んでも分からないかも知れない。
生きている今を、精一杯に生きるしかない。今日、一日だけはがんばろう、そう思って。