友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

ラジオの人生相談

2009年03月20日 11時28分24秒 | Weblog
 長年通っている床屋さんへ行ってきた。ご主人は私と同じ歳だが、昨年の10月に亡くなられた。歌がうまかったし、何よりもビックリしたのは人前で話すのが上手だった。今は、奥さんと真ん中の息子さんで店をやっている。私の担当は奥さんと決まっているようで、いろいろと世間話をしていた時、「早くお父さんが迎えに来て欲しい」と言う。もちろん本気ではないだろうけれど、そう言いたい気持ちはよくわかる。

 「若い時ならいろいろ夢もあるけれど、この歳じゃー先も知れているじゃーないですか。孫が大きくなっていくのは楽しみだけれど、ちょっと違うものね。そう思いませんか?」と言う。そのとおりだ。確かにいろんな可能性が全くなくなってしまったわけではないが、それは若い時に持つものとは違う気がする。気持ちは若い時と、18歳くらいの時と変わらないのに、じゃあ何ができるのかと言えば、できることはごく限られてくる。

 実際は、若い時でもそんなに何でもできたわけではないし、何かを夢見てそれに突き進んでいたのかと言えば決してそうでもない。何かができそうな気がして、やればできるとばかりに頑張ってきたに過ぎないだろう。そして到達した地点は、そんなに特別なものは何もない。それが普通の人の人生だろうが、歳を取ると到達点の方がなんとなく見えてきてしまうので、「先も知れている」と思ってしまうのだろう。

 私の中学・高校からの友だちは12年以上、友だち以上恋人未満の関係を維持してきているけれど、それも私たちには「老い」が見えてしまっているからではないかと思う。彼のその大事な女性は17歳も年下である。年金暮らしの彼が離婚をして、彼女と暮らしていくことは金銭的にも無理だろう。無理を承知でそんなリスクを彼女に背負い込ませるような男ではない。友だち以上恋人未満がギリギリの選択であろうと思う。

 その時、ラジオから人生相談が流れてきた。65歳の女性は10年前に夫と離婚したと話す。夫の様子がおかしいと気付いて駅で待ち構えていたら、夫が女性とやってきた。そこで彼女は「旅行に行ってもいいけれど、必ず帰ってきて」と夫に言ったそうだ。彼女は夫の浮気を許すつもりでいたが、夫の方は「お前とは暮らせない」と言って出て行ってしまった。娘に相談するためにそんな事情や愚痴を話したのだろう。10年後の今、今度は娘がダンナと離婚するという相談だった。

 その後がどんな話になったのか、ドライヤーがやかましくて聞こえなかったけれど、電話相談をしてきた女性のことより、その夫のことが気になった。定年になって妻から離婚される男の話はよく聞くが、その逆もあるのか。これからどんな夢があると彼は思ったのだろう。男と女が暮らしていくということは、夢ばかりではない。我慢とか忍耐とか忘我も絶対に必要だろう。そうした「先が見えている」ものに立ち向かうエネルギーに感心した。

 さて、私はこれから現実から逃避して、落語を聴きに行ってきます。
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