ボヤキ客である。自分を取り巻く環境や携わる人々への不平不満をぶちまけに来店するのだが、そんな常連客が三組居る。三組とはいっても不平不満をぶちまけるのに何人か束に為りやって来る方々も居ないから、三組三人である。大体、そんな方々は話を聞いて貰いたい訳だからカウンターに腰掛け延々と三時間居座る。当店は、こう見えてもレストランであるからスナックかバー辺りでやって貰いたい。嫁さんは、それをホールであちこちのテーブルを扱いながら上手く交しているが、オイラは調理場にて真っ正面だから聞くのも十分位にして欲しい訳である。建設的で未来的な話ならば聞くのも楽しいが、不平不満・鬱憤の話はオイラだって鬱陶しい。現実なんだから、広くゆったりとした心で受け止めて解決の糸口を見出だすしか無いのだが、ぶちまけに因りその場を凌ごうとするのだ。話では、解決しないのになっー!そんな常連客が、居るのも辛いが皆さん定期的に来店してくれる。困っている。
朝に店に来て見ると、爽快である。昨日の床洗いが完全に乾いてピカピカに輝き店内が明るい。休日前に大宴会があったので、冷蔵庫の食材も空だし、飲料庫もかなり空だから仕込みや発注に忙しい。商売家で嫌われる金種が在るのだが、五の付くお金。五円、五百円、五千円だ。何故か不景気の場合はこの金種が集まる。毎日の銀行の集金で封筒に五千円ばかりだと恥ずかしい。これ、取引先の方々も同意見である。先日の宴会でも、その場徴収で会費に五千円札が22人分。当然、支払いは22枚の五千円札に加えた額だから束に為る訳である。だから、今日の取引先への仕入れの支払いも五千円札ばかりで払う。が、そのやり取りでツクヅクお金は天下の回り物と感ずるのである。今日は一日中、昨夜に解体した金粒と金貨の処遇に就いて考えながらの本業であろう。
昼寝から起きて夕飯である。ギターの修繕も気になって様子を見に作業場へ。触ってみると乾いているので、余分なパテのはみ出しを刃物で削り取り滑らかに仕上げ、漆の出番である。ギターは木製だから漆とは相性が良いのでしっくりと塗れた。そして、以前からの懸案であった金のペンダントの解体である。今日は、バイクの解体で断念したので嫌な予感だが、マァやり始める。枠は、壊さなければ中の金貨は出せないので思い切って壊す。中身は、「エリザベス・コイン」である。18Kの外枠は潰しである。潰しとは、溶解して再生させる事だ。金の塊が一つ採れた。どのみち、金塊だから小さくも価値は在る。収穫であった。マアマアの休日だった。