
小寒。今日は寒の入りだ。日は少しづつ長くなっているが、2月の節分まで寒い日が続く。だが皮肉なもので、降り続いた雪が止んで晴れ間が出た。厳しい寒さに降った雪はことのほか美しい。小寒ではあるが、陽ざしが出て、凍った道も融け始めた。皮肉なことではある。暦通りに、気候が移ろっていかないように人生もまたままならない。芥川龍之介に『侏儒の言葉』という随筆がある。ときおり、ページを拾い読みすることが楽しい。
「人生とは落丁の多い書物に似ている。一部を成すとは称し難い。しかしとにかく一部を成している。」(芥川龍之介『侏儒言葉』)
落丁に注釈がついていて、書物のページのぬけて不足しているものとある。つまり完全な人生などないということであろう。これは芥川の名言と言えるものかも知れない。人が何故名言に癒されるのか。精神医学者の樺沢先生によると、有名人の吐いた言葉に共感して心の交流が生まれる。そのとき分泌されるオキシトシンという物質が心にやすらぎをもたらすという仮説を立てた。なるほどと納得できるところがある。
「幸福とは幸福を探すことである。」(ルナール)
寺山修司は学校の便所の落書きでこの言葉を見つけた。言葉との出会いは人さまざまだ。しかし、人生の生き方を示す言葉がどこかにある。