みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0301「筋肉痛」

2018-08-26 18:45:38 | ブログ短編

「ねえ、どうしたの? 何か、変よ」
 同僚(どうりょう)の一恵(かずえ)が話しかけてきた。私は愛想笑(あいそわら)いをして、「いや、ちょっと筋肉痛(きんにくつう)なの」
 ごく普通(ふつう)のOLが筋肉痛になることはないよね。一恵は不思議(ふしぎ)そうな顔をしていた。だから、私、言ったの。「ちょっと、電車(でんしゃ)に乗り遅(おく)れそうだったんで、ダッシュしちゃった。もう、ダメね。そんなことで筋肉痛になるなんて」
 これで彼女も納得(なっとく)してくれたみたい。でも、本当(ほんとう)はそうじゃないんだ。実(じつ)は…。
 昨日(きのう)まで付き合ってた彼を追(お)いかけてたの。もう、どうしようもない人で、平気(へいき)で約束(やくそく)は破(やぶ)るし、私のお金まで盗(ぬす)んだのよ。本人(ほんにん)は、ちょっと借(か)りただけなんて言ってたけど。私って、そんなお人好(ひとよ)しじゃないから。嘘(うそ)をついてることぐらい、すぐに分かったわ。
 彼って、逃(に)げ足だけは速(はや)いの。でも、私ほどじゃないけどね。すぐに捕(つか)まえて、ボコボコにしてやったわ。私を怒(おこ)らせた、彼がいけないのよ。これでもう、二度と私の前には現れないはず。いい気味(きみ)だわ。
 あーぁ。何で、変な男ばっかりよってくるのかしら。私は、頼(たよ)りがいのある素敵(すてき)な男性を求(もと)めてるのに。世の中って不公平(ふこうへい)よ。私みたいな良い女が、何でへなちょこ男の面倒(めんどう)を見なきゃいけないの。隣(となり)にいた一恵が、心配(しんぱい)そうに話しかけてきた。
「ねえ、眉間(みけん)にシワ寄せちゃって、具合(ぐあい)でも悪(わる)いんじゃない?」
<つぶやき>女性を侮(あなど)ってはダメです。どんなしっぺ返しが待っているか分かんないから。
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0300「別れた彼」

2018-08-25 18:53:15 | ブログ短編

 一年ぶりに別れた彼と出会った。街中(まちなか)で偶然(ぐうぜん)だったけど、なんかチャラチャラした女と腕(うで)を組(く)んで歩いていた。こいつ、まだこんなことやってんだ。私は何だかおかしくなった。
 でも、その女って、一年前の私なんだよね。私もチャラチャラしてたから。そう考えてみると、なんか若気(わかげ)の至(いた)りっていうか、複雑(ふくざつ)な感じ?
 あっ、いけない。彼と視線(しせん)が合ってしまった。私はさり気(げ)なく顔をそらす。彼は、気づいていないのか、そのまま私の横(よこ)を通り過(す)ぎる。何でよ、普通(ふつう)気づくよね。私の顔、見たじゃない。もう、信じられない。私のことを無視(むし)するなんて。
 私、なに怒(おこ)ってんのかな? もう彼とは何でもないのに。別れたのだって――。もういいわ、そんなこと。でも、私ってそんなに変わったのかな?
 私は、ショーウィンドウに自分の姿(すがた)をうつしてみる。そりゃ、一つ歳(とし)を取って、着ている服(ふく)だって落ち着いた感じになってるけど、私は私よ。別にそんなに変わってなんか…。
 私は、彼の横にべったりとくっついていた女のことを思い出す。あれは、まだ二十歳(はたち)そこそこって感じだったわ。まったく、若い女なら誰(だれ)だっていいんだから――。
 えっ、もしかして…。私、おばさんになったってこと? 街中を闊歩(かっぽ)しているおばさんに分類(ぶんるい)されてるって――。違(ちが)う。絶対(ぜったい)違うわよ。私は、まだ若いんだから。
 私は、ショーウィンドウの自分に言い聞かせた。
<つぶやき>大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。あなたはあなたなんだから。素敵(すてき)な人生(じんせい)を過ごしましょう。
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0299「家庭のエコ」

2018-08-24 18:58:29 | ブログ短編

 夫(おっと)は時に壮大(そうだい)な夢(ゆめ)を語(かた)るときがある。今日は何の話かしら。
「なあ、エコ住宅(じゅうたく)を建(た)てよう。太陽光発電(たいようこうはつでん)で電気(でんき)を作って、蓄電池(ちくでんち)があればなおいいよな。それに、バリヤフリーも必要(ひつよう)だよ。俺(おれ)たちの老後(ろうご)のためにも。それと、もちろん耐震設計(たいしんせっけい)にしないとな。あと、サンルームも作って。ああっ、そうなると庭(にわ)も考えないとなぁ」
 私は夫の考えに一つずつうなずいて見せる。そして、最後(さいご)に私は言うの。
「それ、いいわねぇ。私も住(す)んでみたいわ。じゃあ、あなたのお小遣(こづか)い、少し減(へ)らしてもいいかしら? そしたら、その夢かなうかもしれないわ」
 夫は慌(あわ)てて、「ちょっと待ってよ。それはないだろ。ただでさえ削(けず)られてるのに」
 私はにっこり笑(わら)うと、「じゃあ、今度の休みにでも、住宅展示場(てんじじょう)へ行ってみない?」
 夫はキョトンとした顔で私を見る。私は落ち着き払って、
「どのくらいかかるか調(しら)べないと。目標(もくひょう)が決まれば、後はそれに向かって突(つ)き進むだけよ」
 私はこれでも堅実(けんじつ)な性格(せいかく)なの。何とかやりくりして、貯金(ちょきん)も少しはあるわ。それに、何か楽しみがないと人生(じんせい)つまんないじゃない。家を建てるっていいかもしれない。
 夫は小声になり、「でも、これはあくまでも夢なんだから。そんな無理(むり)しなくても…」
 夫は口ばっかりのところがある。でも、私はそんな彼のこと、嫌(きら)いじゃないわよ。
<つぶやき>男は夢を語り、女は現実(げんじつ)を見る。て、誰(だれ)かが言ってました。同じ夢、見ましょ。
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0298「アヘの使い道」

2018-08-23 18:51:49 | ブログ短編

 淑子(よしこ)は青木(あおき)の顔を見るなり言った。「ねえ、あたしの<アヘ>を返(かえ)して!」
 青木はとぼけるように、「何の話だよ。俺(おれ)には分かんないなぁ」
「あなたがちょっと貸(か)して欲(ほ)しいって言ったから、あたしは…」
 青木はちょっと脅(おど)すように、「だから、<アヘ>なんて知らないって言ってるだろ」
「あたしの<アヘ>をあんなことに使うなんて。返してよ、あれはあたしのなんだから」
「うるさいな。俺が<アヘ>をどう使おうと、お前には関係(かんけい)ないだろ」
「冗談(じょうだん)じゃないわよ。<アヘ>はあたしのものよ。あなたの勝手(かって)にはさせないわ」
「あの<アヘ>が、お前のものだって証拠(しょうこ)がどこにあるんだ。名前でも書いてあるのか?」
「何てこと言うの。あの<アヘ>は絶対(ぜったい)あたしのよ。誰(だれ)だって知ってるんだから」
「ふん。証拠がないんじゃ、返すわけにはいかないな。まだまだ、あの<アヘ>には使い道があるんでね。せいぜい稼(かせ)がせてもらうよ」
「あなたって人は、最低(さいてい)ね。あなたがそのつもりなら、あたしにも考えがあるわ」
「何だよ。お前に何ができるっていうんだ。指(ゆび)でもくわえて見てろ」
「このままじゃ、すませないから。絶対に取り返してやる。見てらっしゃい!」
 淑子は青木をにらみつけると、足早に部屋から出て行った。
<つぶやき>アヘってなに? 彼女にとってとても大切(たいせつ)なものなのかも。気になります。
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0297「植物の声」

2018-08-22 18:52:38 | ブログ短編

 とある密林(みつりん)の奥地(おくち)で新種(しんしゅ)の植物(しょくぶつ)が発見(はっけん)された。驚(おどろ)くことに、その植物は人間の心の中へ語(かた)りかけることができた。どうして意志(いし)が人間に伝(つた)わるのか、まだ解明(かいめい)されていない。
 だが、ある企業(きぎょう)はそれに目をつけた。その植物の種(たね)を手に入れると、栽培(さいばい)に乗(の)り出したのだ。思ったよりも栽培は難(むずか)しくはなかった。犬(いぬ)や猫(ねこ)より手がかからず、友だちのようにおしゃべりができるとあって、都会(とかい)を中心(ちゅうしん)に爆発的(ばくはつてき)ブームとなった。
 人間たちは植物に日頃(ひごろ)のうっぷんや愚痴(ぐち)をこぼし、植物たちは人間を慰(なぐさ)め励(はげ)まし続けた。この関係(かんけい)はとても良好(りょうこう)なものに思えた。だが、人間はもともと飽(あ)きっぽいもの。いつしか、人間たちはこの植物を疎(うと)ましく思うようになった。人間たちは水を与(あた)えるのをやめ、植物の口を閉(と)じさせた。最後(さいご)には、捨(す)てられたり燃(も)やされたり、顧(かえり)みられることはなかった。
 植物たちは、自分(じぶん)たちを守(まも)るために立ち上がった。驚くべき速(はや)さで進化(しんか)をとげたのだ。あるものは乾燥(かんそう)に耐(た)えるように形を変え、あるものはヘビのようにツルを伸(の)ばして窓(まど)から外へ、新天地(しんてんち)を求(もと)めて飛(と)び出した。
 ある部屋(へや)で見つかったものは、人間の背丈(せたけ)よりも大きくなっていた。植物の中心は肥大化(ひだいか)し、口のような穴(あな)が上を向(む)いている。家の中のいたるところにツルが伸び、それがうごめいていた。そして、ここに住(す)んでいたはず家族(かぞく)は、忽然(こつぜん)と姿(すがた)を消していた。
 植物たちは世界中に広まった。彼らは人間たちに語りかける。「お前たちは必要(ひつよう)ない!」
<つぶやき>この地球(ちきゅう)にいるのは人間だけじゃない。足下(あしもと)にも、小さな生命(いのち)はあるのです。
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