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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0297「植物の声」

2018-08-22 18:52:38 | ブログ短編

 とある密林(みつりん)の奥地(おくち)で新種(しんしゅ)の植物(しょくぶつ)が発見(はっけん)された。驚(おどろ)くことに、その植物は人間の心の中へ語(かた)りかけることができた。どうして意志(いし)が人間に伝(つた)わるのか、まだ解明(かいめい)されていない。
 だが、ある企業(きぎょう)はそれに目をつけた。その植物の種(たね)を手に入れると、栽培(さいばい)に乗(の)り出したのだ。思ったよりも栽培は難(むずか)しくはなかった。犬(いぬ)や猫(ねこ)より手がかからず、友だちのようにおしゃべりができるとあって、都会(とかい)を中心(ちゅうしん)に爆発的(ばくはつてき)ブームとなった。
 人間たちは植物に日頃(ひごろ)のうっぷんや愚痴(ぐち)をこぼし、植物たちは人間を慰(なぐさ)め励(はげ)まし続けた。この関係(かんけい)はとても良好(りょうこう)なものに思えた。だが、人間はもともと飽(あ)きっぽいもの。いつしか、人間たちはこの植物を疎(うと)ましく思うようになった。人間たちは水を与(あた)えるのをやめ、植物の口を閉(と)じさせた。最後(さいご)には、捨(す)てられたり燃(も)やされたり、顧(かえり)みられることはなかった。
 植物たちは、自分(じぶん)たちを守(まも)るために立ち上がった。驚くべき速(はや)さで進化(しんか)をとげたのだ。あるものは乾燥(かんそう)に耐(た)えるように形を変え、あるものはヘビのようにツルを伸(の)ばして窓(まど)から外へ、新天地(しんてんち)を求(もと)めて飛(と)び出した。
 ある部屋(へや)で見つかったものは、人間の背丈(せたけ)よりも大きくなっていた。植物の中心は肥大化(ひだいか)し、口のような穴(あな)が上を向(む)いている。家の中のいたるところにツルが伸び、それがうごめいていた。そして、ここに住(す)んでいたはず家族(かぞく)は、忽然(こつぜん)と姿(すがた)を消していた。
 植物たちは世界中に広まった。彼らは人間たちに語りかける。「お前たちは必要(ひつよう)ない!」
<つぶやき>この地球(ちきゅう)にいるのは人間だけじゃない。足下(あしもと)にも、小さな生命(いのち)はあるのです。
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