「ねえ、お母さん。何でこんなに送(おく)ってくんのよ」
娘(むすめ)は宅配(たくはい)の段(だん)ボール箱の中を覗(のぞ)きながら、携帯電話(けいたいでんわ)の向こうの母親の返事(へんじ)を待った。母親は何のことか分からず、訊(き)き返したようだ。娘は少し言葉(ことば)を強くして、
「だから、お餅(もち)よ。こんなに食べきれるわけないでしょ。私にどうしろっていうの」
母親はやっと理解(りかい)したらしく、早口(はやくち)で何かをまくしたてた。娘は、
「ちょっと、何それ。叔父(おじ)さんとこへ送るやつだったの。もう、何やってんのよ」
母親は、どうしたらいいのか混乱(こんらん)しているようだ。娘は落ち着かせるように、
「ちょっと、なに慌(あわ)ててんの。……えっ? 私の荷物(にもつ)が叔父(おじ)さんのとこへ…」
母親はさらにまくしたてているようで、ところどころ聞きとれない。
「はぁ? なに? そんな。食べきれない分は、会社で配(くば)れって…。そんなこと、できないわよ。恥(は)ずかしい。……えっ? もっと恥ずかしいこと…、なにそれ?」
どうやら、叔父さんの所へ送ってしまった荷物に問題(もんだい)があるようだ。娘は不安(ふあん)を感じて、
「何が入ってたの? まさか、また変なの入れてないでしょうね。やめてよ。私、そんなのいらないからね。ちょっと、聞いてんの? お母さん!」
電話は途中(とちゅう)で切られてしまった。娘は、大きなため息(いき)をついた。
<つぶやき>間違いは誰(だれ)にだってあります。でも、箱(はこ)の中には何が入っていたんでしょう。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。