一年ぶりに別れた彼と出会った。街中(まちなか)で偶然(ぐうぜん)だったけど、なんかチャラチャラした女と腕(うで)を組(く)んで歩いていた。こいつ、まだこんなことやってんだ。私は何だかおかしくなった。
でも、その女って、一年前の私なんだよね。私もチャラチャラしてたから。そう考えてみると、なんか若気(わかげ)の至(いた)りっていうか、複雑(ふくざつ)な感じ?
あっ、いけない。彼と視線(しせん)が合ってしまった。私はさり気(げ)なく顔をそらす。彼は、気づいていないのか、そのまま私の横(よこ)を通り過(す)ぎる。何でよ、普通(ふつう)気づくよね。私の顔、見たじゃない。もう、信じられない。私のことを無視(むし)するなんて。
私、なに怒(おこ)ってんのかな? もう彼とは何でもないのに。別れたのだって――。もういいわ、そんなこと。でも、私ってそんなに変わったのかな?
私は、ショーウィンドウに自分の姿(すがた)をうつしてみる。そりゃ、一つ歳(とし)を取って、着ている服(ふく)だって落ち着いた感じになってるけど、私は私よ。別にそんなに変わってなんか…。
私は、彼の横にべったりとくっついていた女のことを思い出す。あれは、まだ二十歳(はたち)そこそこって感じだったわ。まったく、若い女なら誰(だれ)だっていいんだから――。
えっ、もしかして…。私、おばさんになったってこと? 街中を闊歩(かっぽ)しているおばさんに分類(ぶんるい)されてるって――。違(ちが)う。絶対(ぜったい)違うわよ。私は、まだ若いんだから。
私は、ショーウィンドウの自分に言い聞かせた。
<つぶやき>大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。あなたはあなたなんだから。素敵(すてき)な人生(じんせい)を過ごしましょう。
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