「これが、私のやり方なの。もう、口(くち)出さないでよ」
「だから、君(きみ)のやり方じゃ効率(こうりつ)が悪(わる)いんだよ。どうして分かんないかな?」
「余計(よけい)なお世話(せわ)です。あなたといる方が効率が悪いわ」
二人の会話(かいわ)を横の席(せき)で聞いていた同僚(どうりょう)の女性は、小さなため息をついた。それが、まるで合図(あいず)のように、もめていた二人は彼女に話しかけてきた。
「ねえ、私の言ってること、間違(まちが)ってないよね? 横井(よこい)さんなら分かるはずだわ」
「いや、僕(ぼく)の方が正しいだろ? 君だったら、どっちが正論(せいろん)を言ってるか――」
「もう、分かんない」同僚の横井さんはうんざりしたように言った。「どっちもどっちでしょ。何でそんなことでもめるのか、わたしには理解(りかい)できないわ。あなたたちって、どうしてそんなに仲(なか)が悪いの? いつもいつも…、付き合わされてるわたしの身(み)にもなってよ」
二人は一瞬(いっしゅん)顔を見合わせたが、ほとんど同時(どうじ)に言った。
「別に仲が悪いわけじゃないよ」
「別に嫌(きら)いなわけじゃないわ」
横井さんは呆(あき)れて二人の顔を見比(みくら)べて言った。「わたし、知ってるんだからね。あなたたち、わたしがいるところでしか喧嘩(けんか)しないみたいね。どういうこと? いったい、わたしに何をさせたいのよ? はっきり言ってちょうだい!」
<つぶやき>ここはひとつ一肌(ひとはだ)脱いであげよう。二人をくっつけちゃえば静(しず)かになるかも。
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