みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0683「想定外」

2019-10-10 18:27:41 | ブログ短編

 私の夫(おっと)にはちょっと困(こま)ったところがある。何でも先読(さきよ)みしなければ気がすまないのだ。車で出かけるときは必(かなら)ず交通情報(こうつうじょうほう)をチェックし、二人で外食(がいしょく)するときも人気(にんき)の口コミを確認(かくにん)する。いつも美味(おい)しいものを食べさせてもらえるので、これは良(よ)しとして…。
 問題(もんだい)は、想定外(そうていがい)の事態(じたい)が起こったときだ。いつも夫は口癖(くちぐせ)のように、
「俺(おれ)はいつも最悪(さいあく)の事態を想定しているんだ」と豪語(ごうご)している手前(てまえ)、動揺(どうよう)は見せたくないみたいで、それがかえって事態を悪(わる)い方向(ほうこう)へと向かわせてしまう。
 私が風邪(かぜ)をひいて寝込(ねこ)んだとき、夫は私にこう言った。
「今日は休みだから、家事(かじ)は俺に任(まか)せておけ。この日のためにいろいろ調(しら)べておいたんだ」
 私はイヤな予感(よかん)がした。夫は手始(てはじ)めに朝食を作ることにしたようだ。キッチンの方で、何やらガチャガチャと音がしてくる。私は急(きゅう)に不安(ふあん)になって来た。結婚(けっこん)してから夫がキッチンに立ったことはなかったし、それ以前(いぜん)に彼の口から料理(りょうり)の話題(わだい)が出たことは一度もないはずだ。私のこの予感(よかん)は的中(てきちゅう)したようだ。夫は寝室(しんしつ)へ顔だけ出して言った。
「ちょっとスーパーへ行ってくる。卵(たまご)がなくなったんだ」
 私はベッドから起き上がると、「卵だったら冷蔵庫(れいぞうこ)にまだあるはずよ」
「それはもう使っちゃったんだ。心配(しんぱい)いらないよ。君は寝てていいから」
 夫は顔を引っ込めた。そして、何だか慌(あわ)てた感じで出て行った。私はベッドから出ると、ふらつく足取(あしど)りでキッチンへ向かった。私がそこで見た光景(こうけい)は、目を覆(おお)うものだった。
<つぶやき>これはまずいです。想像(そうぞう)するだけで恐(おそ)ろしいですよね。後片(あとかた)づけが大変(たいへん)…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする