みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0682「勇気」

2019-10-09 18:26:35 | ブログ短編

 彼は、帰り道で突然(とつぜん)声をかけられた。振(ふ)り向くと、そこには彼女がいた。
 彼女はうつむき加減(かげん)で言った。「あの、ちょっと話したいことがあるんだけど…」
「ああ、いいよ。じゃあ、家(うち)、来る?」
 二人はご近所同士(どうし)で、家族(かぞく)ぐるみでお付き合いをしているのだ。
 彼女はもじもじしながら答(こた)えた。「できたら二人だけがいいんだけど…」
「分かった。じゃあ、いま話したら? でも、勉強(べんきょう)のことはかんべんな…。そりゃないか?」
「はい。えっと…、あの…。わたし…、ずっと前から…、好きでした。付き合って下さい!」
 彼女は目を閉じて言った。とても彼の顔を見られなかったから…。彼女がいくら待っても、彼は何も言ってくれなかった。彼女は恐(おそ)る恐る彼を見た。彼はそんな彼女を見て、
「ああ…、そうなんだ。へえ……」
 彼女の顔が曇(くも)った。こんなに反応(はんのう)が薄(うす)いなんて…。少しは期待(きたい)してたのに。彼は言った。
「でも、慎吾(しんご)と付き合ってるんじゃないの? 同級生(どうきゅうせい)だし、いつも楽しそうに――」
「えっ? ち、違(ちが)います! 慎吾とはただの友だちで、向こうから話しかけてくるだけで…。付き合ってなんかいません。ほんとに関係(かんけい)ないですから」
「そうなんだ。ごめん、僕の勘違(かんちが)いか…。じゃあ、どうしようか…」
 彼女は恥(は)ずかしくなり慌(あわ)てて、「あの、返事(へんじ)は今じゃなくても…」と言って駆(か)け出した。
<つぶやき>きっと年上(としうえ)の彼なんでしょうね。気になるのは、慎吾君のことなんだけど…。
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