☆嗚呼! 非の打ちどころのない傑作でした。
しっとりと感動しました。
『もののけ』『千と千尋』の頃から、『ハウル』『ポニョ』と、面白いけど物語が破綻しまくっていた宮崎駿が、この作品では見事な伏線と収束に至る脚本を練り上げていた。
『ゲド戦記』でケチのついた息子・吾朗監督を「何とかして一人立ちさせたい」の親心で、死に物狂いで「物語」を仕上げたのか。
◇
・・・なんか、全てが良かった。
主人公は可愛いし、
これは、吾朗監督の演出かもしれないが、わざとに、歩き方をコマ落としさせていて、動画的な、心地良きテンポを生んでいる。
通学中のコクリコ坂の移動(自転車シーンもちろん含む)は、ちゃんとジブリ作品的な躍動感に溢れ、
物語の大きな起伏…、取り壊しが決まっていて、有志が反対運動を起こしている学生会館<カルチェラタン>の内部では、その色彩豊かな雑多さや上下移動の妙、個性的な学生の群体の様などなど、まさに私たちがジブリ作品に求めてやまない要素を備えている。
舞台となる60年代の前半…、思想もまた、カオス状態にあり、右翼左翼と区別できるものはなく、ただ、若い力が感じられた(主人公が好意を抱く少年は、伝統を守る「運動家」だ)。
その中で、堂々たる、繊細たる「恋」が描かれる。
主人公・海が好きになる俊は、少年らしい少年だ。
お互いが、相手を意識し始める流れがゆっくりと秀逸だし、二人の間に壁が出来、海が不安に感じる気持ちは、こちらも心が苦しくなる。
実に、「演技」が見事なのである。
海だけでなく、俊も、他のキャラクターも総じて、ささやかな表情の変化で、難しい感情を表わしてくれる。
そこで、海が「嫌いになったなら言って!」と直に問いかけるのも可愛いし(だって、告白さえしていない関係なんだぜ。そんなことを言うなんて、たまらなく可愛いじゃん^^)、
少年らしい少年が、飾らずにすんなりと事実を告げるのもいい。
まあ、エンディングで、二人の関係の「真実」は分かる^^
◇
クライマックスの、<カルチェラタン>存続への、理事長来訪時の学生による歓迎…、そのシーンからの、幾つかの問題に決着をつけるエピソードの畳み掛けは、「宮崎脚本お見事!」と思った。
「カリオストロの城」の終盤の盛り上がりに比せると思う。
また、全てが判明した後のタグボート上の二人は、
「ラピュタ」のエンディングで、ドーラ一味と別れ、二人きりで飛ぶパズーとシータみたいで、この二人は幸せになるんだろうな、と清々しくも、ちょいと寂しく思わせられるのでした。
◇
さて、吾朗監督だ。
明らかに、これまでのジブリの人物デザインよりも、「線が細く、流れるタッチ」なのは、素晴らしかった。
しかし、おそらく、吾朗演出なのだろうが、やたらと家族のイメージショットが出てくるのは、物語の流れにそぐわなかったと思う。
この作品に描かれた家族関係は、もっとダイレクトなもので、イメージ映像を加えられると、こっちのリズムがズレてしまう^^;
でも、素直に生きたい、素直に人を愛したいと思わせられる、とてもいい作品だった^^
(2011/07/16)
しっとりと感動しました。
『もののけ』『千と千尋』の頃から、『ハウル』『ポニョ』と、面白いけど物語が破綻しまくっていた宮崎駿が、この作品では見事な伏線と収束に至る脚本を練り上げていた。
『ゲド戦記』でケチのついた息子・吾朗監督を「何とかして一人立ちさせたい」の親心で、死に物狂いで「物語」を仕上げたのか。
◇
・・・なんか、全てが良かった。
主人公は可愛いし、
これは、吾朗監督の演出かもしれないが、わざとに、歩き方をコマ落としさせていて、動画的な、心地良きテンポを生んでいる。
通学中のコクリコ坂の移動(自転車シーンもちろん含む)は、ちゃんとジブリ作品的な躍動感に溢れ、
物語の大きな起伏…、取り壊しが決まっていて、有志が反対運動を起こしている学生会館<カルチェラタン>の内部では、その色彩豊かな雑多さや上下移動の妙、個性的な学生の群体の様などなど、まさに私たちがジブリ作品に求めてやまない要素を備えている。
舞台となる60年代の前半…、思想もまた、カオス状態にあり、右翼左翼と区別できるものはなく、ただ、若い力が感じられた(主人公が好意を抱く少年は、伝統を守る「運動家」だ)。
その中で、堂々たる、繊細たる「恋」が描かれる。
主人公・海が好きになる俊は、少年らしい少年だ。
お互いが、相手を意識し始める流れがゆっくりと秀逸だし、二人の間に壁が出来、海が不安に感じる気持ちは、こちらも心が苦しくなる。
実に、「演技」が見事なのである。
海だけでなく、俊も、他のキャラクターも総じて、ささやかな表情の変化で、難しい感情を表わしてくれる。
そこで、海が「嫌いになったなら言って!」と直に問いかけるのも可愛いし(だって、告白さえしていない関係なんだぜ。そんなことを言うなんて、たまらなく可愛いじゃん^^)、
少年らしい少年が、飾らずにすんなりと事実を告げるのもいい。
まあ、エンディングで、二人の関係の「真実」は分かる^^
◇
クライマックスの、<カルチェラタン>存続への、理事長来訪時の学生による歓迎…、そのシーンからの、幾つかの問題に決着をつけるエピソードの畳み掛けは、「宮崎脚本お見事!」と思った。
「カリオストロの城」の終盤の盛り上がりに比せると思う。
また、全てが判明した後のタグボート上の二人は、
「ラピュタ」のエンディングで、ドーラ一味と別れ、二人きりで飛ぶパズーとシータみたいで、この二人は幸せになるんだろうな、と清々しくも、ちょいと寂しく思わせられるのでした。
◇
さて、吾朗監督だ。
明らかに、これまでのジブリの人物デザインよりも、「線が細く、流れるタッチ」なのは、素晴らしかった。
しかし、おそらく、吾朗演出なのだろうが、やたらと家族のイメージショットが出てくるのは、物語の流れにそぐわなかったと思う。
この作品に描かれた家族関係は、もっとダイレクトなもので、イメージ映像を加えられると、こっちのリズムがズレてしまう^^;
でも、素直に生きたい、素直に人を愛したいと思わせられる、とてもいい作品だった^^
(2011/07/16)