「私の半生は人にかえり見もされません どぶ川の泥水でございました。
泥水の中にも美しいはすの花が咲くことを信じておりました私は
今にきっと美しいはすの花を咲かせてやるぞという 大きなのぞみを
心のどこぞにひそませておりました10才の私でございました」
浪花千栄子さんのセリフが入った「水のように」歌唱:フランク永井
浪花千栄子さんの自伝的著書「水のように」は紫の千代紙ふう和紙に
小花を散らした表紙の美しい本。
少年時代それを手にし、読んだあとの衝撃と感動は今も忘れない。
冷めやらぬ思いのなか、突き動かされるように感想を手紙にしたためた。
予期せぬことか、浪花さんから和紙に毛筆で返事をいただいた。
名古屋「御園座」の楽屋を訪ねたのはそれからまもなくのこと。
舞台前のだいじな時間をぎりぎりまでそばに置いていただき
色紙や扇子や著書にサインをいただいた。
次の公演にもまたいらっしゃいと言っていただき気持ちは張り裂けそうに震えた。
「いないことが多いけど京都に来たら寄ってらっしゃい」
そう言われて京都・嵐山の天龍寺に隣接したご自宅に伺ったのはある日の
一人旅の途中のこと。娘さんお二人に迎えていただいた。
一人旅の折々には、詩にその思いを残していた。
のちに私の詩集「早い朝」に2篇を収めた。
「夢」
「夢」の一字を朱で書いて
一番好きな言葉ですよ とあの方はおっしゃった
私はうなずいて
その一文字を深く泌み込ませるかのように
夢 夢 夢… とつぶやいた
その日から私は
鳥になり
花になり
星にもなって
そしていつかは
人になりたい
夢のある人になりたい
私はあの方に支えられている
私の小さな魂は
あの方に見守られている
「古都の片隅で」
京都保津川の川ぶちに
丈一尺の赤いのれんの下がる小さな茶店がある
白く染め抜かれた五つの文字をいとおしげに読む
つぼね茶屋
しとやかな京言葉に迎えられて
私は京都にひたひたと溺れていく
ここから私の旅が始まる
ゆるやかに心をひらいて
風に誘われ 光に導かれ
さまざまに鳴る音を確かめて
私ひとりの旅が始まる
京都保津川の川ぶちに
丈一尺の赤いのれんの下がる小さな茶店がある
ひとつの古都がここにある
まもなくして、著書「水のように」をもとに浪花さんの半生が
連続ドラマ化された。その主題歌をフランク永井さんが歌い
浪花さんのセリフが入ったレコードも発売された。そのセリフが
冒頭のもの。ジャケットにサインもいただいただいじなだいじな宝物。
歌はもちろん良いが、今ではすっかり暗誦したこの浪花さんの
セリフを聴くたびに、胸から熱くこみ上げるものがある。
溝口健二・小津安二郎・内田吐夢・森一生ら、名だたる映画監督の作品
にはほとんど出演、圧倒的な存在感ある演技は何度見ても震える。
12月がくると没後44年 その月がくるたび胸を熱くする・・・
泥水の中にも美しいはすの花が咲くことを信じておりました私は
今にきっと美しいはすの花を咲かせてやるぞという 大きなのぞみを
心のどこぞにひそませておりました10才の私でございました」
浪花千栄子さんのセリフが入った「水のように」歌唱:フランク永井
浪花千栄子さんの自伝的著書「水のように」は紫の千代紙ふう和紙に
小花を散らした表紙の美しい本。
少年時代それを手にし、読んだあとの衝撃と感動は今も忘れない。
冷めやらぬ思いのなか、突き動かされるように感想を手紙にしたためた。
予期せぬことか、浪花さんから和紙に毛筆で返事をいただいた。
名古屋「御園座」の楽屋を訪ねたのはそれからまもなくのこと。
舞台前のだいじな時間をぎりぎりまでそばに置いていただき
色紙や扇子や著書にサインをいただいた。
次の公演にもまたいらっしゃいと言っていただき気持ちは張り裂けそうに震えた。
「いないことが多いけど京都に来たら寄ってらっしゃい」
そう言われて京都・嵐山の天龍寺に隣接したご自宅に伺ったのはある日の
一人旅の途中のこと。娘さんお二人に迎えていただいた。
一人旅の折々には、詩にその思いを残していた。
のちに私の詩集「早い朝」に2篇を収めた。
「夢」
「夢」の一字を朱で書いて
一番好きな言葉ですよ とあの方はおっしゃった
私はうなずいて
その一文字を深く泌み込ませるかのように
夢 夢 夢… とつぶやいた
その日から私は
鳥になり
花になり
星にもなって
そしていつかは
人になりたい
夢のある人になりたい
私はあの方に支えられている
私の小さな魂は
あの方に見守られている
「古都の片隅で」
京都保津川の川ぶちに
丈一尺の赤いのれんの下がる小さな茶店がある
白く染め抜かれた五つの文字をいとおしげに読む
つぼね茶屋
しとやかな京言葉に迎えられて
私は京都にひたひたと溺れていく
ここから私の旅が始まる
ゆるやかに心をひらいて
風に誘われ 光に導かれ
さまざまに鳴る音を確かめて
私ひとりの旅が始まる
京都保津川の川ぶちに
丈一尺の赤いのれんの下がる小さな茶店がある
ひとつの古都がここにある
まもなくして、著書「水のように」をもとに浪花さんの半生が
連続ドラマ化された。その主題歌をフランク永井さんが歌い
浪花さんのセリフが入ったレコードも発売された。そのセリフが
冒頭のもの。ジャケットにサインもいただいただいじなだいじな宝物。
歌はもちろん良いが、今ではすっかり暗誦したこの浪花さんの
セリフを聴くたびに、胸から熱くこみ上げるものがある。
溝口健二・小津安二郎・内田吐夢・森一生ら、名だたる映画監督の作品
にはほとんど出演、圧倒的な存在感ある演技は何度見ても震える。
12月がくると没後44年 その月がくるたび胸を熱くする・・・