古い文反故(ふみほご) 小さく裂いて
庭の焚火に くべる良人(ひと)
焼いてしまえば 灰になる
枯枝(えだ)にまじって 片が付く
今朝(あさ)の焔(ひ)を抱く しもばしら
(台詞)もっと信じなくてはいけないぞ
喜びも悲しみも
互いに分け合うのが夫婦というものだ
青い煙は 尾をひきながら
過去を束ねて 立ちのぼる
袷袂(あわせたもと)に 顔ふせて
嗚咽絶え絶え 泣く背なに
何も言うなと 声をきく
おれが舟なら お前は乗り手
しっかり摑まり 居るが良い
けじめ 区切りを つけ終えて
心よせ合う ふたりには
冬に冴え冴え しもばしら
ひとこと:早いですねぇ~、1月もあっというまに終り。やっぱり冬です
各地で雪も降ってます。石川さゆりサンは今日が誕生日。
個人名で誰とはいわないが誰やらみたいに目立ちたがらずコビもなく
それでいてますます歌に対して真摯で存在感を高めている石川サン。
このブログでは1.女優・浪花千栄子さんとの思い出をからめた「竹生島」
2.好きな映画シリーズから「夜の河」3.大女優、山田五十鈴さんを哀悼して
『しぐれ茶屋おりく』をテーマに「おりく」
4.ただ一人の女として呪縛するかのように愛を契った男、幽閉されたように
その男の面影にすがり生きる女。そんな男女の激情の詞「落葉(らくよう)亭」
5.歌舞伎の演目「桜姫 ~歌舞伎 桜姫東文章 」より中村勘三郎さんを哀悼 して
「桜姫」6.女優・浪花千栄子サンの幼少の人並みならぬ苦労、女優としての開花
活躍をモチーフに「傍らの花」の6篇を書き下ろしてきました。
石川サンを想定しての書き下ろ詞は生半可な詞は書けない。
もちろん誰に対してもそうなのだがテーマとモチーフをしっかり決めて
彼女の唄いっぷりに負けない詞を書きたいと思うのだ。
前述の6篇にしても女優、映画、芝居、歌舞伎などからヒントを得た重厚な
書き下ろ詞を書いてきたのもそういう意図があってのことだ。
今回は昨年から折にふれ読み返している作家・山本周五郎の作品『夫婦の朝』
から着想を得た文芸もの。小説の内容は皆さんに
読んでいただければ分かるがなかなか味のあるものだから
共感のもらえる書き下ろ詞になったと思う。