前回のエントリーの続き。
友人オノの狭くて陽の当たらないアパートに、昨日また呼ばれたので行ってきた。
知り合いから大量のトマトをもらったが、一人では食いきれないし、冷蔵庫がないから傷んでしまう。
だから、おまえにやる、と彼のアルバイト先の惣菜屋さん経由の電話で言われた。
トマトは色々な料理に使えて重宝するので、初めてのことだったが、2週連続でお邪魔した。
トマトを私に分け与えたあとで、オノが、ダンボールで作ったというテーブルに、突然100円玉を置いた。
そして、「さっき道端で拾ったんだけど、おまえならどうする?」と、100円を指差しながら私に聞いた。
俺なら、交番に届けるな、と私は躊躇せずに答えた。
「本当か?」
ああ、100円玉を落とす人は、おそらくお金に困っている人だ。
これが、たとえば、一千万円を落とす人だったら、金には困っていないだろうから、見つけたとしても俺は拾わない。だから交番に届けることもしない。
拾った人が決めればいいと思う。
「変わった考え方だな」
ヨメからは、絶対にそんなこと人に話さないでよ、恥ずかしいから、と釘を刺されている。
いま、言ってしまったがね。
「わかった、じゃあ、ここから15分歩いたところに交番があるから届けに行こう」
二人で、築40年近い崩れかけのアパートの階段を下りた。
5分ほど歩いたところに、自動販売機があった。
そのとき、その自動販売機の機械の下を覗き込んでいる推定年齢8歳の男の子の姿が見えた。
オノが「どうしたの? ボク?」と聞くと、少年は「ジュースを買おうと思ったら、100円玉が落ちて下に入り込んじゃった」と答えた。
「もう100円玉はないの?」とオノが聞いたら、少年は「ちょうどしかないの」と首を振った。
そこで、オノは、右手に握った100円玉を少年に渡した。
「僕があとで自動販売機の下の100円は拾っておくから、これ使っていいよ」
少年は、軽くお辞儀をしてから100円を受け取り、ジュースを買ったあと、我々に「ありがとう」と手を振って走り去っていった。
拾ったものを他人に供与するって、これは横領になるのかもな、と私が言うと、オノが、「こんなことブログに書いたら、普通は炎上だけどな。でも俺んちにはパソコンもスマートフォンもないから、ブログはできない。たとえば、『炎上させてもいい芸人』の鈴木拓だったら、大変なことになっていたかもな」と笑った。
友人オノの家には、ある事情があって、「贅沢物」のパソコン、スマートフォン、電話がない。
そして、「贅沢物」のテレビもステレオもラジオもない。
だが、彼は図書館で色々な知識を仕入れているから、ブログ炎上ぐらいのことは知っているのである。
(毎週ボランティアで読み聞かせをしている小児病棟の子どもたちと話を合わせるため、最新の情報を図書館で仕入れているようだ)
そして、「知っているか?」と100円玉がなくなった右の手のひらを見つめながら言った。
「去年、衆議院の会議を欠席して旅行をしていたのがバレたナントカいう女性議員が、最近、ナントカいう元国会議員を『馬鹿』とブログで罵ったら、そのブログが炎上したらしい」
知らない。
「俺の記憶では、たとえばコワモテの男性国会議員が秘書を馬鹿呼ばわりしたり、マスコミを馬鹿と罵る光景は何度か見ているが、彼らは批判に晒されることはない。
でも、ナントカいう党を除名されたナントカいう女性議員が彼らと同じことをしたら批判される。なんでだろうな」
それは、その人が鈴木拓氏と同じ括りの「炎上させてもいい国会議員」だからじゃないのか。
炎上は、人を選ぶんだよ。
虐めやすい人間をな。
それにしてもな・・・・・オノ。
馬鹿が、馬鹿のことを「馬鹿」と言って何が悪いんだろうな。
俺には、理に叶っているように思えるんだが。
私がそう言ったら、オノがいとも簡単に答えを出した。
「それは、俺たちの誰もかもが馬鹿だからじゃないのか。
馬鹿は馬鹿という言葉に敏感なんだよ。
自分に当てはめて考えてしまうんだろうな。
馬鹿にとって『馬鹿』という言葉は、きっとタブーなんだ。
だから、炎上したんだろう」
そうかもしれない、と納得した。
さてと・・・・・じゃあ、俺の魔法のポケットから100円を出して、予定通り交番に届けることにするか。
そう言いながら、我々は予定通りに交番に向かって歩き出した。
「ああ、予定通り、交番に」
友人オノの狭くて陽の当たらないアパートに、昨日また呼ばれたので行ってきた。
知り合いから大量のトマトをもらったが、一人では食いきれないし、冷蔵庫がないから傷んでしまう。
だから、おまえにやる、と彼のアルバイト先の惣菜屋さん経由の電話で言われた。
トマトは色々な料理に使えて重宝するので、初めてのことだったが、2週連続でお邪魔した。
トマトを私に分け与えたあとで、オノが、ダンボールで作ったというテーブルに、突然100円玉を置いた。
そして、「さっき道端で拾ったんだけど、おまえならどうする?」と、100円を指差しながら私に聞いた。
俺なら、交番に届けるな、と私は躊躇せずに答えた。
「本当か?」
ああ、100円玉を落とす人は、おそらくお金に困っている人だ。
これが、たとえば、一千万円を落とす人だったら、金には困っていないだろうから、見つけたとしても俺は拾わない。だから交番に届けることもしない。
拾った人が決めればいいと思う。
「変わった考え方だな」
ヨメからは、絶対にそんなこと人に話さないでよ、恥ずかしいから、と釘を刺されている。
いま、言ってしまったがね。
「わかった、じゃあ、ここから15分歩いたところに交番があるから届けに行こう」
二人で、築40年近い崩れかけのアパートの階段を下りた。
5分ほど歩いたところに、自動販売機があった。
そのとき、その自動販売機の機械の下を覗き込んでいる推定年齢8歳の男の子の姿が見えた。
オノが「どうしたの? ボク?」と聞くと、少年は「ジュースを買おうと思ったら、100円玉が落ちて下に入り込んじゃった」と答えた。
「もう100円玉はないの?」とオノが聞いたら、少年は「ちょうどしかないの」と首を振った。
そこで、オノは、右手に握った100円玉を少年に渡した。
「僕があとで自動販売機の下の100円は拾っておくから、これ使っていいよ」
少年は、軽くお辞儀をしてから100円を受け取り、ジュースを買ったあと、我々に「ありがとう」と手を振って走り去っていった。
拾ったものを他人に供与するって、これは横領になるのかもな、と私が言うと、オノが、「こんなことブログに書いたら、普通は炎上だけどな。でも俺んちにはパソコンもスマートフォンもないから、ブログはできない。たとえば、『炎上させてもいい芸人』の鈴木拓だったら、大変なことになっていたかもな」と笑った。
友人オノの家には、ある事情があって、「贅沢物」のパソコン、スマートフォン、電話がない。
そして、「贅沢物」のテレビもステレオもラジオもない。
だが、彼は図書館で色々な知識を仕入れているから、ブログ炎上ぐらいのことは知っているのである。
(毎週ボランティアで読み聞かせをしている小児病棟の子どもたちと話を合わせるため、最新の情報を図書館で仕入れているようだ)
そして、「知っているか?」と100円玉がなくなった右の手のひらを見つめながら言った。
「去年、衆議院の会議を欠席して旅行をしていたのがバレたナントカいう女性議員が、最近、ナントカいう元国会議員を『馬鹿』とブログで罵ったら、そのブログが炎上したらしい」
知らない。
「俺の記憶では、たとえばコワモテの男性国会議員が秘書を馬鹿呼ばわりしたり、マスコミを馬鹿と罵る光景は何度か見ているが、彼らは批判に晒されることはない。
でも、ナントカいう党を除名されたナントカいう女性議員が彼らと同じことをしたら批判される。なんでだろうな」
それは、その人が鈴木拓氏と同じ括りの「炎上させてもいい国会議員」だからじゃないのか。
炎上は、人を選ぶんだよ。
虐めやすい人間をな。
それにしてもな・・・・・オノ。
馬鹿が、馬鹿のことを「馬鹿」と言って何が悪いんだろうな。
俺には、理に叶っているように思えるんだが。
私がそう言ったら、オノがいとも簡単に答えを出した。
「それは、俺たちの誰もかもが馬鹿だからじゃないのか。
馬鹿は馬鹿という言葉に敏感なんだよ。
自分に当てはめて考えてしまうんだろうな。
馬鹿にとって『馬鹿』という言葉は、きっとタブーなんだ。
だから、炎上したんだろう」
そうかもしれない、と納得した。
さてと・・・・・じゃあ、俺の魔法のポケットから100円を出して、予定通り交番に届けることにするか。
そう言いながら、我々は予定通りに交番に向かって歩き出した。
「ああ、予定通り、交番に」