今日の日記は、今読んでいる鈴木尚之著『私説 内田吐夢伝』(1997年 岩波書店刊)に登場する内田吐夢1964年製作作品『飢餓海峡』のことです。添付した写真は、その映画に主演した三國連太郎(中央)伴淳三郎(左端)高倉健(右端)の三人です。
この映画『飢餓海峡』は、水上勉の同名原作をこの著者鈴木尚之が見事に脚色した日本映画の名作です。その映画製作に実際携わった者だけが書ける印象深いエピソードを、鈴木尚之が自著で紹介しています。以下に、その私がとても深く共感した記述を引用抜粋し紹介します。
『原作がもつ推理部分の根幹を覆す疑問が吐夢からなされたのである。八重のつとめる娼家「花家」に犬飼犬飼があがった夜、安全カミソリをつかう。それを八重が大切に保存し、のちに殺人事件の証拠ちなってゆく。「女郎屋の安全カミソリなんて娼家にあがった客なら誰でもつかう。これが犬飼がつかったものだという情が移らんよ。どうするかねえ」・・おもいあぐねた吐夢の姿があった。・・私はごく自然に、「爪というのはどうですかねえ」と口にしていた。・・「ううむ~犬飼は大男だし、爪がつかえるかもしれんなあ!」そのつぶやきは、この私の案への賛意を示していた。』
なるほど、映画版では原作の安全カミソリが証拠品と示されていませんでした。映画では、客の為に切った爪をずっと大切に保管していた娼婦・八重(左幸子)の一途な思いを、警察取調べ室の味村刑事(高倉健)が名前を変え樽見となった犬飼(三國連太郎)に、次の言葉で投げかけ、犬飼を強く非難します。
『八重さんは、この十年間、この爪を、行李の底ふかく大事にしまっていたんです。片身はなさず、あなたの秘密を守っていたんですぞ。そんな八重さんをあんたは殺した!』
この瞬間に、この映画は原作をはるかに超えた不朽の名作となったのです。
この映画『飢餓海峡』は、水上勉の同名原作をこの著者鈴木尚之が見事に脚色した日本映画の名作です。その映画製作に実際携わった者だけが書ける印象深いエピソードを、鈴木尚之が自著で紹介しています。以下に、その私がとても深く共感した記述を引用抜粋し紹介します。
『原作がもつ推理部分の根幹を覆す疑問が吐夢からなされたのである。八重のつとめる娼家「花家」に犬飼犬飼があがった夜、安全カミソリをつかう。それを八重が大切に保存し、のちに殺人事件の証拠ちなってゆく。「女郎屋の安全カミソリなんて娼家にあがった客なら誰でもつかう。これが犬飼がつかったものだという情が移らんよ。どうするかねえ」・・おもいあぐねた吐夢の姿があった。・・私はごく自然に、「爪というのはどうですかねえ」と口にしていた。・・「ううむ~犬飼は大男だし、爪がつかえるかもしれんなあ!」そのつぶやきは、この私の案への賛意を示していた。』
なるほど、映画版では原作の安全カミソリが証拠品と示されていませんでした。映画では、客の為に切った爪をずっと大切に保管していた娼婦・八重(左幸子)の一途な思いを、警察取調べ室の味村刑事(高倉健)が名前を変え樽見となった犬飼(三國連太郎)に、次の言葉で投げかけ、犬飼を強く非難します。
『八重さんは、この十年間、この爪を、行李の底ふかく大事にしまっていたんです。片身はなさず、あなたの秘密を守っていたんですぞ。そんな八重さんをあんたは殺した!』
この瞬間に、この映画は原作をはるかに超えた不朽の名作となったのです。