人口減少、そして過疎化が進む道内市町村の街づくりをいかに進めるべきか?市町村の首長、並びに担当者が集ってフォーラムが開催されたところにお邪魔した。道内市町村にとって過疎化を克服しつつ街づくりを進めることは最大・最重要課題であるが、答えが直ぐに見つかる課題でもない、というところが本音だろうか??
11月15日(火)午後、札幌ビューホテルにおいて北海道、(一財)北海道建設技術センターが主催する「まちづくりメイヤーズフォーラム」が開催されたところをお邪魔した。
私は恥ずかしながら「メイヤーズ」という英単語を知らなかったが、mayorとは「市長」を意味するらしく、長じて市町村長が集まってのフォーラムということと理解した。
フォーラムの構成は次のようになっていた。
◇基調講演 「強みを活かした地域づくり ポストコロナ時代を見据えて」
北海道立総合研究機構 理事長 小高 咲 氏
◇特別講演 「ひとつのマチに拘らないデュアルライフの勧め」
(株)クリエイティブオフィスキュー代表 鈴井 貴之 氏
◇パネルディスカッション テーマ「ゼロカーボンなまちづくりを目指して」
〈事例紹介〉 □「デジタル時代の移住のすすめ」 伊達市長 菊谷 秀吉 氏
□「鹿追町が目指すゼロカーボンシティ」鹿追町長 喜井 知己 氏
※ 登壇者は講演された小高、鈴井の両氏と事例発表者の両首長の4名
コーディネーターは北大大学院教授の瀬戸口 剛 氏
最初に登壇した道立総合研究機構の小高理事長は、元日本銀行北海道支店に勤められたことが縁で転進された方だということだったが、日銀ウーマンらしく北海道の現状を統計した表を用いて炙り出そうとしたのだが、あまりにそれを多用するために私はすっかり聴こうとする気力が薄れ、理事長が何を強調されたのかさえ掴み取ることができなかった。
対して鈴井氏の特別講演は興味深かった。鈴井氏は現在、氏の故郷である赤平市と会社のある札幌市と、両市を行き来する生活を送っているそうだ。特に赤平市の方は、自ら原野を開墾して家を建てたという。都市の生活とは正反対な不便な生活環境であるが、だからこそ見えてくるものがたくさんあるという。都会生活を経験しているからこそ、不便を楽しむ、工夫することに充実感を覚えていると話された。この鈴井氏の講演は道内の市町村長に刺激を与える話だったのではないだろうかと思われた。
※ 鈴井氏は講演の結論として、参加した市町村長の方々に投げかけたと思われるのだが…。
事例発表の二つの市町は、最初の伊達市長は地域において高齢化の一層の高まり、そして70歳になっても働く人が増加した現状から、①高齢者が住んでみたい街、②女性・若者の働き甲斐のある街、③働く人が住みたい街をめざし、「伊達ウェルシーランド構想」を策定し、その具現化に取り組んでいると発表した。
一方、鹿追町は酪農を中心とした小さな町であるが、乳牛の糞尿を利用したバイオガス発電で知られる町である。現在2基のプラントが稼働しているが、さらに1基増設して鹿追町内全家庭の電力供給を目指していると発表された。さらにバイオマスで発生する余熱を利用し、ハウス野菜やマンゴーの生産、さらにはチョウザメの養殖も手掛け、いち早く「ゼロカーボンシティ」の実現を目指していると発表した。
その後のパネルディスカッションは残念ながら盛り上がったとは言い難い状況だった。その中で、鈴井氏が「市町村という壁を取り払い、近隣市町村が手を携えて課題解決に殿組むべきではないか」と発言されたのだが、その発言に対して首長さんや市町村職員の方々は、「近隣市町村連携はすでにさまざまな分野で取り組んでいる」的な発言が多く、鈴井提言を真摯に受け止めるのではなく、守り的な発言に終始している様がやや残念に思えた。
もう一つ気になったのは、この「まちづくりメイヤーズフォーラム」がすでに第10回目を迎えているというのに、参加している市町村が限られていることが気になった。正確な数は分からないがおそらく3割に満たない数ではないかと思われる。主催する側の熱意にもよるのかもしれないが、できれば多くの市町村が相集い、危機感を共有し、連携を強化して課題解決に取り組む姿勢を見たいと一道民として思うのだが…。