田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北方領土はどこへ行くのか??

2022-11-02 17:50:14 | 講演・講義・フォーラム等

 故安倍元首相がロシア・プーチン大統領との首脳間で「解決寸前か?」とも思われた北方領土の帰属問題は、今や元に復した感である。安倍外交を検証するとともに、今後の北方領土問題はどこへ行くのか?識者の話に耳を傾けた。

   

 このところ拙ブログはセンシティブ(扱いに細心の注意を要する)な問題についての投稿が多い。(昨日は例外として)私にとっては荷が重い話題ばかりである。できれば避けたいのだが、お聴きした講演・講義の内容については拙ブログで振り返ることを自らに課しているので荷が重いが敢えてレポすることにする。

   

 10月31日(月)夜、道新ホールにおいて「北方領土考 安倍政権の日ロ交渉とロシア展望」と題するフォーラムが開催され参加した。フォーラムは、北海道新聞が日ロ交渉について特集『消えた「四島返還」安倍政権 日ロ交渉 2800日を追う』を連載した記事がJCJ賞(日本ジャーナリスト会議)を受賞したことを記念して開催するフォーラムだと説明された。

 フォーラムは、取材する側を代表して道新東京報道センターの渡辺玲男記者が「北方領土交渉を追った10年」と題して基調講演を行った。

   

 講演で渡辺氏は、日本の主要メディアは北方領土問題についての関心が高くなかった点を指摘した。その上で、安倍政権の対ロ外交は官邸主導の外交交渉が一つの特徴だったと語った。そして、結果的に安倍政権の日ロ交渉は交渉が事実上決裂に終わったことで失敗と評価すべきではないかと指摘した。その要因として渡辺氏は次の3点において安倍政権には過信があったのではないかと述べた。その3点とは、①日ソ共同宣言への過信(1956年の日ソ共同宣言、1993年の東京宣言)、②首脳外交への過信、③タイミングへの過信、を挙げた。

   

続いて、千島歯舞諸島居住者連盟理事長の脇紀美男氏、笹川平和財団主任研究員の畔蒜(あびる)泰介氏、そして道新の渡辺記者の3人が登壇しパネルディスカッションを行った。 

脇氏は元居住者の一員として、北方領土はあくまで四島一括返還を堅持すべきであるとの立場を明確に宣言された。そして安倍氏に対しては、北方領土返還を実現させたいという熱意を感ずることができたが、結果はやはり評価できないとした。そして、元島民の高齢化が進む今、政府には全国民に対する啓発活動を今以上に力を入れ、ロシアとの対話の道を模索してほしいと切望された。

   

 畔蒜氏のことを私は良く知らなかったが、モスクワに滞在してロシアウオッチを続けた方で、プーチンに対して2度直接に質問をぶつけるなどロシアウオッチャーとして高名な方のようだ。その畔蒜氏は安倍政権の対ロ交渉を非常に冷静に見ていたふしが伺われた。畔蒜氏によると、プーチンは2014年のソチ五輪において安倍首相と会談した際に、「返還問題に期限を設けるのは有害である」、「日ロ間に条約を結ぶだけの信頼関係はない」と明言していて、それはロシアから見ると一貫した考え方であると指摘した。また、ロシア(旧ソ連)としては、戦後日本の中立化を願っていたが、1960年に日米の間で新安保条約が結ばれたことで日本がはっきりとアメリカ陣営の一員に加わったため、ロシア(ソ連)にとって北方領土問題は米ロ関係の中の問題とロシア(ソ連)側は意識するようになったという。このような畔蒜氏のお話を伺っていると、プーチンには初めから北方領土問題を解決しようなどという意識は薄かった(あるいは無かった)のに、安倍元首相が前のめりになり過ぎていたのでは、との思いが拭えないように思われた。

 現在、事態は一層混迷の度を加えている。本年9月、ロシアは1991年に日ロ間で合意した「ビザなし交流」を一方的に破棄すると通告してきた。それによると、①北方四島交流(ビザなし交流)、②北方墓参、③自由訪問、
の北方墓参だけはかろうじて破棄通告はなされなかったが、それすらも現状では現地へ直接は赴けない状況のようである。

 まさに暗澹たる現状である。安倍元首相としては、自らの手でなんとかこの難題を解決したいという強い気持ちで交渉に臨んだものの、老獪なプーチンは安倍元首相の熱意を一顧だにしなかったということだろうか?

フォーラムの結論は、ロシアとこの問題についての話し合いの道筋を閉ざさないよう政府、関係機関の努力を期待したいという願いながら閉じたという私の印象だった。

※ フォーラム開催中の写真撮影はNGだったが、開会前に会場内に流された映像をカメラに収めたものを掲載させていただいた。