田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 215 ゲッペルスと私

2018-08-01 17:03:09 | 映画観賞・感想

 第二次世界大戦下、ヒトラー率いるナチスドイツにおいてヒトラーの右腕とし辣腕を振るった啓蒙・宣伝相のヨーゼフ・ゲッペルスの秘書だったブルンヒルデ・ポムゼルが終戦後長きにわたる沈黙を破って当時の様子を語るドキュメンタリーである。撮影当時103歳というポムゼルの深い皺に刻まれた記憶が鮮明だったことに驚きをおぼえた。

                

 前夜、翌日の予定が特になかったことから「たまあには映画でも…」と思い、新聞の映画欄を見ていると興味深そうな映画を発見した。それが「ゲッペルスと私」というドキュメンタリーだった。

 

 7月31日(火)昼、ディノスシネマズ札幌でお昼の映画を楽しんだ(?)。

 楽しんだと記したが、はたして私は楽しんだのか?楽しんだというよりは、ポムゼルの独白を聞いて、ナチスの犯した罪の大きさ、愚かさを改めて教えられた映画だった。

                

              ※ ポムゼルが仕えたナチスドイツの啓蒙・宣伝相のヨーゼフ・ゲッペルス

 ポムゼルは103歳という年齢からくるものだろうか、それとも数奇な運命に翻弄され苦悩の半生を送ってきたからだろうか、彼女の顔に刻まれた深い皺の深さに驚かされた。その皺が白黒映画では陰影がくっきりとしていて、彼女を見続けることが辛いくらいだった。

          

          ※ 写真がいま一つ鮮明ではないが、彼女の顔全体に刻まれた皺です。

 ポムゼルは驚くほど記憶が鮮明だった。誰よりも近くでゲッペルスに接し続けた日々を彼女は淡々と語った。

 映画が撮られた時、終戦後69年を経過していたという。彼女は彼女自身が生きてきたこと何度も何度も反芻し、そして自分なりの結論を見出していたのだろうか?彼女は言う「あの時代にナチスに反旗を翻せた人はいない」と。そして彼女自身は「ホロコーストについては知らなかった」と語る。

 つまり彼女は、運命に引きずられるまま、たまたまゲッペルスの横でタイプを打っていただけで、彼女自身はナチスの犯罪には加担してはいなかったと言いたかったのだろうか?そうした彼女の独白を、映画を観た者はどのように受け止めるだろうか?

 私は?と問われれば、映画を観ている間ずーっと彼女に対するある種の違和感が私を覆っていた。

 

 映画はポムゼルの独白に挟むようにして、当時の記録映画が挿入されていた。ヒトラーの姿、ゲッペルスの演説、ユダヤ人収容所、等々…。

 私にはユダヤ人の死者を土葬する場面、戦後になって収容所から生還するユダヤ人の姿が映し出される場面は、スクリーンを正視することができないほどショックだった。

           

         ※ ドイツ軍の戦況が芳しくなくなってきたころに編成されたヒトラーユーゲントです。日本の学徒出陣と重なります。

 2017年1月、ポムゼルは106歳で人生の幕を閉じたということだが、彼女は前年の2016年に完成した映画を鑑賞したそうだ。そして彼女は言ったという。「自分のミステイクに気づいた」と…。そして彼女は“罪”とは言わなかったが「これは間違いだった。自分の間違いがわかった」と言ったという。

 この言葉が彼女の本音だろう。亡くなる前に心のわだかまりを吐露したポムゼルはきっと心から安堵して旅立ったことだろう…。