ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本が誇る“SPring-8”などの大型実験施設を十分に活用する話も伺いました

2012年07月27日 | イノベーション
 2012年7月24日編と25日編の2回にわたって、このブログでご紹介した「第1回 元素戦略シンポジウム」(7月23日に開催)を拝聴した話の続きです。

 このシンポジウムは、文科省が6月29日に「レアアースやレアメタルなどの希少元素を用いない、革新的な希少元素代替材料の創製を目指す元素戦略プロジェクト 研究拠点形成型の研究拠点4カ所を採択した」との発表を受けた“キックオフ・ミーティング”として東京都内で開催されましたた。

 4カ所の研究拠点とは、「磁性材料領域」「電子材料領域」「触媒・電池領域」「構造材料領域」の四つです。それぞれ10年間かけて、日本の産業基盤を革新する新材料を研究開発する計画です。

 4カ所の研究拠点は、基礎科学による材料の原理解明に基づいて新材料開発を行います。このため、各研究拠点は電子論グループと解析評価グループ、材料創成グループの3チームで構成する点が共通しています。この中で、解析評価グループは、日本が誇る“巨大な計測機器施設”を十二分に活用する戦略です。

 “巨大な計測機器施設”とは、SPring-8やJ-PARC、KEKなどのことだそうです。

 “SPring-8”とは、大型放射光施設(理化学研究所が施設者、運営は公益財団法人高輝度光科学研究センター)のことです。



 電子をほぼ光速まで加速した、世界最高性能の放射光を利用することができる大型実験施設です。兵庫県佐用郡佐用町にあります。“放射光”とは、電子をほぼ光速に等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波です。この放射光を用いると、先端材料の原子・電子の構造、極端条件下の材料物性などが解析できるそうです。整備費(建設費?)は1319億円かかったそうです。

 “J-PARC”とは、陽子加速器群と実験施設群で構成された大型実験施設です。



 J-PARCは、世界最高クラスの陽子 (1メガワット) ビームでつくり出す中性子、ミュオン、K中間子、ニュートリノなどの多彩な2次粒子ビームを利用できる点にあるそうです(「ミュオン」とは何かは……)。

 茨城県那珂郡東海村にあります。建設費は約1500億円で、運転・維持管理に1年間当たり約130億円とうわさされています。

 “KEK”は高エネルギー加速器研究機構という研究機構です。高エネルギー加速器によって、電子や陽子などの粒子を光の速度近くまで加速して高いエネルギーの状態をつくり出し、試料にあてて、内部を解析します。つくばキャンパス(茨城県つくば市)と東海キャンパス(茨城県那珂郡東海村)に大型施設があるそうです。

 元素戦略プロジェクト 研究拠点形成型の4カ所の研究拠点の解析評価グループは、こうした日本が誇る大型実験施設を活用して、材料の性能が発現する根本原理を探ります。そして、電子論グループは理化学研究所に設置されたスーパーコンピューター「京」(ケイ)などを利用した計算材料科学によって解析を図ります。

 解析評価グループによる究極の計測データと、電子論グループによる究極の解析データを付き合わせて、材料の本質にせまる計画です。日本が誇る基礎科学を支える大型実験施設を十二分に活用する計画です。日本が基礎科学分野に投資した資源を十分に活用し、日本の未来を切り開いてもらいたいものです。