ヒトリシズカのつぶやき特論

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リチウムイオン2次電池の後継となる新電池開発が重要との話を伺いました

2012年07月24日 | イノベーション
 文部科学省が2012年7月23日に東京都千代田区の学士会館で開催した「第1回 元素戦略シンポジウム」を拝聴しました。

 このシンポジウムは、文科省が6月29日に「レアアースやレアメタルなどの希少元素を用いない、革新的な希少元素代替材料の創製を目指す元素戦略プロジェクト 研究拠点形成型の研究拠点4カ所を採択した」と発表したことを受けた“キックオフ・ミーティング”として開催されたのものです。



 磁石材料領域などの四つの研究拠点は10年間かけて、日本の産業基盤を革新する新材料を研究開発する計画です。四カ所の研究拠点は、基礎科学による材料の原理解明に基づいて新材料開発を実施するそうです。

 その一つの「触媒・電池材料」材料領域は、拠点設置機関に京都大学を、その代表研究者に京大大学院教授の田中庸裕さんを選びました。その代表研究者の田中さんは、今回のシンポジウムで新しい触媒・電池材料の研究計画内容を説明されました。

 日欧米などで電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)の販売が本格化した結果、リチウムイオン2次電池の需要が急速に高まっています。こうした事態に対して、田中さんは「リチウム資源は今後供給不足になり、激しい争奪戦に陥る」と警告を鳴らしました。リチウム原料資源は、南米のチリに76%、アルゼンチンに8%と偏在するために、「リチウムイオン2次電池の需要がこのまま急増すると、大きな資源問題に発展する」と解説されました。

 こうした事情から、田中さんはナトリウム電池などの“ポスト”リチウムイオン電池の実用化を目指す研究開発を本格化させているそうです。希少元素フリーの高性能2次電池の候補電池として、ナトリウム電池、マグネシウム電池、空気電池などを挙げました。これらの候補電池の電池反応を探索する理論計算科学をまず追究し、理想的な正極材料と負極材料を見いだす研究開発を始めたところだそうです。

 ナトリウム電池の研究開発では「多電子反応や有機分子反応などを追究すると同時にイオン液体などの電解液の機構を解明する」そうです。2017年にはリチウムイオン電池の性能を上回る、ナトリウム電池実用化のメドをつけ、事業化の道筋を示す計画です。

 文科省は触媒・電池の元素戦略研究拠点に毎年度ごとに7億円の研究資金を提供し、日本が高性能電池で世界をリードする基盤技術を構築する構えです。ライバル各国の追従を許さない研究組織の確立によって、高性能電池分野での産業育成を図ると説明します。

 革新的な“ポスト”リチウムイオン電池の研究開発が進むことを願うばかりです。