ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本でも大手企業からベンチャー企業への人材流動が実は起こっています

2012年07月02日 | 汗をかく実務者
 先日、主にWebサイトのニュースなどから、法政大学発ベンチャー企業のTrigence Semiconductor(東京都千代田区)が米インテル社の投資部門であるインテルキャピタル(Intel Capital、カリフォルニア州)から出資を受けたと、2012年5月29日に発表したことを知りました。

 このニュースは、独自技術の事業化を図っている日本の技術開発型ベンチャー企業を、米国のベンチャーキャピタル(VC)が“目利き”機能を発揮して支援する投資をしたという点で、話題を集めました。

 たまたま、Trigence Semiconductorの社長の安田彰さんと取締役開発部長の岡村淳一さんのお二人に、あるベンチャーキャピタルの勉強会でお目にかかったことがありました。「同社の事業展開などのお話を伺わせてください」と、お願いしたところ快諾をいただき、出かけました。





 ただし、インテルキャピタルからの投資額や今後の事業計画なの具体的な内容は、「当社とインテルキャピタルは公開しないことで合意している」とのことで、この話はできないとのことでした。

 Trigence社は、デジタル家電やパソコン、車載用オーディオシステム向けなどのデジタル・オーディオ技術の研究開発を基にしたスピーカー事業を展開しています。同社のコア技術は、デジタル・アナログ信号処理技術の「Dnote」で、“デジタル”スピーカーにデジタル信号を直接入力して駆動させて音を出すハイテク技術です。



 従来技術に比べて、低電圧で低電力で音を発生させることができる点が注目を集めています。

 同社社長の安田さんと取締役開発部長の岡村さんは、それぞれ大学院を修了後に、東芝に入社し、半導体の研究開発に従事します。東芝は大きな電機メーカーだけに、二人は東芝では事実上、顔見知りではなかったそうです。

 安田さんは、デジタル・アナログ信号処理技術のユーザーと直接向き合いたいと考え、2000年にAD/DCコンバーターの専業メーカーである米バーブラウン傘下の日本バーブラウンに転職します。2001年に米国テキサスインスツルメンツ(TI)がバーブラウンを買収したため、結果的に日本テキサスインスツルメンツの社員になります。

 2001年に、安田さんの母校である法政大大学院理工学研究科の半導体研究室の教員公募に応募するように薦められ、無事採用されます。この結果、法政大大学院の教員として、半導体のアナログ・デジタル回路技術などの研究を始めました。

 岡村さんは、あるLSI系シンポジウムで、ザインエレクトロニクスの飯塚社長と知り合いになります。飯塚さんは、以前に東芝の半導体事業本部の幹部だった経歴から、顔見知りでした。飯塚さんからの「当社に来ないか」というお誘いに自然に反応したそうです。その後、法政大教授の安田さんと知り合いになり、ベンチャー企業の創業を目指します。

 日本でも大手企業からベンチャー企業に人材流動が起こっていることが確認でした点が一番の収穫でした。日本の社会は底流では変化をし始めています。