まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『レベッカ』“ヒタヒタ”とやってきます

2008-07-14 00:01:08 | イギリス・アイルランドの作家
REBECCA 
1938年 ダフネ・デュ・モーリア

『レベッカ』ってなんとなく可愛らしい物語の予感、と思いきや、怖いわあ

おどろおどろしい場面や、血みどろの殺戮シーン、幽霊、ゾンビ
それら恐怖を呼び起こす物が何ひとつ出てこないのに、この怖さったら…
“ヒタヒタと押し寄せる”とはこのことですね。

物語は、身寄りのない “ わたし ” がモンテ・カルロで
名高いマンダレイ館の主、マキシム・デ・ウィンターと結婚して
館の女主人になったことから始まります。

マキシムは、館同様に名高かった女主人レベッカを亡くしていました。

“ わたし ” の悲劇は旅行を終えて館に戻った日からスタートします。
なにしろ使用人から隣人、家具調度から飼い犬に至るまで
前妻である、美しく優美で知的なレベッカの影を引きずっていて
二言目には「レベッカは」「レベッカなら」のオンパレード。
たまりませんよね

神格化された人の後がまに座るって大変!!
ダイアナの後のカミラとかさ、エビータの後のイサベル・ペロンとか
よっぽど神経が太くないとやってられないと思ったりして…

“ わたし ” は不器用ではにかみやだったために、すっかりレベッカの幻影に怖じけずいて
うまく自分を主張できません。
夫のマキシムさえもレベッカがが忘れられないのだと思って悲嘆に暮れます。

特に誰が怖いって、デンヴァース夫人ていう人!
レベッカを崇拝して止まない召使頭の女です。
この人がいるぐらいなら召使いなんていない方がいいでしょってくらい怖いのです。
『家政婦は見た』の比ではありません。何もかもお見通しですもの。
この人は徹頭徹尾、“ わたし ” につらくあたります。

しかし、一隻の船の難破から、溺死したレベッカの船が発見されて話は急展開。
レベッカの本当の姿が明らかになり “ わたし ” とマキシムは初めて分かりあえるのですが…
ガーン!衝撃の結末。

この物語、とても面白いのですが、ただひとつ残念なのは
主人公の “わたし” に魅力があまり感じられないことでしょうか?

作中、誰もがレベッカの後になぜあの人を選んだのか? という疑問を抱いていましたが
その気持ちはわからないでもない…
おずおずしすぎだし、ネガティブな妄想しすぎだってば。
勝手に他人が自分を悪く言っていると想像しちゃって泣かれても困ります。

レベッカとの対比のためかもしれませんが、キャラクターがぼんやりしていて
肩入れができなかったです。

あれかしら?
前の奥さんが派手すぎたから反動で地味な人にいっちゃったてことかしら?
とにかく気が優しい控えめな人を欲していたということでしょうか?
そうでないと説明がつかないのよね。

レベッカ〈上〉新潮社


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最新版は装丁が可愛らしくなっていますね。まずは上巻を
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『どん底の人びと』ロンドンが見たロンドン

2008-07-13 20:02:50 | アメリカの作家
THE PEOPLE OF ABYSS 
1903年 ジャック・ロンドン

紛らわしいけどジャック・ロンドンはアメリカ人です。
その J・ロンドンが、貧民街をレポートするために潜り込んだのが
天下の大英帝国の首都、ロンドンのイーストエンドです。

この本が書かれた当時は、イギリスが主役だった産業革命はすでに過去の話で
アメリカやドイツが台頭した第二次産業革命の直後でした。

彼は貧民街で、一部屋に数人で暮らすひもじい人びとを目にします。
何十年も休みを取ったことがない汚い女、公園でパンのために体を売る女
公園の開門を待って雨の街を夜中じゅうさまよう老婆を目にします。

ホップ農場、息の詰まる作業場、波止場、酒場で
その日の賃金を貧しい食事に費やす人びとの話を聞きます。

救世軍の給食所、浮浪者収容所で小羊のように卑屈な態度の浮浪者を見て
横柄な世話人の対応と不衛生な環境や、浮浪者を陥れる不毛なシステムを体験します。

英国の労働条件・賃金・保障・自殺・一家心中・子供の死亡率などのデータを挙げ
英国の労働政策・貧民対策・金持ちの矛盾した慈善を鋭く批判し
貧しさが代々受け継がれて行く社会構造の危険を説きます。

イギリスはこの本の出版時、かなりナーバスになったとみえて
(そりゃあ、成り上がりのアメリカ人にこんなこと書かれちゃね、あくまでも当時ね)
アメリカでの好評ぶりに対して「大げさに書いている」と反論した模様です。
しかし、少しは懲りて改善されたんでしょうね?と思いたいところ。

ただ、この本の30年後に書かれたジョージ・オーウェルの
『パリ・ロンドン放浪記』によるとあんまり変わってないようなのですが…

日本も格差社会と言われて久しいですけど、いつかは解決するのでしょうか?
それとも拡大するとこういう社会がやってくるのかしら?

どん底の人びと―ロンドン1902 岩波書店


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『嵐が丘』メロドラマの王道はここに…

2008-07-13 16:44:03 | イギリス・アイルランドの作家
WUTHERING HEIGHTS 
1847年 エミリー・ブロンテ

D・H・ロレンスが自分の恋人に読むことを禁じていたという『嵐が丘』
当時としてはセンセーショナルだったんでしょうが
読んでいるうちにぐいぐい引き込まれてしまう気持ちは今も昔も変わらぬはず
その頃の皆さんも夢中で読んだことと思います。

ヨークシャーの荒野に建つ、“嵐が丘”と“スラッシュクロス”という
二つの家によってのみで起こる出来事がこんなにドラマティックでよいのでしょうか?

昔ブレイクした赤いシリーズ、愛の劇場、そして韓流、と
現代にも通じるメロドラマの王道がここにありました。
生い立ちの秘密と人間関係の複雑さ、激しい愛、家柄による結婚、復讐、と
ドラマ的要素てんこ盛りです。

ヒースクリフは幼い頃ミスター・アーンショーに拾われ娘のキャサリンと愛し合います。
しかしキャサリンが家柄の良いエドガー・リントンに嫁いだため家を飛び出しました。

ここからヒースクリフは復讐の鬼になります。
金持ちになって戻って来てエドガーの妹イザベラをまんまと手に入れ
自分の息子(ヒースクリフ)とキャサリンの娘(キャサリン)を結婚させて
若き日の恨みをはらそうとします。

しかし自分が描いた復讐を終えても、ヒースクリフの気持ちはおさまることはありません。
そればかりかさらに苦しみを増していきます。

この物語、都会からやってきたロックウッドがスラッシュクロスを借りて
復讐を成し遂げたヒースクリフと嵐が丘で出会ったところから始まります。

なにか異様な雰囲気を感じ取ったロックウッドに過去の話しを聞かせてくれるのが
ずっとキャサリンの娘に仕えてきた忠実な女性エレン・ディーンです。

エレンのキャサリンを思う気持ちと正直さが
この激しい物語の中で小さな救いになっています。

さすがによくできたドラマだけあって、数多くの舞台公演があり
映画は海外、日本含め山のように製作されているので
内容は知っている人も多いかと思いますが、本ならではの怖さがありますよね。
じーっと見つめる目の表情とか、ヒースクリフの顔色とか。
もちろん映像には映像の魅力があるでしょうが…

で、ドラマはどうかな?とWikipediaで調べたところ
『愛の嵐』『新・愛の嵐』で昼ドラに登場したそうです。
どうでしょう? 昼ドラでこの物語の背景をカバーしきれるんでしょうか?
しかも石原良純がネグリジェ着たってどういうことですか?
お笑いじゃないかっ

大金を投じたザ・ドラマ! みたいな感じで制作していただけると嬉しいですね。

しかしこの本の恐ろしさは、エミリー・ブロンテその人にある感じ。
牧師館で静かに暮らす未婚女性が書いたというのが想像つかない…
ものすごい想像力と観察眼を持っていたとしか思えません。
30歳にして亡くなってしまうとは、本当に惜しいことです。

嵐が丘 新潮社


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こちらは1冊になってますね
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『白痴』大音響小説

2008-07-13 15:14:14 | ロシアの作家
ИДИОТ 
1868年 フョードル・ドストエフスキー

世の中に、しーんと心にしみ入る小説があるとしたら
『白痴』はなんと騒々しい小説でしょうか?
もう、アナーキーでデストロイでレボリューションってなくらいの大音響

ざっくり言えば、2組の男女の恋がどうなるかしら?っていうお話ですが
そこは社会にもの申すドストエフスキー、たくさんの社会的問題をとりあげていて
話しが複雑になりすぎちゃったんじゃないかと…

誰が主人公?ってくらいたくさんの人物が登場するんですけど
どいつもこいつも喋るったらありゃしないわけです。
「それ、必要ですかね?」ってことまでページを裂いて喋りまくり
私はロシアの方々って“寡黙”で“冷静沈着”っていうイメージがあったんですけど
考えが少し変わりました。

それはさておき
主人公は、スイスの精神病院を退院してロシアに帰って来たムイシュキン侯爵という
汚れを知らぬ子供のような心の青年で合ってるんでしょうね?
彼が、ナスターシャとアグラーヤという二人の女性を好きになってしまい
ナスターシャを愛するラゴーシン、アグラーヤを愛するガヴリーラなどが入り乱れて
不幸な結末をむかえる、というお話です。(すごくはしょってます)

とにかく、愛し合う男女がくっついたり離れたりを激しく繰り返す物語で
次第に「もう、どうでもいい…」という気分になってきてしまいました。
愛しているなら素直になればいいじゃない?
なにもわざわざ奇抜な行動に走らなくたっていいと思うんですけど。

もしかして、それが名作を書くコツなの?

主役・準主役級の人たちでさえ、かなり軌道を逸しているというのに
その他にも、どこか興奮気味なたくさんの人々が登場して
主義だの主張だの、自分の不幸な境遇、死んでやる!という
聞いてて楽しくも嬉しくもないことを、延々と喋り続けるわけです、いやでしょう?
これだけの登場人物の中で、私がまともな人に思えるのは3人くらいでしょうか。

最後の最後にムイシュキン侯爵は、再起不能に陥り
再びスイスの病院に戻るわけですが、その気持ち分かります。
毎日いろいろな人がやってきては、あんなにイライラさせられちゃあねぇ。
早く余所に行ってしまえばよかったのに…

たぶん、ムイシュキン侯爵の美しい人柄を描くためだったのでしょうが
なんか、腹立たしいエピソードが盛り込まれすぎてると思います。
物語の面白さ云々より、台詞ひとつひとつに腹をたててしまうようになって
読み通すのが大変でした。

人間の奥底や深層なんか垣間見えなくていい、深遠な思想も理解できなくていい
バカと言われてもいい… もう少し気軽に読める物語が好きです。
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トイレにトイレ

2008-07-12 22:54:26 | 鉢植え
白花かすみ草がどわっと咲いたので
少し切っておトイレに・・・
先日取り付けた棚に置いてみました。
奥に見えるのは小さなバスルームです。

棚が出来たのでとりあえず置いてみた。
もう少し手を入れるつもりです。
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『オリエント急行の殺人』豪華俳優陣がちらつく

2008-07-12 22:11:17 | アガサ・クリスティ
MURDER ON THE ORIENT EXPRESS 
1934年 アガサ・クリスティ

題名のとおりに、オリエント急行の中で起こる殺人事件を
たまたま乗り合わせたエルキュール・ポアロが調査する、というお話し。

“銀河”とか“はやぶさ”で起こるのとはわけが違うのでございます。
なんたって“オリエント急行” ですからねぇ。
風情があるなあ

殺されたのはアメリカ人で、実はスゴい悪人でした。
客車にはその日、14人の乗客と、オリエント急行の会社の重役
それからポアロと車掌が乗っていました。
ポアロと重役、あと捜査に加わった医者は別として、容疑者は13人。
彼らにはもちろんもちろん アリバイがあります。
それに、誰もが疑わしく思える証拠品がわんさか残されてるし。

まあ、犯人については割と早い段階で分かってしまいましたが、それは置いといて…
私は『オリエント急行殺人事件』の映画を見すぎたばっかりに
読んでても配役の人とだぶっちゃって
ミセス・ハバードはローレン・バコールが
グレタ・オールソンはイングリット・バーグマンが
話しているようで二度おいしい読書ができました。
なにしろ映画は豪華キャストで・・・(ショーン・コネリーはよくOKしたもんだ)

本では、たぶんミセス・ハバードは、もう少しおまぬけな感じがしないでもないんですが…
バコールったら何やってもクールでさぁ。
でもミセス・ハバードの正体が正体なだけに許す!

ポアロはどの作品でも「絶対に殺人犯を許さない」と公言してはばからないのですが
この事件に関しては自分の信念を曲げて犯人を許します。
この結末は、今の時代だと難しいかもしれないけど・・・

映像もいいけど、活字はより心理劇が楽しめます
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コスモス 咲きました

2008-07-12 17:18:52 | 鉢植え
一休みで鉢植えのはなし。

コスモス成長速し!
びゅんびゅん伸びて花が咲きました。
緋色コスモスっていうからもっと赤いのかしらと
思ってたけど、わりとオレンジですね。
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『家なき娘』恐るべき12歳

2008-07-07 00:17:29 | フランスの作家
EN FAMILLE
1890年 エクトル・マロ

いやはや、子供が読むものだと侮っていてはいけませんね。
『家なき子』の姉妹本ということで、すっかり甘く見ていました。
『家なき子』は読んでないけど、カルピス劇場とかでやってそうな
やつでしょー? のんきそうなアニメの。
うーん『家なき娘』の主人公は大人っぽいぞ、12歳ですけど。

両親を亡くしてしまったペリーヌが、パリを発って
父を勘当した大富豪のお祖父さんを訪ねて行くのですが、
子供とは思えぬ判断や忍耐力で旅の危険を切り抜けて
祖父の地所があるブローニュ地方の村にたどり着きます。

しかし、ただ訪ねて行った訳ではないのです。
ペリーヌの父は、母と結婚したことから勘当されたので
「すぐに名乗り出てもだめかも」、と思った彼女は
とりあえず祖父の工場で働きながら様子をうかがおうとします。
まずは、面接 及び 下宿の家賃交渉をこなしますよ 12歳で。

工場でアクシデントがあって、すぐ通訳に抜擢されたペリーヌは
持ち前の知性と思慮深さで、邪魔をしようとする工場の監督や
祖父の甥たちをおしのけて、どんどん祖父の信頼を得ていくわけ。

ところが、とうとう祖父が息子(つまりペリーヌの父ね)の死を知ってしまい
がっくりきて急激に衰えていきます。

ここで奮起したペリーヌ、祖父を力づけ、説得して新たな生き甲斐に着手させることに成功。
その説得材料って言うのが、スゴすぎるんですけど・・・
工場の職場環境の改善 ですと  12歳で!

ペリーヌの助言を聞き入れた祖父は、娯楽施設や託児所を設立したり
職員用の下宿の衛生を良くしたりとするうちに元気を取り戻し
最後はペリーヌのことが孫だと分かってめでたしめでたし
でも、すごいでしょ? ペリーヌ、12歳。

まあ、何か国語も操れるっていうのは家族で世界中を放浪してたから分かるとして
思慮深さ、慎み深さは子供じゃないし
甥や監督の謀略や、叔母たちの腹の底まで見抜けちゃう。
下宿を出た後は一人で生計をたてて、食料も自分で調達するし
社会問題への意識も高いって、いったいどんな子なのぉ?
そばにいたらものすごく助かるかもしれないけど
ぜったい可愛くない、ませた子だと思うなあ
コメント (2)
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『ダブリン市民』小さな街の片隅にも

2008-07-06 23:23:41 | イギリス・アイルランドの作家
DUBLINERS 
1906年 ジェイムズ・ジョイス

私はこの本を何度読みかえしたことでしょう。
ご覧の通りボロボロです。

ダブリンに暮らす人々を愛情深く描いた佳作がつまった一冊。
全部全部たまらないんですが、特に好きだった話を3つ挙げるとしたら

『土くれ(Clay)』
洗濯屋で働く老女マライアは、昔子守りをしたジョウの一家と万霊節を過ごすため
1日の仕事を終えていそいそと出かけます。
道中子供たちへのおみやげに買ったプラムケーキを無くしてしまいましたが
ジョウの一家は温かくもてなしてくれました。

マライアの一つ一つのしぐさや表情にいちいち泣ける私です。
彼女は幸せなのかしら? 不幸せなのかしら?
現代のものさしでは分からないけど、幸せだと思いたい。

『死せる人々(The Dead)』
ケイトとジューリアの老姉妹が催す、恒例の古き良きクリスマスパーティーに
甥のコンロイが妻のグレタと訪れます。
微笑みと喧噪が入り交じるダンスや昔ながらの晩餐の後、幸福感に包まれて
ホテルに戻ったコンロイでしたが、グレタの思い出話に怒りを覚えました。

とことんノスタルジックなパーティー模様が描かれた前半と
パーティーの後、妻に過去の恋人の思い出を聞かされ
苦悩する夫を書いた後半からなる一篇で、ふたつの物語を読んでいるようです。
過去の人のことでそんなに悩まなくても・・・
死んでしまった人の美しい思い出には勝てませんからね。

『下宿屋(The Bording House)』
下宿屋のやり手女将ムーニー夫人は娘ポリーの様子がおかしいと気付きました。
相手は商店に勤める宿泊人のドーラン氏です。
ムーニー夫人は頃合いを見計らってドーラン氏に話しをつけることにします。
その頃ドーラン氏は部屋で不安のために震えていました。

若い娘のちょっとした優しさに惹かれて手を出したために
結婚に追い込まれる真面目な事務員の話です。
男の“やられちゃった感” がひしひしと伝わります。
押しの強い母親と、乱暴者の兄が控えてる娘なんだから最初に考えておかないと…

エピソードは他愛無いものですが、石造りの家のぼんやりと灯りが点る窓の
ひとつひとつに物語が潜んでいるようでわくわくします。
ダブリンという町がなにやら特別なところに思えてくるんです。

一つ一つの短い話の中で、登場する人の人物像がありありと浮かぶあたり
短篇はこうでなきゃ!と納得の一冊。

ダブリナーズ 新潮社


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『劇場』女優魂サクレツ

2008-07-05 21:20:47 | イギリス・アイルランドの作家
THEATRE
1937年 サマセット・モーム

モームの作品は無条件に受け入れてしまう私。
そんな中でも『劇場』は本当に面白い一冊です

物語の舞台はロンドンにあるシドンズ座という劇場です。
この劇場はマイケル・ゴセリンという元俳優のハンサムな支配人が経営しています。
看板女優はマイケルの妻で、衰えを知らない美しさのジューリア。
二人三脚で名声を追い求めるナイスカップルです。

しかし、ジューリアも40歳を越えました。
自分の美貌が衰え、崇拝者が減ってしまうのではないかと心配になります。

そんな時、若き計理士トマス・フェネルが現れ、ジューリアに熱烈に恋します。
遊びのつもりで相手をするジューリア…しかし次第にのめりこみ…

あらすじだけ書くとありがちな話しっすね!
でもがっかりさせませんよ。

何がすごいって、一芸で生きていけるうぬぼれた女はあっぱれだね!!
美しいままで生きることと、男に崇められること
そして一番であることのみに邁進するジューリア、人生の苦労はそれだけです。

若い男、トマスを惹き付けてモノにするためには?
そして彼がウツツを抜かした若い女優をぺちゃんこにするには?
全編通して彼女が真剣に考えたことってこれくらいです。
息子の将来より重大です。

旦那様マイケルは、ある意味見上げた人です。
演出家の自分と看板女優の妻の立場をよくわきまえていらっしゃる、公私ともにね。
全ての女優の夫にマイケルを!!

息子がジューリアに
「トマスはママが付き合うような男じゃないですよ」的なことを言うシーンがあります。
確かにそうかなとも思うし、まぁお似合いかかもね、とも思うけど
とりあえず、この親で立派に育ちました、息子よ。
自分より恋人にうつつを抜かす母親を気遣うなんて偉すぎる。

結局ジューリアは勝ちますよ。
何に勝つかとお思いですか? 全てに!です。
ブラボー! と拍手をおくりたくなるラストです。

モームの小説に出てくる女主人公の中には、あっけらかんと浮気をする
ジューリアタイプの女性が結構います。
たぶん、モームはこのタイプが好きなんでしょうね?
モームが書くと悪人に見えないもの。

劇場 新潮社


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『マノン・レスコー』とんだバカップルもあったもので

2008-07-05 20:05:56 | フランスの作家
HISTOIRE DE MANON LESCAUT 
1731年 アヴェ・プレヴォー

読んだ本を忘れないために、感想をつらつらとノートに書きためていたら
けっこうたまってきたので、どれどれ、流行のブログでも・・・
と軽い気持ちで初めてみました。

とりあえずお断りしておくと、時代背景、作家の意図なんて
まったくもって無視です。
あらすじは、粗いにも程があるでしょ、というぐらいはしょってますので
本を読まないと分からないと思います。
真面目な書評だと思って読まれた方、申し訳ありません。

さて『マノン・レスコー』。

なぜこれを一冊目に挙げてしまったかというと、先日行った恵比寿の有隣堂で
打ち出し中の『岩波文庫フェア』にこれが入っていたからですが
私は“なんで?”って思ったわけです。『名著・名作再発見!』って?

私にはこの話、あきれた話にしか思えないんですがっ。
会ったその日に駆け落ちしちゃうってどうでしょう? しかも17才。
しかも所持金450フラン、数週間パリで暮らせるぐらいの金額だったらしいけど
それが無くなったら親戚に手紙を書くつもりだったんですって。

贅沢に目がくらみ、隣の部屋の男から始まって言い寄る人にフラフラと行っちゃう
マノンはさておき、その彼女と一緒にいるために友人裏切る、借金踏み倒す、老人騙す、
縛って監禁する、人を殺す、って・・・とんだ悪人じゃないの? シュヴァリエ。
それなのに、この男がきれいな顔をしてるもんだから、しかもボロボロ泣きながら
悲劇のように語るもんだから、聴き手の男(作者)も「涙が押さえきれない」とか言って
お金渡したりするんですけど。
大人ならちゃんと言ってあげなくちゃでしょうが! と思います。

だいたい、マノンは仕事とは言えないけど
カラダを資本にして頑張ってるだけ偉いじゃないですか?
それに引き換えシュヴァリエはマノンのことばっかり考えてて仕事しませんからねっ!
一緒にいたいなら働きましょう。

この二人は、お金を貸してくれたり、脱獄に手を貸してくれたりという、
すごいお人好しが周りにいたおかげでなんとかなっていたんですが
やはりすごいのは、流刑になったマノンにのこのこついて行ったシュヴァリエを
アメリカまで迎えに行っちゃった友人のチベルジュでしょうか? 
この人は貸したお金も返してもらってないのに

二人はアメリカでも首長に気に入られ優遇されて召使いまで雇ってました。
美しいって、すごい武器だ!
しかし、美しさのゆえに首長の甥に目をつけられてしまったことから
二人には悲劇が訪れます。

作者は「恋愛悲話」と書いてらっしゃいますが、どうでしょう?
さんざん好きなことだけやって、身を滅ぼす恋を悲恋とは言わないと思いますが…
私は「身から出たサビでしょー!!」と言いたい。

マノン・レスコー 新潮社


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私はおすすめしないんだけど、各社から出版されているところをみると
名作なんでしょうーねー。
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