まりっぺのお気楽読書

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『子どもたち・曠野』なにやら雄弁なチェーホフ

2011-01-23 01:22:34 | ロシアの作家

アントン・チェーホフ

チェーホフ大好き! な私ではありますが、実はこの一冊はあまり入り込めませんでした。
初期のお話しを中心に集められた短篇集なのだそうです。
語りかけたいことがたくさんあったみたいです。

いつになく宗教や神様に対する言及が多い気がして、宗教観の薄い私のような者には
読んでいて弛んできてしまう物語が多い気がしました。

11話の短篇と1話の(長めの)中篇が収められています。
気になった物語をいくつかご紹介します。

『聖夜/1886年』
復活祭の夜、信心深い見習い修道士イエロニームの渡し舟で礼拝式に向かいました。
イエロニームは修道補祭の死を悲しみ、彼の讃美歌をこよなく愛していたと言います。
礼拝式で説教や讃美歌をありがたがる様子もない祭り気分の修道士を見て
黙々と舟を渡しているイエロニームの姿を思い浮かべました。

宗教に疎い私でも、イエロニームの敬虔さには心打たれます。
昔から宗教指導者の中には私利私欲に走る人がいないわけじゃないですけどね…
彼のような人に指導者となってほしいものですね。

『ワーニカ/1886年』
靴屋の奉公に出された9歳のワーニカは、クリスマスの前夜
皆が出かけてひとりぼっちになった部屋でおじいちゃんに手紙を書きました。
どんな手伝いでもするから迎えにきてほしいという手紙です。

おじいちゃんにも止むに止まれぬ事情はありましょうが9歳ですよ、本当に可哀想。
この手の物語でいつも思うのは、奉公先の人が酷いことなの。
特におかみさん、子どもに対してどうしてそうかな? 嫌いなら預からなきゃいいのに…

『ロスチャイルドのヴァイオリン/1894年』
金のことばかり考えている棺桶屋兼ヴァイオリン弾きのヤーコフの妻マールファが
病にかかりあっという間に亡くなってしまいました。
ヤーコフは結婚から52年、マールファを一度もいたわったことが無かったと考えます。
しばらくすると自分もマールファと同じ病にかかりました。

死んだ後で後悔したって遅いのよ! といつも思うの。
私たちの両親世代は今より亭主関白だったり横暴なお父さんが幅をきかせていたのでね。
たぶん愛はあるのでしょうが、ちゃんと態度で表していただきたい、と思うのは
女のわがままでしょうか?

表題の『曠野』は、9歳のエゴルーシカが学校に通うために母と別れて
商人の伯父と神父に連れられ曠野を旅する道中を描いた素朴なお話しです。
なんですけど、どうも書きたいことが多かったみたいで
子どもがだらだらと日記を書いたみたいな有様になっちゃってます。

でも、そのとりとめのなさが子どもの不安を表しているみたいに思えるし
旅のエピソードもパラエティに富んでいてけっこう面白く読めました。
短篇集に入ってるにしちゃあ長いので少し中だるみは感じましたが
チェーホフらしさが随所にあって、最後にしんみりできるいいお話しでした。

チェーホフもモーパッサン的に書いている小説の内容が幅広いですよね。
岩波文庫はテイスト別にまとめて下さっていたような気がするんですが
この本はけっこうなんでもありな気がします。

チェーホフの短篇集を最初に読むなら、私としては新潮文庫
岩波文庫の『カシタンカ・ねむい』がおすすめかなぁ…

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