まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『女嫌いのための小品集』悪意の泥沼に片足つっこむ

2011-01-28 01:39:26 | アメリカの作家
LITTLE TALES OF MISOGYNY 
1975年 パトリシア・ハイスミス

例によって大掃除中にパトリシア・ハイスミスの本を何冊か見つけました。
読んだ覚えが有るような無いような…いったいどうして買ったのかよく分かんないのですが
とりあえず短篇から手をつけてみました。

何ひとつ優しさや愛が感じられない17篇の短篇がつまった
マグロを保管する冷凍倉庫のように冷たい一冊です。

とにかく、登場人物がバタバタ死にます。
そこに憐れみや酌量はありません、スパッと死にます。
さらになんのエクスキューズも説明もありません、当たり前のように死にます。

女嫌いのための、とわざわざ書かれています。
確かに主人公は皆一癖も二癖もある扱いにくそうな女性ばかり…
でも、男性から見た嫌な女なのか、女性から見た嫌な女なのか、決めかねています。

いくつかご紹介しますね。

『寝たきりの女(The Invalid,or,The Bed-Ridden)』
クリスティーンは狙った男フィリープを繋ぎ止めるため、事故を装って寝たきりになります。
けれども休暇でカンヌに行くときだけは元気になりました。
「ぼくのせいで…」と言い続けていたフィリープも疑問を抱きます。

よく似たお話しに、モームの『ルイーズ』というのがあるんですけれどもね。
騎士道精神で、か弱い女性を守らなければいけないと考えている男性の心理を
逆手に取った上手い作戦…現代では通用しそうにないですね。

『芸術家(The Artist)』
熱烈な芸術愛好家ジェーンは、まず絵画、次にダンス・声楽・彫刻と
対象を次々に変えては没頭していきます。
夫のボブは彼女が通う芸術学院を憎悪するようになり「爆発すればいいのに」と考えます。

これは人ごとじゃないのよね…私も凝り性なもんで。
けっこう旦那さんをほったらかしにしていたりするんですけど
こんなこと考えてないでしょうね?

『動く寝室用品(The Mobile Bed-Object)』
男に買われたり下取りに出されたりしながら食事と住処をまかなってきたミルドレッドも
23歳になり、将来に不安を覚え始めました。
そんな時現れたサム・ザップは天からの授かり物のような男性でした。

女性であることを武器にして生きていけるのはいくつまでだろう…
王の愛妾・寵姫シリーズを書く時にいつも思うんですが
男性に愛されるようになるより、その愛を長く続かせる方が大変そうです。

他にも、男性から言い寄られて困っているコケットや、女流作家、ダンサー、
平凡な主婦、次から次へと子供が生まれる母親、娘夫婦に遠慮する母、などなど
いろいろな女性がターゲットになっています。
どの話しも主人公(あるいは相手の男)がバッサリやられてます。

一篇はとても短く、さら~っと現象だけを書いているようでいて
実はものすごい悪意を漂わせている気がするわ。

好きじゃないかな…
だけど、一度は面と向かって誰かに言ってみたい
「あんたみたいな女はロクなもんじゃない!」というシチュエーションが揃っていて
溜飲を下げる効果は(ちょっと)ありそうです。

ヌルヌルの中に足を入れたらなんだか気持ちいい…そんな感じの一冊でした。
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