まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『ジゴロとジゴレット』エゴと美学は似ている

2009-05-05 23:49:10 | イギリス・アイルランドの作家

1940年 サマセット・モーム

5篇の物語が収められた小作品集です。
最初のエピソード以外は男性のエゴが感じられる物語だと思います。
それを自嘲しているのか美学と捉えているのか、ちょっと分からないですねぇ…

さくさくっと全篇ご紹介します。

『3人の肥った女(The Three Fat Women of Antibes)』
共にダイエットに励む仲のよい3人の女たちに、ひとりのスレンダーな女が加わります。
彼女に飲むわ食べるわを見せつけられるうちに、3人はお互いを憎み合うようになります。
痩せた女は唐突にいなくなりましたが、その時3人は…

悪気はないのでしょうが「そんに食べるのになんで…」とムカつくことはありますねぇ。
スレンダー女性はもう少し3人を思いやってほしかったですね。

『良心的な男(A Man with a Conscience)』
流刑地で会った知的な好青年が犯した罪は妻殺しでした。
彼は幼なじみと同じ女性を愛してしまい、自分のものにするために友人を裏切ったのです。
せっかく愛する人と結ばれたというのに、彼は後悔の念に苛まれます。

まったく自分勝手な理由で殺されてしまった新妻の無念を考えると許せませんね。
いくら知的で気持ちがいい模範囚の好青年だとしても
「それがどーした!」と言わせていただくよ。

『掘り出し物(The Treasure)』
独身生活を謳歌する裕福な男性が完璧な女中を手に入れました。
彼女のきりもりのおかげでまったく申し分ない生活を送っていたというのに
ある晩気紛れから一夜を共にしてしまいます。
後悔しきりの彼の前に、いつもとまったく変わらない彼女が姿を見せたので
彼は胸をなでおろします。

ひっどーい! それでいいわけ? 私なら皆に言いふらしてやるんですけどねぇ。
逆にそれが彼女の美学なのかしら?

『ロータス・イーター(The Lotus Eater)』
カプリ島に魅せられた英国人の男性が何もかも捨てて島に移住して来ました。
25年間幸福に暮らせれば死んでもいいとそれだけの金を用意して人生を謳歌していました。
けれども彼は25年より長生きしてしまったのです。
その後は天国のような島で地獄のような生活を送るしかありませんでした。

南の島で好きなように暮らすって夢みたいな話ですが、いくら自分の人生だからとはいえ
寿命は自分で決められるものではないんですね。
でも若い時に好きなように生きた方が幸せな気がする…この年になると。

『ジゴロとジゴレット(Gigolo and Gigolette)』
ナイトクラブで大盛況の危険な曲芸で生活の糧を得る妻と司会者として彼女を見守る夫。
妻は日に日に恐怖が募っていき曲芸をやめたいと言いだします。
けれでも破格のギャラを捨ててしまえば過去のその日暮らしに戻るしかありません。
妻は静かに控え室を後にしてステージに向かいます。

合意の上とはいっても危険に晒せれているのは妻なのですから
彼女の気持ちを尊重してあげてほしい…

女性サイドから見ると、男性の美学ってけっこうエキセントリックなのよね。
それから多分にナルシスティックな要素を含んでいるような気がします。
男性が女性より何かを達成することが多いのも美学に負うところが多いと思うわ。
偉大な発見から下らない発明までいろいろあると思いますけど。
そしてたいがいの女性はそれにつきあわされちゃうんですよね…

モーム短篇選〈下〉岩波書店


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『ジゴロとジゴレット』『ロータス・イーター』はこちらに収められています
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自虐的ショッピング “カラダスキャン”

2009-05-05 23:36:57 | もろもろ
川崎だ、横浜だと近場を出歩いているうちに大型連休も終わりを告げようとしています。

お酒・タバコ・不規則な生活に加え年々体重増加中で成人病街道まっしぐらなわたくしは
健康器具なんて買ったって・・・てなわけでなるべく目に入れないように
安穏とした幸せな毎日を送ってきたのですが、とうとう買っちゃいました。

型落ちのせいか10台限定でお安く売られていたカラダスキャン。
限定だというからつい残り2台のところで手を出してしまい・・・

体重、体脂肪など5種類の測定ができる上にからだ年齢が分かっちゃうんですって!
あまりの恐ろしさに明日の朝から計ることにいたしました。
いったいいくつなんだろうか?
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スペイン王フェリペ4世妃 マリアナ

2009-05-05 01:37:50 | スペイン王妃・王女
不機嫌な王妃
フェリペ4世妃 マリアナ・デ・アウストリア


1634~1696/在位 1649~1665

マリアナは神聖ローマ皇帝フェルディナント3世の皇女で
幼い頃からフェリペ4世の王太子バルタザール・カルロスと婚約していました。
しかし1646年にバルタザール・カルロスが急死します。

フェリペ4世に遺されたのは王女マリア・テレサ(後のルイ14世妃)だけでした。
彼女が女王になると、配偶者によっては王位を他家へもっていかれてしまいます。
フェリペ4世はイサベルの死後再婚をしないと誓っていましたが、44歳の男盛り
もうひと頑張りしましょうかというわけで、バルタザール・カルロスの婚約者だった
15歳のマリアナと再婚することになりました。

マリアナの母マリア・アンナはフェリペ3世の娘なので
またもや伯父と姪の結婚ということになります。

      
マリアナはそれまで陽気で明るい少女だったらしいのですが
フェリペ4世と結婚してからは、気難しく冷淡な性格になってしまいました。
スペインのしきたりが堅苦しすぎたとも、笑顔が道化師っぽくて注意されたからとも
はたまた王が浮気を繰り返すからとも言われています。

スペインへやってきたマリアナは、11歳の継子マリア・テレサも
好きになれませんでした。
自分が子供を生まなければ女王になるとあって大事にされ、国民にも人気があって
フェリペ3世にも溺愛されているマリア・テレサを見ていると
母親とはいえ4歳しか違わないマリアナは彼女に激しい嫉妬を感じたのです。

憎たらしいマリア・テレサをスペイン女王にしてなるものかと思ったかどうかは別にして
マリアナは16歳で王女を、その後1女3男を生みました。
けれども1665年にフェリペ4世が亡くなった時生きていた王子は末っ子のカルロスだけで
しかも生まれた時から心身ともに未発達でした。
カルロス2世の精神薄弱や成長の遅れは、やはり度重なる血族結婚が原因らしいです。

3歳で王位についたカルロス2世は言葉もうまく話せず、10歳までは物も握れなかったので
摂政となったマリアナはつきっきりでサポートします。

フェリペ4世には女優マリア・カルデロンとの間に庶子ファン・ホセがいましたが
我が子と違って優秀で、フェリペ4世からの信頼があつかった義理の息子に
マリアナは強い敵対心を抱きました。
本来なら良き助言者にするところを彼の政敵ニタルトを重用し、ファン・ホセの反乱を
招くことになってしまいます。
このため1677年から2年間追放されてしまいますが、ファン・ホセの死で帰国して
ほとんど政治が行えない息子の傍らで采配をふるいました。

              
               どの肖像画を見てもこんな顔なの…
                     たしかに不機嫌そうです


カルロス2世が娶った王妃マリア・ルイサが早世して毒殺の疑いをかけられたり
再婚したマリアナとは後継者を巡って激しいバトルを繰り広げるなど
嫁にはめぐまれなかったみたいですけど、最後まで息子を見守りつつ
カルロス2世に先立つこと4年、1696年に乳癌で亡くなりました。

マリアナの死に際しては、葬儀が始まると曇天がにわかに晴れわたったとか
彼女に譲られた衣に横たわったら麻痺が治ったなどの奇跡が記録されていています。

マリアナ(マリア・アンナ)という名の王妃は多々いますが
ミクロネシアのマリアナ諸島は彼女にちなんでつけられたそうです。

婚約者が死んだからってその父親と結婚させられるのって、どう思います?
でも中世では結構多いんですよね。
王はさ、相手がいやでも愛妾つくっちゃえばいいのだけれど
王妃はそうもいかないじゃないですか? 処刑とかされちゃう場合もありますし。
まったくひどい話ですわね!

(参考文献 佐竹謙一氏『浮気な国王フェリペ4世の宮廷生活』
      岩根圀和氏『物語 スペインの歴史』 Wikipedia英語版)

浮気な国王フェリペ四世の宮廷生活 岩波書店


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