まりっぺのお気楽読書

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『ミザリー』キャシー・ベイツにやられるっ!

2009-05-07 00:59:38 | アメリカの作家
MISERY 
1987年 スティーヴン・キング

私はアニー・ウィルクスにキャシー・ベイツというキャスティングには
なんら誤りはないと思いますが、やはり原作のアニーは怖いっ!!
けれども、映像で観ているとキャシー・ベイツがアニー以外の何者でもないという…
原作と映画の双方が触発し合う、身の毛がよだつ作品でした。

簡単に説明すると『ミザリー』というのは、人気作家ポール・シェルダンが生み出した
ベストセラー・シリーズの主人公なのですが
彼はそのシリーズにうんざりして主人公の死で物語を終わらせたのです。
その最後の5行を書き上げる時、ポールは可笑しくて涙が止まりませんでした。

一方アニーは『ミザリー』の大ファンで、近所で交通事故にあったポールを助け出すと
自宅に監禁し、続きを書くように強要します。
それこそあの手この手を使って…主に苦痛ですけど。

この物語の恐ろしさは、虚構の中にいくつかの理解可能な恐怖が潜んでいるところに
あるような気がします。

例えば地下鉄の中でマスクを被った男がチェーンソーを振り回したり
人里離れた小屋でひとりひとりが謎の死を遂げる…というのは
絶対に無いとはいえませんが、安易に想像がつくものではないですよね?

でも監禁となると、ある日一人の人間が消えたからといって
家々を隈無く捜すことは不可能に近いし、現によく耳にしたりします。

それから熱烈なファンとストーカーとの一線をどこに引くのかというのも
悩ましい問題です。
マーク・チャップマン(ジョン・レノンを射殺した犯人)とスティーヴン・キングの
サインの1件は有名な話ですが、村上春樹氏『やがて哀しき外国語』によれば
キングには他にも迷惑な愛読者が多々いたようで、もしかしたら実体験が
大きく物を言っているのかもしれません。
命まで狙われかねないのですから有名人も大変ですね。

この物語には恐ろしいこと以外にも、作家の本能のようなものが滲み出る場面が
いくつかあるのですが、それはそれで鬼気迫るものがあります。
例えば、ポールは『ミザリー』の新作を書き上げてしまったら、アニーに殺されるのが
分かっているのですが、浮かんできた文章を書き留めずにはいられなくなって
眠る時間を削ってタイプライターに向かったりします。

とうとう『ミザリーの生還』を書き上げたポールは、それが今までの中で
最高の傑作だということが分かっていました。
しかしその傑作がアニーへの最終兵器でした。

最後の最後までハラハラしますよ。
原作は内容もさることながら、なんていうか…字の面(ツラ)が怖いというか
字を追っているだけで恐ろしいのです。
(翻訳版ですが)ところどころで太字を使っているとか、擬音が多いとか
いきなり手書き風とか、いろいろ文句はあるかもしれませんが
ことさらグロテスクなことを書き連ねているわけではないのに背筋寒くなりますよ。

私はホラーとかオカルトの類いはほとんど読まないのですが
S・キングには一時期はまりました。
映画化されたものはあまりなくて、扶桑社ミステリーのものが揃ってます。
たぶん、怖い思いより先に文章の面白さに惹かれたのだと思います。
『ミザリー』ももちろん、震えながらも面白く読めた1冊です。

ミザリー 文藝春秋


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