まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『アラン島』過酷な大地に根ざす人々

2008-10-10 02:02:10 | イギリス・アイルランドの作家
THE ARAN ISLAND 
1907年 ジョン・ミリントン・シング

シングが4度に渡って訪れたアラン島を、愛情溢れる想いで書き綴った風土記。

村人が語る伝説と実話が入り交じったエピソードや
妖精でなければ成し得なかったような出来事を目にしたときの驚きを
淡々と文字にしています。

貧しさと乏しい産業の中で育った人々の純朴さとたくましさを愛ある瞳で見つめ
アメリカやイギリスへ少しでも高い賃金を求めて出て行く若者たちとその母親の姿を
哀しみのこもった瞳で見つめて文章の中に再現しています。

作物をダメにしてしまう自然、イギリスからやって来る取り立て人
唯一の流通手段を飲み込んでしまう荒波。
島の人たちは寡黙に勇敢に、それらに耐えて生活を送ります。

いったい自分たちは誰に搾取されているのか?
そんな疑問ももたずに日々を送る人たちの姿が愛しくて哀れです。

シングが島を離れている時に島の人々と交わした手紙に
彼がいかに島にとけこんでいたかが表れています。

現在の先進国の中に、こんなにも貧しさが浮き彫りになる地域を
抱えている国があるでしょうか?
しかし世界の中にはこの頃とほとんど変わらず
貧困を受け入れざるを得ないという人たちが多数いるのも事実ですね?

全ての人たちが、人並みに学校にも行けて、お腹いっぱい食べられて
恐ろしい思いをしなくてよい世界がくればいいのに、とほとんどの人は漠然と願っています。
でも人の苦しさって、目の当たりにしないとなかなか分からないよね・・・

人並みに生きられる者の戯れ言かもしれませんが
皆が豊かになるにつれて、地域特有の言い伝えやしきたりを捨て去っていくのも
なんだか悲しい事ではありますよね

アラン島 岩波書店


このアイテムの詳細を見る

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする