このお軸は過日お勤め致しました宗祖ご正忌法座に広間にお掛けいたしました本願寺第19世本如上人揮毫のお軸です。
正信偈の不断煩悩得涅槃(煩悩を断ぜずして涅槃を得るなり)の一句を鮮やかな墨色でどっしりとした筆致で揮毫されていま
す。落款には本如上人の号「碧山」(へきざん)と記されています。本如上人の誕生は安永7年(1778)、文政9年(182
6)にご往生されています。寛政11年(1799)に18世文如上人から21才で継職されましたが、在職中に三業帰命(さん
ごうきみょう)と云う異安心が勃発しそれを治めるために身命を挺されたのでした。随分とご苦労されたご在位であられました。
このお正信偈のご文を拝しますと三業帰命(体と口と意でこころを込めて礼拝しなければならない)と云う異説に対して浄土真
宗の、親鸞聖人のお示し下さった不動の道は「不断煩悩得涅槃」にありますと、凜(りん)として応えて下さっているように味読
されるのです。
このヶ所を「絵ものがたり正信偈」の訳文を上げておきます。
能発一念喜愛心 よく一念喜愛の心を発すれば
不断煩悩得涅槃 煩悩を断ぜずして涅槃を得るなり
どうしても
煩悩を
なくすことができない
悲しいいのちが
ここに在るということをーーーー
そして
お釈迦さまは、お説きになったのです
「この名には
すべての功徳が満ち足りています
“ナモアミダブツ”
この 名を聞く者は
悩みや煩いをなくせずとも
さとりのいのちへと導かれるのです」