学校教育を考える

混迷する教育現場で,
日々奮闘していらっしゃる
真面目な先生方への
応援の意味を込めて書いています。

大学で学んだことは役に立つか

2010-06-17 | 教育
よく聞く言葉に,
「教育現場では大学で学んだことは役に立たない」というのがある。

現場の教員が言うのならまだしも,
教育実習生までもがこのような発言をすることがある。
教育実習生がこのような発言をする背景には,
教育現場で指導に当たっている教員への
リップサービスの意味も多々あるのであろうが,
あまり好ましい発言ではない。
大学で真剣に学んでいない者に限って
このようなことを言うものである。

さて,本当に大学で学んだことは
教育現場では役に立たないのであろうか。

私自身は,
大学で学んだことが教育現場でとても役に立っている。
とくに大学でしか学べないような内容,
テキストの厳格な読みの訓練や
テキストを批判的に読む訓練,
学問に対する深い情熱や
研究に対する厳しい姿勢など,
大学でお世話になった先生の人格的な感化ともあいまって
私の教員生活の大切な糧になっている。

当然のことながら,
教員としての実践的指導力の育成などということについては,
それほど直接的には大学では学んではこなかった。

しかし,
大学でしか学ぶことができないであろう
高くまた深い学問的修練や教養が
己のバックボーンとして
きちんと身についていれば,
資質を備えた教員であれば,
実践的指導力などはおのずと身につくものである。

要するに,「大学で学んだことは役に立たない」というのは,
その人に大学で学んだことを役に立てる力がないだけのことなのである。
役に立たないと思ったら,役に立てることができるところまで
学びなおしたほうがよい。

ともあれ,私は,昨今の教員養成における
実践的指導力重視の傾向を危なっかしく思っている。
学問への敬意や健全な批判精神,
幅広い教養といったバックボーンのない,
流れのままにただようクラゲ教員の大量生産だけは
ご免蒙りたいものである。