学校教育を考える

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世田谷区教育委員会「新・才能の芽を育てる体験学習」が提起した問題

2017-08-31 | 教育

世田谷区教育委員会主催の「新・才能の芽を育てる体験学習」の一環として行われたコンサート「日野皓正 presents “Jazz for Kids”」において、日野氏が中学生に対して、体罰に相当する行為を行ったという報道がなされている。

この問題に対して、どちらが悪いかというような視点ではなく、学校教育という観点から考えてみたい。

最近、「チーム学校」ということで、学校外の有識者等を学校教育に関与させようとする考え方が取り入れられつつある。今回の「新・才能の芽を育てる体験学習」についても、学校ではないにせよ、世田谷区教育委員会が主催して「新学習指導要領を踏まえた学びを生かしつつ、5つのテーマ(探求、表現、体力・健康、国際理解、環境)の中から通常の授業にはない体験・体感ができる活動」をさせるもののようである。つまり、学校教育の延長上で捉えられているもののようである。そもそも教育委員会がこのような課外活動を計画すること自体、余計なことだとは思うが、その道のプロフェッショナルを招いてこのような活動を行えば、上記の目的を超えていってしまうのは、当初から明らかなことであろう。

〈参考URL:http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/133/524/d00033880_d/fil/29_shinsainounome.pdf

学校教育法第11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と規定している。あくまでも、「校長及び教員」の関する規定である。学校教育に関与してくる教員以外の人間が、児童生徒に体罰に相当する行為を行ったとしても、それは、人に対する物理力の行使ということで刑法上の「暴行罪」が成立する可能性はあるだろうが、体罰の枠組による児童生徒の保護は得られないことになる。

今回の一件は、今後推進されるであろうチーム学校の問題点を象徴するような事象である。学校教育と外部の方では、児童生徒に期待するものとか教育目的とかが異なっているのだということを、あらかじめきちんと吟味し、調整しておかなければならないのだが、今の教育委員会や学校にその力があるだろうか。はなはだ疑問である。